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スノードロップ  作者: 白崎なな
第5章、戦争
33/46

33。戦闘開始、玉

「これが、へりこぷたあ。プロペラってこういうものなのかぁ。」


(さあ、早く片付けよう。今頃、軍師月ゆえが作戦の説明してるはずだから。早く合流しないと。)


機体のエンジンルームに弾を撃ち込む。


ドンドンドンッーー


「ジジジ、こちら玉。任務遂行。」


(ん?あれ?無音?どういうこと?と、とりあえず戻ろうかな。)



急いで軍部の借りている部屋に戻った。

途中で、アルタイアの兵とすれ違いささっと物陰に隠れながら移動をした。


『戦闘機が燃えてるらしいぞ!』


『やっぱり、戦闘機の開発はまずかったんじゃ。』



『せ、戦争ってことだよな。とりあえず、上官たちも向こうに向かってるらしいぞ。早く行こう。』



(良かった。バレなかった。私も急ごう。)



トントンッー

ぎょく戻りました。」



「早かったね!」



「インカムが無音だったんだけど、どうしてかな?」




「新しくなったらしいの。それで繋がらなかったみたい。あとで、桜井にもらって。」


「了解。……それで?作戦内容は?」



「ざっくり話しながら、鳳凰木の森に向かうよ。

3つのグループに分かれて進軍。

ぎょくは、6時の方角。アサルトライフル使って。弾薬の説明は銃撃部隊に聞いて。

しんは、9時の方角。

私と畑国長はたくにおさで3時の方角。」




「了解。やっぱり前軍に私たちの方が、進軍しやすいんじゃ?」



「そのつもり。」



「そろそろ日が昇るねぇ。」




「うん。……ありがとう。ふたりとも。ここまでついてきてくれて。」


「当たり前でしょ!最後のことばみたいじゃん!

やめてよ〜、生きて帰るんだから!まだやることあるよ〜?」


「そうだよ。それに、私たちもぎょくに感謝してるんだから。ここまで引っ張ってきてくれてありがとう。」


「最後まで、もがいて。勝って帰ろう。」


目の前に鳳凰木が広がる。

その中には、華楽からくの軍がいた。


龍元りゅうげんの軍は?」



「皇室側の港にいる。」



「了解。」


3人が目を合わせ頷く。

それを見た桜井が、ぎょくに声をかけた。


ぎょく様、準備が整いました。」


と第一部隊の桜井が新しいインカムを手渡してきた。

それを右手で受け取り、背中側の腰の銃のホルダー紐につけた。

片耳ヘッドホンの形の無線機を頭からつけ左耳の位置を調整する。



「今回のは、新作だそうで以前のものより質がいいかと思います。」



そう言って桜井はぎょくの後ろに並ぶ新しく編成された部隊の一番前に戻った。


(進軍の言葉を言うのは、久しぶりだなぁ。

用意された役になりきらないと。)



ぎょくが一歩踏み出し、両手を後ろで組んだ。

「運命を受け入れ使命に生きる」



その言葉で華楽からく軍の全員がザッと音を立てて右膝をついて頭を下げる。


「「 玉覇ぎょくば様に恭順きょうじゅんを宣誓する。」」」



「ーー戦闘開始」

ぎょくがその言葉と共に右手をスッと右下に出す。



開戦の合図だ。

さらに、狼煙を上げて合図を送った。


拡張機をを使っているわけでもないのに、ぎょくの声は響いた。



一番にゆえしんが先導を進む。

ゆえが左手に、しんが右手に別れて進んで行った。


その後ろを、華楽からくの兵が続く。


2人の後ろ姿を見送った。



自分たちも6時の方角に進軍しようとしたところで、正面からのアルタイア軍が進軍してきた。


(背後は森林。こちらが有利。ここでやって進んで、が賢明な判断かな。)


身体の前で準備体制として握っていたアサルトライフルを撃てる構えに持ってくる。



「……撃て。」

その言葉でぎょくの左右にいた銃撃部隊が撃ち込む。



ぎょくの左側にアサルトライフル用のマガジンが積まれており撃っては、リロードをする。


ドドドン…ガシャんーー



目の前が真っ赤に染まる。

兵がドタドタと倒れ込んでいった。



(よし。これで前に進もう。)


「――前進……」



『ジジジジーー』



(なんの無線?)


前進と言われて進もうとした軍を、手で静止する。



『ジジ…、こちらしん幹部リンと接触。』


(もう幹部?こちらと同じく幹部を前線に配置してきた? 


ゆえ側からの連絡は、…なし。ーということはしん側の軍が少なかった?それとも、畑国長はたくにおさもいたから?)


