46。自由と平和
そうして、3年目のあの大きな戦争のあったあの日。
毎年この日はあの戦争で残った者で、集まっていた。
今年は華楽の叶果の墓の前で。
そこには、アルタイアから移植された大きな鳳凰木が一株植樹されていた。
華楽とアルタイアとの和解の印に。
アルタイアでは10月に咲くその花は、華楽では6月末ごろに満開を迎える。
…ちょうど、戦争が起こったあたりが見頃だった。
紫の花が雲のように空を覆い、風に靡いた花が絨毯を作る。
一株の木のはずなのに、一面紫色で染まった景色だった。
「今年もこうして揃うことができて嬉しいです。師も元気そうで、何よりです。」
「いやいや、もう歳を感じていてね。…水銀中毒者に対しての解毒剤もないし…。頭が痛いんだ…」
「そうですね…。華楽の得意分野ですが…まだ今の技術では服用を辞めさせる以外に、なす術がないですからね。」
「頭を悩ませすぎて、さらに寿命が縮んだ気がするよ…もういつ私は寿命がくるか分からないよ。…そろそろ私は引退したいんだけど。」
「私もアルタイア大陸がひとつになりましたし…安泰に向かってますし、そろそろアイランに引き渡しをしたいなぁと。」
「梨那、ずっとそれを僕に言うけど。僕では民を統率するのは、できるのか。どうか。」
「この3年間、私と一緒にやってきたんだから。大丈夫。それに、今やコンピュータが各国に普及してきて連絡も今まで以上に簡単に取れるから。
そろそろ、私を華楽に帰して欲しいかな!」
「そうか、そしたらそのまま私のところに来るかい?」
「い、いえ、龍元の席はもうすでに決まってます!」
そこに小さな女の子と男の子がパタパタと走って来た。
その後を追って、梓と畑が現れる。
「ごめんなさい、遅れました!」
「父上、梨那、アイラン。お待たせしました。…ちゃんとご挨拶して2人とも。」
「あっあー」
「…ぅあ〜」
梓と畑は、その後に結婚をした。2人の子宝に恵まれた。
「ほら。太子と次期娘娘がお出ましですよ。…その前に梓がなるのかな?」
「梨那が華楽に戻ってきたら、交代してもらおうかな?」
「うぅ〜。もう私、あんまりやりたく無いんだけど。…やらなきゃなら…やるけど…」
「じゃあ、アイラン頑張って。梨那が華楽に戻ってくるために。
まあ…何かあれば、皆んなを頼れば大丈夫。皆んな味方だから。」
「梓の言うとおり!3カ国で歩んでいけばいいんだよ。」
「……でも…」
「ウジウジしない。腹括りなよ。」
「はい。」
あの日を私は忘れない。
あなたがいないこの世界で。
私は生きていかないといけない。
あなたの魂と共に。
叶果は、笑って。と言ったね。
私はうまく笑えているだろうか。
あなたと食べたケーキの味。
あなたと見た景色。
あなたと過ごした日々。
今でも昨日のことのように覚えてる。
声も香りもすべて。
でもこれも何年もすれば、忘れてしまうのだろうか。
忘れたくない。
あなたの命日だけは。せめて。全てを思い出したい。
そして、笑って"私はあなたのおかげで生きている。ありがとう"って。言いに行く。
「さあ、みんなの自由と平和を願って。何年も何十年もこの平和を守っていきたい。」
(今を生きる貴方は、この平和がたくさんの犠牲の上に立つことを忘れていないだろうか?
それとも、混沌とした世界になってしまっているだろうか。
自由と平和をこの先守り抜くために。
悲痛な思いをした人のことを忘れてはいけない。
過去は忘れられてしまう。経験してなければ尚のこと。
だからこそ。この記憶を繋いでいかなければいけない。
ーーそれが、犠牲の上に立つ私たちができること。自由と平和のために。)
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!
コメントや、ブックマーク、お気に入りも嬉しかったです!
自分の世界を書くのってこんなに楽しいんだ。
見てもらえるってこんなに嬉しいんだ。と感じました。
処女作で至らないところばかりだったと思いますが、それでもみなさんお褒めの言葉をくださって…
本当にありがとうございました!
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本当は、3人に幸せになってほしかったなぁと思います。
きっと、杏もお母さんに会えて良かっただろう…と言い聞かせています。
作者ですが、悲しいものは悲しいです。
書きながら杏が好きな人、ごめんなさい。私も好きですって思ってました。
3人の過去編が一番心が痛かったです。
私の友人には、なんて辛い過去を作り出してしまったの??と言われたものです。
悲しい部分もありましたが、最後までなんとか走り抜けれて良かったです。




