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第九話 うりふたつ

食事も風呂も済ませたソウシたちは部屋でゆっくり話をしていた。

今日は白坊主たちが来ているのでママへの挨拶はない。


「ソウシ今日はお疲れ様。」

「...りがと。」

「いきなりどうしたの?」

「...。」


夢であんなことを見たから頑張っているなんていえないソウシはゆっくり下を向く。

不思議そうに顔を覗き込むゲン。

ソウシは立ち上がり扉の前まで歩く。


「どこ行くの?」

「...水。」

「あぁ僕が取りに行くよ。」

「...大丈夫。」

「そっか。」


少し寂しそうにするゲンを置いてソウシは部屋を出た。


しんと静まり返った家はだいぶ怖い。

特にママの部屋の前なんて何か化け物が出てきそうなくらいだ。

いち早く食堂へ行こうとソウシは早足になった。


「あ、ソウシ。どうしたの?」


食堂へ着くとニコがいた。

何かをサッと後ろに隠してソウシに話しかける。


「...水。」

「なるほどね。ウチが入れるよ。」


そうしてコップを一つとって水を入れてくれる。

少し気になったソウシはニコの手の中を見ようと背伸びをする。

それに気付いたニコが笑いながら手を見せる。


「これはウチの夜食。ソウシもいる?」

「...夜食。」

「はいこれ水ね。あと手出して。」


ソウシの出した手の上に何かが落ちる。紙に包まれた四角いものがあった。

気になって紙を開いて中を見る。茶色のそれはツヤツヤしていてほんのり甘い香りがする。


「それはキャラメルっていうらしい。」

「...らしい?」

「まあ本で読んだやつだからね。一応らしいって言っただけ。」


そう言ってニコは手に持っていたキャラメルを口の中に入れる。


「ゲンには内緒だよ。」

「うん。内緒。」


そう言って水を飲み干したソウシは席をたつ。

コップを流しに置いて食堂の入り口まで歩くとニコに呼び止められた。


「ソウシ、おやすみ。」

「...やすみ」


そう言ってソウシは急いで廊下を走った。


廊下を走っているとママの部屋から光が見えることに気付いた。

扉の前で立ち止まり中の声に聞き耳を立てる。


「クローン実験の方はどうだ?」

「ああ、被験体は安定している。クローンの方もまだ自力で動けているようだ。」


(クローン実験?)


ソウシは少し気になってさらに扉に耳を近づける。

部屋には数人の人がいるらしく話し声が聞こえる。


「能力は以前と比べて格段によくなっている。」

「あれは希望だ。他の力が何かないか探さねば。」


(格段によくなっている?)


以前もやったと言うことだろうか。他の力とはなんだと、いろいろ考えながら慎重に扉に耳を押し当てる。


「名前はなんであったか。」

「番号か?」

「違う、子供のふざけた遊びの方だ。」

「ああ、ゲンの方か。」


(ゲン?)


兄の秘密を知ってしまった衝撃でソウシは扉に頭をぶつけた。

痛さに頭を抑えていると中から騒ぎが聞こえる。


「誰かいるのか!」


そう言って扉が開いて一人の白坊主が出て来た。

白坊主がソウシを見る。しかし拘束するでもなくただ見下ろすだけだ。

後ろで他の白坊主達がやいやい言っている。


「ネズミでした。」


ただそれだけ言い放ち、くるりと扉を閉めて戻っていく。

よくわからないが助かったらしい。

急いで立ち上がって静かに走って部屋に戻る。


(ゲンにいがクローン?)


頭の中をその事実がぐるぐると周り頭が痛くなる。

息を切らしながら部屋の前までつくとその勢いのまま扉を開けた。


「どうしたのソウシ?そんなに焦って。」


電気のついていない暗い部屋でゲンはベッドに腰掛けていた。月明かりに照らされたゲンがこちらを見つめる。


「...ゲンにい?」

「なに?」


そう答えた人はいつもの兄ではないようだった。静かに微笑みながら、ソウシの元へゆっくりと歩いてくる。足がすくんで上手く動けない。冷や汗を垂らしながらソウシはゲンを見つめる。


「怖いことがあったんだね。」


そう優しく言ったゲンはソウシをそっと抱きしめる。ゲンはゆっくりと頭を撫でながら話す。


「ソウシ大丈夫だよ。」


いつも通りの優しい兄。だが見たくない何かを見たせいで動悸がする。


「君は僕が守るから。」


月明かりに照らされた影が怪物のように見えた。

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