嘘の花
「愛してるが」欲しくてほしくてたまらない。
愛を教えてくれ。
愛してくれ。
この願いは一体
誰の物だったのだろう。
教会で出会った君に一目惚れした。
まるで、女神だ。
君なら僕に愛を教えてくれる。
君なら僕を愛してくれる。
そう思ったんだ。
嘘の花を持たせて、君に言う。
このままずっと、一緒だよ?
嘘の花を握りしめて、君は言う。
大丈夫。
私はずっとあなたと一緒。
あなたの事しか見ないわ。
この花が、枯れるまで…
この花が、こんな嘘の花が
枯れる事なんてないのに。
君はいつも、大事に握りしめている。
ある日、気がついた。
僕は君に出会ってから数年経ち
どんどん年老いていくのに
君は、全く老いていない。
全く変わらず、あの頃のまま。
そんな疑問を抱きながらも
月日は過ぎていく。
僕が死んでも、君は変わらず
嘘の花を握りしめている。
毎日毎日、明くる日も明くる日も。
嘘の花に愛を囁く。
愛を教えてくれますか?
私を愛してくれますか?
私はいつ、消える事ができますか?
この花が枯れるまで
この嘘の花が、枯れるまで。
私はずっと、愛を囁くの?
私はずっと、愛を求めるの?
いつになったら、この花は枯れるの?
いつになったら私に
この花の正体を教えてくれるの?
この花が嘘の花だって事、教えてくれるの?
私は知ってるのに。
この花が嘘の花だって事。
あなたが死んでしまった事。
私が歳を取らない事。
でも、握りしめた手を離せない。
あなたの事しか見ないと
あなたの事を愛すると
誓ってしまったから。
あなたに出逢えて、幸せだったあの頃
いつまでも忘れずに
いつまでも覚えているわ。
あなたがくれた、この花も。
あなたがくれた、愛情も。
いつまでも枯れる事なく
いつまでも色褪せる事なく。
覚えているわ。
だからいつか
私の事を、迎えに来て。
あなたと一緒に、本物の花が見たいから。
お読みいただきありがとうございます。
次回作もよろしくお願いします。