表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノードロップ  作者: 白崎なな
第1章 玉 月 杏
4/46

4。ペンダント

 …バンッーーガシャン

 ダンダンッ…ーダンッーーーー



 立てこもりもしていて、相手が有利なはずなのに結局その3人もあっさりだった。手応えを全く感じないその様に、違和感を覚える。


 (こんなにすぐ終わるものかな。

 なんか、おかしい気がする。 ……まだ何かがある?)



 これだけ人数も少ないし、こんなに弱い人たちを "あの人" が送り込むのはおかしい。そう感じた。いや、知っている者であればみな感じるだろう。



 ぎょくは、スナイパーを構えていた一人の首にかかっていたペンダントを見つけた。月明かりにペンダントの先についている宝石がきらりと光る。嫌なものほど、目につくものだ。


 ……紫水晶の宝石。


 ぎょくは、そのペンダントを首から外して光に当ててよく見る。光に反射してひかる紫色。そこには、何かが刻まれている。

 



 文字なのか記号なのか。果たしてそれが何かは、分からない。ただ、一つ理解できたのは。

 ーーーーただのペンダントじゃない。ということ。





 おそらくぎょくが対峙したグループを送り込んだ人物。もしくは、組織を断定できる物だ、と。



 紫水晶をペンダントとしているあたり、ぎょくという人間を知ってのことだろう。


 なぜなら、玉の瞳の色は珍しい紫水晶と同じ薄い紫色だから。



 華楽からくでは、紫という色は悪魔の色と忌み嫌われている。

しかし、他国では紫というのは ”高貴な色” とされているらしい。国が違えば、考え方も感じ方もまるっきり違う。それが、色ひとつとってもよく示されている。




 今回送り込まれている人たちは、恐らくアルタイアの人たちだ。そのアルタイアという国では、瞳の色で階級が決まる。


 高貴とされる瞳の色は、紫、黄色、青。

 最下層として扱われるのが、赤色の瞳。



 仮に親が紫の瞳で子供が赤色だった場合。その子供は最下層の人。というように、瞳の色が絶対。

 血縁関係よりも瞳の色を重要視している。



 華楽からくではゆえしんのような黒や茶色の瞳の人しかいない。龍元りゅうげんの人々も、黒と茶色の瞳が多い。


 華楽からくの島は、元々は龍元の大陸のひとつだったとされている。大きな地震によって華楽からくの島は孤島となり、力をつけて国となった。

 なので、龍元りゅうげんの大陸の面持ちを感じる。瞳の色も同じく、黒や茶色が多いの龍元りゅうげん大陸の人間の特徴だった。




 アルタイアや、龍元りゅうげんに渡ったことがあるぎょくでも紫色は現アルタイア皇帝でしか見たことがない。

 それほどに紫色の瞳は珍しい。



 もちろん黄色や青も、指で数えられるほどしか出会った方がない。出会ったことがないだけで、実際には存在しているのだろうが。




 そしてこの紫水晶のペンダント。ぎょくという人間の瞳の色が紫ということ知っている、ということだろう。



 さらには、その瞳の色と同じ紫水晶に自分たちのマークを刻むということは……。



 単純明快。ぎょくの命を狙っている。それを示すもの。または、ぎょく自体を狙っている。

 どちらにせよ、命を狙われていることに変わりはない。



 (こんなわかりやすい物持ち歩くなんて、不用心?

 それとも、こんな小娘になんて負けるわけがないと私たちを馬鹿にしているの?)




 ーーどちらにしても、このペンダントはかなりの情報。




 部屋の隅々に目をやる。ペンダント以外に特に何もないことをしっかり確認をしてビルを後にする。螺旋階段を降りながら、ぎょくは考えていた。 "自分を狙うなら誰なのか" を。



 ビルから出てすぐに声をかけられた。

 「失礼致します。ぎょく様」



 玉に気がついた、第一部隊の隊長の桜井が右膝をついて頭を下げる。軍部での最敬礼だ。



「桜井、そのビルも頼んだ」

「御意」



簡単にやり取りをして、ぎょくは事務所へ急いだ。




 ーーーーサクッと処理したつもりだったのに、結局太陽が昇る直前になってしまった。日付も変わり、清々しい程の風が肌を掠める。

 それなのに、自分の体は鉛のように重たく感じる。それは、ただ単に寝不足だからかもしれない。




 ぎょくは、大きく息を吐いた。そして、そんな昨日の夜起きた出来事を思い出していた。

 思い出すたび、処理をした後の気持ちが沈んでいく感覚が蘇る。そんな嫌なことを頭から忘れようと、先ほどまで食べていたケーキに手を伸ばす。


 


 「鑑定部は、相変わらず仕事が遅い」




 「ゆえ、そんなこと言わないで。彼らのおかげで、これまでもいろんな情報を手にすることができたんだから。」



 そんなことを話していると、扉をノックする音がした。

 ……コンコン


 「はい、どうぞ」


 ぎょくが返事をして扉を開けた。


 「ぎょく様、ゆえ様、しん

昨日のペンダントの鑑定結果が出ましたので、お伝えに参りました。」


 そう言って、鑑定部の長谷が右膝をついて頭を下げる。私たちスノードロップ幹部は、軍部の中でも上位。そのため、必ず軍の最高敬礼をされる。




 「どうぞ、こちらに」

 部屋に招き入れ、話を聞く。ぎょくに続いて、部屋のデスクの前まできた。



 ぎょくが着席をすると、長谷ははなしを始めた。


 「このマークは、アルタイアの "ニーナ" という人物の組織であることがわかりました。

ニーナは、現皇帝をあまりよく思っていないらしく。

現皇帝を蹴落とし代わりとなる人物を探していたところに、ぎょく様の瞳の色が紫である旨を知りこのような事に及んだようです。」



「そう、それで、どこから私の瞳の色の情報が?」



もちろん前線に立つ時には、カラーコンタクトを外すので軍部や政府の人間は知っている。敵となる人物も見ることになるが、捕まえられるか殺されるかの二択で。


捕まえる、という場合にはぎょくは前線には立つことはない。

 処理(ころし)の仕事をスノードロップの他の子達に回さないために、率先していた。そのため、捕まえる仕事であれば別のスノードロップの形に任せていた。


 ーーとどのつまり、ぎょくの瞳の色を知るのは軍部の人間または政府の人間。

 もしくは、ぎょくたちが敵対視をしている人物。




 「軍部や政府の人間であれば、簡単に情報を相手国に手渡す裏切り行為として見過ごすわけにはいかない。」

 そう言ってゆえは、長谷が手にしていた書類を受け取る。



 「そちらに関しては、わかりかねます。

 が、しかし。おそらくはアルタイアのプロの殺し屋 ”ジル” ではと推測されます。

 彼なら、この事務所エリアは把握してますし。


 ぎょく様、ゆえ様、しん様を教育した人物ですので、知る情報は私たち鑑定部より多いと思います。」




 (ジル、彼しかいない。)


 私たちが敵と認識をしている人物。ジル。

 アルタイアの人間で彼はぎょくの瞳の色が紫であることを知る、唯一の人物。


 「わかった。下がって。」



 「御意」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