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スノードロップ  作者: 白崎なな
第5章、戦争
40/46

40。宝物

パチっ…バチバチッーー


森を抜けた先に勢いよく目の前で燃える船。

夕暮れとなり、西に落ちかける夕陽に照らされ燃える。

船の前に立つのは、この悪魔のような冷え切った世界を作り出した張本人。


水本だ。




(ぜったい。許さない。)



燃え盛る船を見ていた水本がこちらを振り返った。


「ハハハッ。ぎょくよ、よく来てくれたな。

いいかい?君はこの国を統率する力がある。

スノードロップを率いたように。」


一歩一歩と前に進み、水本の目の前まで歩みを進める。ぎょくは、ぐっと眉をひそめた。


「……何が言いたいんですか?」




「じゃあ、まずは昨日話した"私が17年も前になぜ、スノードロップを作ったのか"は、理解してくれたかい?」




「昨日話された話なら理解できませんでした。あなたと同じような機械の心を持っていませんので。」



水本は、普段あまり笑ったりしないのに今日はとても上機嫌なようでよく声に出して笑っている。

話すテンポも普段より早い。



「フッ。何を言っているんだ。君は殺戮兵器だから、機械の心を持っているだろう?……私とおなじだ。だから、今から言うこともきっと理解して同意してくれる。」




「どれだけ熱弁されても、理解できません。」



「理解ができるかどうかは聞いてみないとわからないだろう。……いいかい?私の夢は、華楽からくを世界一位の国にすること。


 

そのために、今起きているような戦争を引き起こし、アルタイアを消す。そして、龍元りゅうげんを私たちの国の傘下にしようと考えた。」



「………」



「無言ということは、私の意見に同意してくれたとみていいね?」



「違います。呆れて言葉が出なかっただけです。」



「ハハハッ。まぁいいだろう。

ちなみに、酒井も私の意見に賛同してくれている。おかげで私たちは、君たちを"最高戦力"と位置付けることができた。

そうすれば、戦争をしてくれてスノードロップの戦力で漁夫の利をと思っていたんだが。


そもそもこの戦争は、しんのところへ行かせたアルタイアの人攫いとの一件で起こる予定だったのに。

予想以上に、龍元りゅうげん は保守的なようでさらに鎖国状態を強固になっただけだ。」




「なぜそこまでして戦争をして世界一位を目指したいんですか?理解できません。

そして、我々が消そうとしているではなくて……あなただけの意見ですよ。」



「なぜ?それは、華楽からくのためだ。

私だけの意見ではない。…では、国の宝はなんだ?」



(それとこれの何の関係が?そもそも、なぜその言葉を私が答えなくちゃいけないの。

勝手にそう国民の前で言い出したのはあなたなのに。)



「……………民だ。ですよね。」



「ああ。そうだ。民のためには、華楽からくの経済力をあげて世界でいちばんの国にする。

そのためにこの17年、やれることをやってきたんだ。


さらに言うならば…アルタイアからきた不法侵入者を殺させてたのも、我々がアルタイアを消そうとしていると気づかせないため。


不法侵入者は、スノードロップが躊躇いもなく殺す。という法律があるからね。」



――やれること。それは、全てをスノードロップにおしつけただけ。それを鼻高々にいうことではない。

そもそも不法侵入者を全員殺す。というのは間違っている。



さらには、経済力を上げることに関しても恐らく人身売買のことだろう。



「それは、民のためになるとは思えません。

私たちのような子達を生み出した。それを踏まえた上でも、"宝"だと胸を張って言えますか?」



「もちろん。やってきたことは間違ってない。

不法侵入者は野蛮だ。宝を守るには、スノードロップの力が必要だった。」





「話が全く見えません。」



「そうか?それなら……龍元りゅうげんを取り込むためのはたに、アルタイアへ間違った情報を流してくれるアイラン。揃ったら?……面白いことが起こるとは思わないか?」



「思いませんね。そもそも、アイランとあなたとの繋がりはなんですか?」




「あぁ、彼?彼はね、君に執着心があるだけで敵ではないんだ。敵ではないアルタイアの人間を探し出したんだ。」



「敵ではない?そして、わたし?」



「そう。かく言う私も、君は宝物のように思っているんだよ。きっと、ジルも。」



「どういうことでしょうか。」



「簡単なこと。はじめて手に入れた気持ちというのは忘れられないものだ。要は宝物なんだ。」


「宝物ですか?」



「そう。私は、なんとかしてアルタイアを消し去るためにと考え、やっとの思いで見つけたのが君。


ジルは、若くして国の殺し屋に成り上がった。

そんな時にできた一番弟子で、飲み込みも早くよくできた弟子の君。


そして、自分よりも強くて実の息子よりぎょくに手をかけるようになった。そんな父親を見て育ったアイラン。



………全員が君のことを欲しがっているんだ。」




「はぁ。それとアイランが敵ではないということは、どんな関係が?……そして、この船が燃えてる状況はなんですか?」




「アイランは、自分を愛してくれない父親。別から愛を得たいと私に言ってきたんだ。適任者がいると、その役を与えた。」



「もしかして、畑国長はたくにおさのことですか?」


「御名答。そこで、君たち3人のことも見えてきたようだ。ジルを…実の父親を殺す手伝いをすると私に言ってきたんだ。


元々は、アルタイアの動きを把握できるし、中の動きだと偽情報を与えればそれをアルタイアに流す。いい役だろう?

でも、私たちの味方として働くと自ら言ってきたんだ。」




「私を殺そうとしましたけど。」




「フッ。それは、実の兄を殺されたのだからそう行動するのも致し方がない。

……それと、この船は龍元りゅうげんの王女がいた。だから、殺して燃やした。はたぎょくがくる直前に来ていたよ。そろそろ中から出てくるんじゃないか。」


その言葉にバッと反応をして燃える船を見た。

(森林の中で離れたときに、私の道よりも早く着いたの??………まさ、か。ねぇ。)


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