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スノードロップ  作者: 白崎なな
第1章 玉 月 杏
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6。華楽

 事務所を後にしたぎょくは、軍部の女子寮に帰ってきた。



 この軍部のあるこのまちは、一街区と呼ばれるエリア。軍部と政府のビルは、一街区全体が見渡せる位置にある。

 そこから伸びる大通りを中心に、碁盤上に一街区は編成されている。



 一街区の隣町が自然を残し、田畑が一面に広がる二街区。

 この二街区は土が豊かで、尚且つ広大な土地を有している。そこで獲れる農産物は、自国で食べきれない量がとれる。そのため、諸外国に輸出をしているほどだ。

 特にアルタイアに、輸出をしている。




 そして軍部のビル後ろに流れる、国一番の大きな菊瀬川きくせがわを渡って3街区。



 菊瀬川きくせがわを渡った先の三街区に、軍部の寮がある。また、市民の住居の多くは三街区に密集している。



 昨日の一件は、一街区と二街区の間のビル群で起こっていた。このエリアと一街区の海に近いビルが、狙われることが多い。




 三街区を狙われると多くの市民が事件に巻き込まれるので相当まずいが、なぜかあまり狙われることがない。軍を狙ってきているのかもしれない。




 華楽からくは島国で、この三つに分かれた街と海辺で構成される小さな小さな島国。





 そして、アルタイアのある大陸と龍元りゅうげんのある大陸に上下で挟まれる形に位置している。

 小さな島だが、貿易の中継地点として栄えたと言えるほどだ。



 アルタイアは、20年前に一つの国になった。あたり一体が燃え、鎮火に1ヶ月はかかったと言われるほどの大戦争がアルタイアの大陸で起こっていた。



 それまでは小さい国がたくさんあり、紛争が絶えぬ大陸だった。当時のアルタイアの皇帝ルークが軍を立ち上げ、力で制圧をした。

 現在でも、アルタイアの隣では小さい国々が争いを繰り返している。油田が豊富なエリアや技術者の多いエリア。 ……紛争の理由が、ゴロゴロと転がっているのだ。

 もちろん、アルタイア国内でも紛争が絶えず起こっていた。



 前皇帝ルークは、民に仕事を与え自身を守るためにと拳銃の所持を認め、軍事力を高め続けていた。

 そのため、銃に対しての知識や技術に長けている者が多い。



 政治が軌道に乗った頃に、自身の子供に跡を継がせた。その時の子供…… 現皇帝ノアは、紫の瞳を持つ。


 前皇帝ルークは、青の瞳をしていた。




 ルークの子供である、ノアが皇帝となった。そうして、今まで以上に瞳の色を重要視をさせた。 ”瞳の色で階級が決まる” を法令化させたからだ。




 焼け野原だった国のアルタイアはたった1年半で、その当初では全く考えられないほどの権力を持つ国となった。

 世界で決められる、ベストカントリーランキングで世界二位の豊かさを誇っている。




 ランキング第一位は龍元りゅうげん

 龍元りゅうげんは北に位置しており、100年の歴史もある国だ。北側は四季があり土地も豊かでたくさんの農作物や畜産業も盛んだ。



 逆に南側に位置するアルタイアは、年間を通してかなり暑く雨も少ない。そのため、作物がなかなか育ちにくい国。

 農産物の大半をアルタイアは、土地が豊かな華楽からくに完全に頼っている。



 もし、アルタイアが四季に恵まれていたならば……

 世界一位だったかもしれない。

 そう言われるほど、南側と言うだけで不利なのだ。



 アルタイアは、軍事力で国を制圧をしている。

 そんなアルタイアを見習った政治をし始めたのが、酒井前国長さかいくにおさの前の水本みずもと あおいだった。



 水本がスノードロップを17年前に発足させ、同じ考えの酒井が水本の意思を継ぐように軍事力を高めた。




 ただ、軍事力を高めれば反感を買うので ”国の宝は民” として、宝を守るための盾となり矛となるとして

