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スノードロップ  作者: 白崎なな
第6章、自由と平和
43/46

43。月とアイラン

「…なぁ。僕は敵じゃない。だから、それを降ろしてくれないか?」



「……そんな言葉を信じろと?」



「確かに……ぎょくが兄さんを殺したことは、許せない。」




「許せないから、ぎょくを殺そうと隙を狙うために天井裏にいたんじゃないの?」




「違う。」




「違う?なにが。」



「僕は"僕を見てくれない父を殺したかった"んだ。」




「…はい?」



「僕と兄さんは、ぎょくよりも出来が悪くて。いつもいつもぎょくと比べられた。僕たちには、見向きもせずだった…」



「ふーん。私たちあなたと初めて会ったの華楽からくの港でしょ?」



「あぁ。君たちとは別のところで訓練を受けていたから。スノードロップとはレベルが違いすぎるからって。…それで、君らスノードロップが帰国する前に水本さんに声をかけられて。」



「それで先に華楽からくにいたの。でもそれなら、わざわざこんなにときを待つ必要なかったじゃない?

……それに、今の話なら父親じゃなくて比べる先だったぎょくを狙うはず。…なぜジルを殺そうと思ったの?」




「たしかに。最初はぎょくが狙いだった。水本さんにもその話をしていた。

でも、スノードロップが本当は苦しんでいること。辛い過去がそれぞれにある事。を賢祐けんゆうからたくさん聞かされてた。」



ゆえは、眉を顰めた。

「…もしかして、それで情が湧いた?」



「………認めたくないけど。自分よりも年下なのにこんなにもたくさん辛い思いをして戦っている。ーー背負うものが違いすぎて…

強いレベルが違いすぎるのは、当たり前だ。って痛感したよ。」





「…そう。」




「今ここの天井裏にいたのは…、父親…ジルを殺そうと隙を窺っていたんだ。そこへぎょくが来て。……だから、僕は敵じゃない。


君たちには、悪いことをしたと思ってる。ずっと見て見ぬふりをしてきた。それに、ぎょくに銃口を向けてしまった。


いくら、唯一の心の在りどころの兄さんを殺されたとしても。してはいけなかった。ぎょくに話がしたい。


そして、アルタイアの人間を代表してスノードロップの皆に謝りたい。」



「代表?謝る?…謝られたって、過去は変えられない。……まあでも。あなただけの責任じゃない。」




「っっ!ゆえも優しいなぁ。…過去を変えられないのだって、分かってる。…本当に申し訳ない。」



「……」



「…ぎょくが兄を殺したと聞いて、つい…頭に血が登って……あんなことをした。本当にすまなかった。

だから、僕は敵だと思われてもしょうがないと思っている。


牢の中でひとりになって、冷静になったときに。……ようやく目が覚めた。本当に、すまなかった。…」




「そう。…分かった。一旦このままぎょくのところに……あぁ、その前にエイダンとノア皇帝の妻エマはどこにいる?」




「ここに来る途中に2人でいたところを見つけたから。捕まえた。隣の部屋にいる。」



「そう。2人も連れて行く。」




「どこへ?」




「ぎょ……


……ーパーンッ


大きな音共に窓の外には花火が上がる。

2人はばっと窓の外へ目をやる。



水本も殺し、この戦争をおしまいにする合図。



ぎょく、水本をついにやったのね。)



ずっと黙ってことの行く末を見守っていた師も窓の外を一緒に見た。

「…ぎょく……か。」




「……こ、これは?」



華楽からくの勝利。水本を殺したのよ。」



「み、水本、さん?なぜ?」




「水本が後ろで糸を引いてた。私たちスノードロップを作ったのも。作るために悲惨な過去を作り出したのも。」



「もしかして?君たちの親を殺したのが…?」



「水本。」




「水本、さん。が、」



ゆえが窓から目線を外しアイランを見た。

アイランはこれでもかと言うほどに目を見開いて、驚いていた。



(まあ、知らないと驚くよね。)



「3カ国の支配者と言っても過言じゃないと思う。」



「ま、さか。」



「本当よ。本人が証言した。」



「そしたら、僕はもしかして…」



「あなただけじゃない。私たちもみんな。水本の駒だった。」



「…」

アイランは、下を俯いたと思ったら膝から崩れ落ちた。話さなくとも分かる、"なぜ自分が駒に?"という言葉が。




「とりあえず、みんなと合流する。広場に行こう。ぎょくにさっきの話をして。……ぎょくは、知っての通り。優しいからね。……許してくれるかも、ね?」




「わかった。ゆえ…僕の言葉を信じてくれてありがとう。」




「信じるも何も。判断するのは私じゃないから。畑国長はたくにおさも許してくださるといいね。」




「……きっと。許されないことをした。信じてもらえなくても、僕の話だけでも聞いてほしい。ぎょくに。」



(本当にぎょくは、優しいからね。なんて言うかな。)




「エイダンとエマも連れていく。」




「分かった。僕が連れて行ったら、いいのか?」





「隣ってどっちのかわからないから。案内して。私たちで一緒に連れて行けばいい。」





「本当に、ゆえは優しいんだな。」

そう言って、アイランはようやく立ち上がった。



「無駄な話はいい。早く行くよ。」




後ろからぶつぶつと『水本さんは、そんな人だったのか。』と戯言のように言っている。




(殺しの仕事をして帰って来たぎょくに、龍元りゅうげんの人が不法侵入者だったのか?と聞いたらしいし。

おそらく、水本が流した情報も偽物だったんだろう。何も信じられないよね。)



隣の部屋を開けると言っていた通り、エイダンとエマが重たそうなタンスに括り付けられていた。


「ちょっと!早く外さなさいよ!」




「……ジルは?どうしている?」




「答える必要はない。ついてきて。」




アイランが黙って2人をタンスから外し、ぐるぐる巻きにした状態で連れて行こうとした。




「ちょっと!!!アイラン!聞いてるの?」





「うるさい。口も縛っておいて?」




「ああ。分かったよ。」




「おい。アイラン。お前はジルの子供。どちらにつくべきかわかるだろ?」




「そうよ!!外しなさいよ!!!」



(うるさい。早くして。ぎょくが待ってるのに。)



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