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第八話 白坊主

キリはそのあと食事を平らげ空になったトレーをソウシに渡した。


「今日はありがとう。」

「...うん。」

「楽しかったよ。」


そう言って手を振るキリに少しお辞儀をしてキリの部屋から出る。

歩きながらふとさっきの話が気になり鏡を見る。


(ゲン兄に似てる...。)


双子なので顔は瓜二つだ。性格や社交性は真反対なので、いいところを全てゲンに持っていかれたのだろう。

顔を触りながらそんなことを考えていると、チリンと一度カネの音が鳴る。

白坊主が来た合図だろう。

ソウシは急いで階段を駆け降りた。






「遅かったね。キリの話に付き合わされた?」


そうやって笑いかけるのはゲンだ。先ほどのことが気になり顔ばかり見てしまう。


「ゲンの顔になんかついてる?」


ニコがそうやって話しかけてくる。ソウシは首をブンブン振ると、ゲンは不思議そうな顔をする。


「みんなもう並ばないとママに怒られるよ。」


そうやってヒナタが言うと少し歪だった並びが綺麗に整列される。

ソウシはゲンに手招きされて、アヤとゲンに挟まる形で列に並んだ。


ソウシはトレーを床に置いて扉を見つめる。

ガタンゴトンと重苦しい音が鳴り幾人かの足音が聞こえる。

しばらくしたら音が止まり、扉が乱雑に叩かれる。

ギギギと音がなってゆっくりと扉が開く。


扉の向こうには巨大な何かがいた。白坊主だ。

二つの黒い点のようなものがついた白いローブを被った白坊主たちはゆっくりと家の中に入っていく。

少し気圧されたソウシはゲンの後ろに隠れる。


「一番は欠席か。」


ゆっくりとした口調で一人の白坊主が言う。

一番とはキリのことだ。


「二番、何か変化は?」

「特にありません。」


ヒナタが落ち着き払った声で答える。

白坊主は少し周りを見渡す。

ゲンの後ろに隠れているソウシに気がつきゆっくり近づいてくる。


「八番、九番の後ろに隠れてないで出てきなさい。」


そう言われたソウシは恐る恐るゲンの後ろから出てくる。どこからが顔かわからない白坊主の顔を伺いながら静かに列に戻ると、白坊主は静かにソウシの元からさっていく。


そのあとは家の中を少し見て回った白坊主たちはママがいる部屋に入って行って出てこなくなった。


「白坊主たちの料理を準備しないと!」


いそいそと動き出すニコに続いて次々と厨房に向かって歩いていく。


「僕らも行こうか。」


ゲンがソウシに話しかける。

ソウシはこくりと頷いてゲンの手を握った。






そこからは目がまわるほどの忙しさだった。

元気に調理や配膳をするみんなとは違い慣れない仕事を拙いながらも必死にこなしていた。

ソウシの役割は皿を用意すること。

震える手で落とさぬように皿を運ぶ。


「ソウシ代わろうか?」


心配そうに聞くゲンの提案を断りながらソウシは皿を用意した。


(慎重に慎重に...)


そう思いながら丁寧に皿を運ぶ。

不思議なことに仕事が遅くても誰にもなにも言われなかった。


「よし!これで一段落ついたね!」


ニコの声を聞いてソウシは持っていた皿を慎重に置いた。


「ソウシ!今日は頑張ったね。」

「キリのとこにも行ってくれたしな。」

「よく頑張った。」


口々に褒めてくれることが少し恥ずかしくて咄嗟にゲンの後ろに隠れる。


「今日は美味しいものいっぱい作ったからいっぱい食べようねぇ。」


そう言うアヴァの言葉に頷きながら、小さな住人たちは食卓を囲んだ。



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