表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

記録 1

 この家の決まりで、みんなでおじい様。当主のいるお屋敷で食事をする日がある。

 その日は、決まって孫である僕たちは談話室でそれぞれ、当主になるために必要な勉強をする。


 礼儀作法。

 関わりのある家の人の顔を覚える。

 敷地のこと。

 財産の管理方法のこと。


 そして。


 当主になるための条件である、丘のこと。


 お父様もお母様も。

 叔父様も叔母様もみんな、自分の長子や上の子たちばかり気にかけて。

 末っ子の僕やあの子は目に入っていないみたいで。

 だから声をかけた。

 今日も談話室で小さく、隅っこにいるあの子に。


 話してみて、自分の直感が正しかったと確証をえた。


 この子の目はとてもきれいだったから。


 丘については聞こえてくる会話から、そこは特別な場所で。

 わざわざ花の名前を問うくらいだから、花が咲いている場所なんだろうけれど。

 この家が所有している土地で丘と呼ばれるような場所で。

 なおかつ花が咲いている場所なんて。

 それだけで絞れそうなものだけれど。

 おじい様から当主の話が出ていないということは、まだ見つけられていないということ。 

 少なくとも、子どもたちの代では。

 そしてみんな年齢の制限を迎えて。

 だから必死になってみんな孫の僕たちに托すんだ。

 この家の膨大な財産を受け継ぐために。

 子どもが小さければ、その分、親である自分たちが管理するという名目がたつ。

 大きくても、自分たちに恩恵があるように、手塩にかけて育てる。

 

 ……気持ち悪い。


 そんな両親の良心のなさに、僕は息が詰まりそうだった。

 自分の子どもをそんな風に見ているなんて。

 だからこそ。

 そんな風に見られていないあの子は、とても光って見えた。


 周りが言うようなできない子じゃない。

 しっかりと周りを観察し、リスクを減らしている。

 よく見ているし、見えている。

 あの子の目で見られると、こちらの悪い部分が見透かされているのではないかと思うほど。

 まっすぐで。

 特別な丘は、きっとそういう子にしか見つけられない。

 丘に咲く花。

 答えがあるということは、年中咲いている花。

 丘も、季節に影響を受けにくい場所。

 条件にある丘はあっても、花はない。

 幻の丘と言われる場所だから。

 なら、きっとここにいる誰とも違うあの子なら。


 話をして。

 純粋無垢なこの子に。

 僕は心から笑いかけた。

 

 ああ……。

 本当に。

 愛らしい。

 僕の役に立ちたいか。

 うん。

 その願いを。

 かなえて。


 僕が当主になるために。

 君を使うね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