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スノードロップ  作者: 白崎なな
第1章 玉 月 杏
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9。月の恋

 「さあ、そろそろ国長のところに行かないと……」



 「もうそんな時間! 私も剣術練習してくる〜」



 二人は手を振って別れた。ぎょくは、一旦荷物を置きに事務所の部屋に戻る。



 ピピピッ

 「ゆえお待たせ〜、行こうか」



 「私も今、鑑定部から戻って来たところなの」



 書類をまとめながらゆえは、こちらを全く振り返りもせずに言った。



 「……鑑定部に何しに?」



 「ペンダントをもう一度見せてもらいに、ね。

 今から畑国長はたくにおさのところでまた詳しく話すね。さあ行こう」


 ゆえは、ぎょくにペンダントの話をした。ペンダントが気になっていたのは、ぎょくだけではないようだ。

 ゆえも、大きな一歩となるであろう証拠の一つだと感じていた。


 

 「……紫水晶って "心の平和" って意味があるんだって。本当に平和を願うよ」

 ぎょくは、ゆえの肩をぽんっと叩きながらそう話した。 "平和" 誰しもが望むもの。その紫水晶の瞳をもつぎょくは、自分がその心の平和を作れるか不安な思いが多少なりともあった。



 それを支えてくれるゆえ。彼女は、ぎょくの今の言葉に込められている思いを感じ取った。




 「そうだね。早く、解放させたいね」


 ぎょくはこくんっと首を縦に振った。そんなぎょくも、ゆえの想いにも気づいていた。

 「それから、真実の愛って意味もあるんだよ。あの日の月は綺麗だった。

 そんな言葉を言える相手は、できるのかな?


 ……そろそろ、国長のこと諦めなよ?」



 「……うるさい」



 そんなことを話していたら、部屋の前までついていた。


 ーーコンコン

 「ぎょくゆえです。失礼します。」




 「どうぞ」


 いつものように扉が開く、二人は今朝のこともあったので軽く会釈をするにとどめた。



 「じっくり考えたのですが、その案でいきましょう。龍元りゅうげんに連絡をとりましたが、承諾をもらえました。

 早速ですが、三日後に向かうことになります」




 「「かしこまりました」」

 とても早くにはなしが進んでおり、心の中でかなり衝撃を受けていた。基本的に、国同士の連絡は時間がかかる。今回は、それだけはたのなかで急ぐべきことだと感じていたのだろう。




 ゆえがさっと小さく手を上げた。

 「畑国長はたくにおさ、実は先程まで鑑定部に行っておりまして……

この文字を刻んだ加工先がジルが率いる組織のある店であることが判明しました」



 「!!……なぜ、店を特定できたのでしょう?」

 はたがとても驚いた顔を見せた。



 「実は、アルタイアには宝石の加工できる職人がとても少なく。

 さらには瞳の色を重きをおく国なので、受け取り手によっては侮辱と取られかねません。職人として一人前になっても需要がないので、店を構える者は大変少ないのです」



 「なるほど、ここ最近は特に階級分けが厳し苦なっていると聞くし……

 もしかして以前よりも減っているのでしょうか?」




 「そうです。その結果、現在石の加工を行う店はその店が最後なのです。

 ……ニーナとジルは確実に繋がりがあると思います。

 でなければ、あえて紫水晶に文字を刻まないでしょう。それも暗号のように文字を崩して」





 「……、ますます今回の合同訓練で情報を掴まなければならない。ということになりますね」



 「ニーナの組織とジルの組織は、別の組織と捉えて来ましたが……

 ゆえの話を聞くと、同じ組織である可能性も視野に入れておいた方がよろしいかもしれませんね」




 「そうですね、その可能性もありますね」



 「……三日後の龍元りゅうげんには、スノードロップのみで伺いますか?

 第一部隊も行くのでしたら、私が書類を作りますが」



 (書類仕事これ以上やりたくないから、ゆえから申し出てくれるの助かるなぁ)



 「第二部隊まで動けそうなら、三つの部隊で伺いたいと思っています」



 「かしこまりました。それではその旨で申し伝えます。

 それでは、また書類ができましたら伺います。

 ……失礼します」



 ゆえにつられて、軽く会釈をした。扉を開けられ、部屋を後にした。



(なるほど……また会いに行くために申し出たんだね)



 ゆえは、はたに心を寄せている。それは叶わないと知っていても、彼女は少しでも側にと幹部を目指した。



 はたはしっかりしているように見えて、心を許した相手には素が出る。

 少し優柔不断なところがあり、悩みがちな性格。



 ゆえは、決断も早く頭の回転も早い。

 (私としては、愛藍あいらん様よりもゆえの方がお似合いだと思ってたんだけどな)



 ぎょくゆえしんの3人とはたは、10年以上の間柄。お互いにお互いの性格をよくわかっている。



 ぎょく達の意見に賛同をしてくれ、スノードロップの苦痛を理解してくれた。

 そして酒井の次に自分が国長となり改革をする。と意気込んでいた。



 ぎょくたちがアルタイアから訓練を受け戻った時には、愛藍あいらんと名乗る女が現れた。



 ゆえが血眼になって検索をかけ愛藍あいらんのことを調べ上げた。しかし、それ以前のデータがどれだけ探しても全く出てこなかった。



 あんなに必死で書類やパソコンと睨めっこしている彼女は、最初で最後だった。



 国長になるためには結婚していること。というルールの元、愛藍あいらんと結婚をした。



 はたは、国長になるための手段としての結婚にしか過ぎず。かなり愛藍あいらんと距離をとっているようだった。



 彼女は、全く何を考えているかわからない。先日の笑顔が消えた顔は珍しく、常にニコニコと思っていることは貼り付けた笑顔の下にあるのだ。



 正直なところぎょくは、見透かされていそうな笑顔が苦手意識を持っている。おそらく、ぎょくだけではなくしんも苦手意識がある。



 (ゆえは、そういう苦手なタイプっていうのがなくて羨ましい。

 むしろ、恋敵として見ている?のかな)

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