第三話 賑やかな食卓
小さな家の住人が全員席についたところで一人の少年が立ち上がる。
麦わら帽子をつけた顔にヒマワリの花がついている少年はヒナタ。少し身長が低くみんなの目に留まりづらいため椅子の上に立ち声をかける。
「さあ、全員揃ったね。これから食事をするから手を合わせて。」
その声に合わせて皆は手を合わせる。
目を瞑る子もいれば早く食べたくてソワソワしている子もいる。
ヒナタが席に座って手を合わせる。
「ママと全ての食材に感謝していただきます。」
「「「いただきます。」」」
そう言ってみんな一斉に食事を始める。
一生懸命に食べる子、食べながら話す子、その子を注意する子。それぞれが好きなようにご飯を食べる。
「ゲン、あれ知ってるか?」
「ん?なんのこと?」
「ここの秘密だよ。」
そう言ってにやりとイタズラっぽい笑顔を浮かべる少年はユウ。腕を上下させながら大袈裟に話し出す。
「ここは実は軍の研究所で俺たちはこの世界の最終兵器として戦争で活躍するために生まれてきたんだ!」
「うーん。」
「...。」
微妙な顔で返答に困るゲンとそれを気にせず黙々と食事をするソウシ。
その顔を見てユウは不機嫌になる。
「なんだよその顔。」
「いや、その...」
「その秘密が本当っていう証拠はあるの?」
困り顔のゲンに助け舟を出したのは意外にもアルだった。
「証拠は...」
「どうせまたあんたのモーゲンなんでしょ?」
鼻で笑うアル。不機嫌顔でアルの睨みつけるユウを呆れたような声でバカにする。
「嘘つきのユウは信頼できる人がだあれもいないから、ゲンになんでも話して困らせるんだ。」
「違う!」
「ママに怒られちゃうよ。嘘つきは悪い子だからね。」
ユウは捲し立てるように話すアルに殴りかかろうとしてニコに止められる。ジタバタ暴れるユウはなんとか抑えられながらアルを指差す。
「お前だったソウシいじめてたじゃねえか。さっきお前がバトーしてるとこ見たぞ。俺はダメで自分はいいのか?」
抑えられながらアルを馬鹿に言い返し勝ち誇ったような顔をする。アルは周りを気にせず食事をとっているソウシをチラリと見る。
「あれはソウシがちゃんと自分の仕事してなかったから...。」
「だからっていじめは許されるんですかー?」
二人の間にバチバチと見えない火花が飛び交う。
流石にまずいと思ったのかアヴァが二人の間に入る。
「まあまあ二人とも落ち着いてぇ。」
「「だってこいつが!」」
「うん、息が合うことは知ってるからもう大丈夫だよぉ。でも、君たちは言い合うより他にやることがあるんじゃないかなぁ?」
そう言ってアヴァはソウシとゲンの方を見る。その視線にゲンは気付き微笑む。
「それは...」
「そうだな...。」
そう言って二人はそれぞれゲンとソウシの前に立つ。
「いつもごめん。」
「いいよ。そんな気にしなくても大丈夫。」
そう言われたユウはほっと胸を撫で下ろす。
「さっきはごめん。」
「…だいじょぶ。」
食べる手を止めてソウシがそう言うと、アルは少し驚いた顔をして頬を緩めた。
「さあ仲直りもできたことだし、早く食べてママに挨拶行くよ。」
少し離れたところからヒナタが声をかける。その言葉に返事をして四人は食事を再開した。