スノードロップを強くする必要があった。



 そのため、多少の犠牲者は致し方がない。とした。



 政府の中でも、反対派がいた。軍事力を高めることはいいが、それを乱用するのはいかがなものかと。

 とくに、国外の人々に対しての処罰が死刑一択だった。




 現在のはたは、反対派の中でもかなりその想いが強かった。



 立候補をした時は、大変だった。

 軍事力を高め続けたい、水本と酒井派閥と対立をすることになるからだ。

 7年を連続で2期できる。その代わりに、一度国長くにおさになると二度となることはできない。

 なので、水本らは二度と国長くにおさにはなれない。必然的に自分らに都合の良い人を、次の国長くにおさにしようとするものだ。



 たくさんの圧力に屈することなく選挙活動をした結果なのか……

 はたまた、これまでの水本や酒井の演説に違和感を持つものが多かったからなのか……。

 



 はたは、いまから半年前に無事に当選することができた。満場一致だった。




 そして半年経ったが、昨日の一件まで殺しの仕事はほとんどなく過ごしていた。

 それだけに、スノードロップ内ではただならぬこと、と噂が立っていた。




 そんな気がたった中仕事をしていたからか4日ぶりの自室に、ほっとして眠気に急に襲われた。


 

 (とりあえず、このまま寝てしまおうか……

 あ、やっぱり、シャワーは明日の朝にでいいか)




 ーー朝はやくに起床し事務所に向かう。

 そして、そのまま国長の部屋に向かった。



 コンコンッ

 「ぎょくです。失礼します。畑国長はたくにおさはいらっしゃいますか?」




 『どうぞ』

 聞き慣れた落ち着いた低音のはたの声が、聞こえ扉が開いた。




 「昨日は、すまなかったね。どうしても外せない用事があってそちらに赴いていたんです。

 私としては、彼女がここにいたと聞いて焦りました。」




 扉が開いてすぐに私をまっすぐに見て話し始めた。急に話が始まり少し驚き、ぎょくは反応が少し遅れた。そのため、頭を下げるタイミングを逃した。



 はたの前にささっと歩き、頭を下げようとした。



 「あなたにそのようなことをされるのは本当はおかしいのです。頭を下げなくていいのですよ。」

 そう言って、ぎょくの動きを止めさせた。


 「……かしこまりました。それでは、本題に入ります。」



 「あぁ、報告は聞いていますよ。

 ペンダントの持ち主はニーナだということ。

 それから、紫水晶を持つからにはノア皇帝に対してか、もしくはあなたに対して……

 と言うほかないでしょうね。


 ……なんたって、現在紫色の瞳を持つのはおそらくこの二人だけだから。そして自国の皇帝に向けることは、あり得ないでしょう。

 そうなると……」




 「ええ。さらにはその情報源はジルで間違いないのでは、という見解です。そうすると、ニーナの目的が私を殺すことだったとして。


 殺すのに、本人が来ないのは何か理由があるのでしょうか? それに、宝石の購入履歴はどんなところで入手しても足がつくというのに。

 わざわざわかりやすく、仲間に持たせるものでしょうか?」




 「何かの罠、と言いたいのですね」



 「そうです。こんな明確な足を残すとは、プロとしてナンセンスです」




 「ジルの組織のような高度な技術や人材もない組織が、ニーナの組織だ。と聞いているけど…

 あなたはどう思いますか? 会ったことがありましたよね?」



 「ニーナは、確かな技術を持ち合わせています。

 ですが、私たち3人の誰にも相手にされないでしょう。

 だからこそ、ジルとの関係性はどういうものなのかは気になります。」



 はた顎に手を当ててうーんと、悩むそぶりを見せる。


 「そこをやはり、はっきりさせないとですね。はっきりさせるさせ方に、頭を悩ましておりまして…」




 「畑国長はたくにおさ、こういう案はいかがでしょうか?」




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