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スノードロップ  作者: 白崎なな
第5章、戦争
41/46

41。翠玉の衣

(本当に翠娘娘すいにゃんにゃんは殺されてしまったの?こんな人を弄ぶような人の言うこと、だよ。……まだわからないよね、?)



そうこう話をしているうちに、燃え盛る炎の中からゆらりゆらりと人影が映る。

ーー人を抱えて。



(違う違う。お願い!)



信じたくない思いで、強く願った。

そんな願いは、簡単に消えることになる。



翠のお気に入りの淡い緑の衣の色が見えたから。



『これ見て欲しいの。新しい衣を新調したの。翠玉エメラルドの色で、とっても綺麗でしょう?

私この色が一番好きなの!』



数年前に龍元りゅうげんを訪れたときに翠が、そう言って袖をもちクルクルと回って見せてくれた。その翠の姿を思い出した。


いつもはお淑やかな彼女が、喜びのあまりとても幼く見えたのが印象的だった。



その色の衣を身につけるのは彼女しかいない。

抱えられたひとは、間違いなく翠だった。




「…………水本、許さない。」


抱えていた男――はたが地面を這うような声で言う。




「なぜだ?龍元りゅうげんの考え方に則って、すぐに火葬をしただろう。………早く天国に行ったほうが幸せ?なんだろう?」




「違う。お前が殺したことに対して言っている。母上は、何もしていないのに。」




「へぇ、君は、国の頂き立つべき人間では無かったということだな。

自分のことだけしか考えられないなんて。


スノードロップを解体する。とか言っておきながら、戦わせるのは彼女たちだ。

殺しをさせたくない。と言っておきながら結局、戦争をこうして起こしている。


戦争というのは、殺すか殺されるかのどちらだ。犠牲は必ずともなう。

自分だけは違うと思っていたのか?自分の母親が殺された時だけ怒りを覚えるなんて。」




「……」



水本は、ようやくぎょくから顔を逸らしてはたの方を見た。

「そんなの子供のすることだ。」



「お前の方が、自分のことしか考えてない。

そんなことを言える立場ではない。」



「人間というのはみな利己主義なんだよ。

私はこの戦争はとても心待ちにしていたことだから、感謝しているぐらいだけど。」




(早く、水本を…やらなくちゃ。この手で終わらせないと。この戦争は、起こしては行けなかったんだ。)




「水本…もういいです?言いたいことはそれだけですね?

先ほどあなたが言ったように、犠牲がつきものです。あなたの犠牲でこの戦争を終わりにします。」




ぎょく。それは私にやらせてください。」




「……、確かに、翠娘娘すいにゃんにゃんのこともありますが、これは…スノードロップの問題ですので。そこだけは譲れません。それより、お側にいてあげて下さい…」



「わかった。」



「ハハハッ、ぎょくに殺してもらえるなんて。本望だよ。君ならやってくれるね?

私を殺して、君はこの国を率いて華楽からくを世界で一番にしてくれ。その世界を見れないのが心残りだ。生きているうちにそれを見たかったなあ。」


すっかり日が落ち、暗くなった天を水本は仰いだ。

手をひらひらと振り、普段の様子とはかけ離れていた。



(悪魔だ。)




「ひとつ言いますけど。」


ぎょくは腰からリボルバーを抜き銃口を水本に向け、カチッとトリガーに指をかける。



「…なんだい?」



「私は、皆を解放して自由な世界を作ります。あなたの望む世界ではなく。」




「フッ。実際、国の頂に立てば私の言うとおりにするしかない。と気づくだろう。

華楽からくこそ、世界の中心になるべきなんだ。とね。そして、君は私が言った通りにする。」



ひらひらとしていた両手を広げて声高々に言う。

その様は、悪魔のようにぎょくの瞳には映った。



ーバンッーーー


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