「ージジ…了解」



『ジジ…』


(今のインカムは、ゆえかな。)


後援部隊がこちらに向かって来るのが見えた。

もう一度構え、アサルトライフルで撃った。



ぎょくの動きを見て華楽からくの兵も撃っていく。



ぶわぁあっと砂埃が立ち込める。

その砂埃の中をふわりふわりとこちらの銃弾をかわして進んでくるシルエットが見えた。


きらりと光って見えたのは、アルタイア幹部の証の軍部の帽子についた鳳凰木の装飾。


帽子についた鳳凰木の金の装飾ひとつ。…レイティだ。



「こちらぎょく、幹部レイティと接触。」




『『ジジー御意…』』



アルタイアの軍の前軍が消え、レイティの後ろから二陣が待ち構えているのが見えた。

(これは、総当たり戦ということね。こちらのマガジン数も限りがあるし…やるしかない。)



ぎょくは、アサルトライフルを右手で持ち銃口を少し上にして左右に振る。


「全員、前進。」



「「御意」」


軍の皆が返事をし、走って前に進む。

アサルトライフルの単発でレイティの前に来ていた3人を撃ち殺していく。


ドン…ドンッードンッッ…


そのままタタタッと走ってレイティに近づく。

相変わらず総当たり戦になっている戦場にもかかわらず、ゆらりゆらりと動いて弾を交わしているだけ。


乱闘となった戦場の砂が、更に強く巻き上がり砂埃で視界が悪くなっていく。

その砂煙の中に飲み込まれたレイティを追うようにぎょくも砂埃の中に入った。




背後から右手で短刀を持った男にぎょくは、首を狙って振りかぶりながら近づかれた。

くるっと体を返して右手で腕を掴み、男の腕をグッと伸ばし手首をトンと叩き短刀を落とさせる。


そして、左手で下顎から頸動脈けいどうみゃくに左胸にさしておいた短刀で一撃を入れる。

すぐに胸元につけてある鞘に戻す。


短刀を持った男が倒れるとその後ろから、声をかけられ銃口を向蹴られる。



「その紫の瞳は、ギョクさまだなあ。オレは、ラッキーだナア。」



すかさず、右腰のリボルバーを手にとり素早くトリガーを引いて銃を持った男の心臓を撃ち抜く。

「ー誰と銃撃戦をしようとしてんの。」



『ジジジー、こちらしん。リン処理。』



「ジジ…了解。」



そしてレイティを含め数人に囲まれた。

「ギョクさま〜?銃じゃなかったら勝てるのか〜?」



刃を向けられる。


「あいにく私は、刀剣使いじゃないのよ。でも、こんな状況は何度も切り抜けてきてる。」



一人目が振りかぶってぎょくの頭上から刃を振り落とす。

それを右足を引いてかわし、二人目が背後から銃口を向けてきた。



撃たれるより先に二人目の頭を撃ち、銃を向けてきた男の後ろからさらに現れる。

目の前に現れた男の鳩尾を刀を振り上げている間にジャンプをしてくるっと一回転をして右足で蹴る。



着地と同時に右膝を曲げ左足を伸ばした体制で、綺麗に眉間の真ん中を手にしていたリボルバーで撃ってく。

パンッ、パンッーパン……ガシャンーー



ケープの下にある弾をさっと入れてリロードをしながら立ち上がった。



パチパチパチーー

レイティは、拍手をして声高々に笑い声を上げる。



「ハハハ、さすがはギョクさまだなあ。ころすのは惜しいナア。

ギョクさまは、オレを楽しませてくれる人なのかナ〜。ハハハ!血の匂い。口の中がジャリジャリ砂の味。


戦場は、オレの生きてる証なんだア!ねえ、ギョクさまァ、もっともっと脳がおかしくなるぐらい!楽しませくれ〜。全力でオレを殺しにこいよ〜」



「趣味悪い話し方。ぎょくというのは、たまのように可憐で美しい、という意味なの。

それはここ戦場でも変わらないのよ?」



「ハハハ」

と天を仰いで笑ったと思ったらこちらに腰に下げた剣を引き抜き、胸に向かってひと突きしてくる。


ぎょくは左足を出して一歩前に進み半身にしてかわし、レイティの足の隙間に右足を引っ掛けた。

レイティの左足を払いのける。


リボルバーのトリガーに指をかけ、レイティの頭に銃口を向けようとしたとき

レイティがバランスを崩しながらも、剣だけを後ろに向けてぎょくを狙う。

後ろに体重をかけ逃げたが、頬を擦り血がスーっと流れた。


レイティが体を回転させぎょくに向く。

そして、振りかぶった。


(ああ、そんなに隙のある動きをしたら狙われるよ?)



ぎょくは、リボルバーのトリガーを引いてレイティの心臓を狙って撃つ。


レイティは、振りかぶった体制のままそれを見込んだかのようにしゃがんだ。

右肩に弾丸は命中した。



レイティはアドレナリンがでていて撃たれたことにすら気づいていないようだった。


しゃがんだ体制から斜め前に体重移動をした。

ふっと後ろにジャンプをしてよけ、レイティの背後に回った。


そして、後頭部から撃ち抜く。


パーンッ……

ーーカランッードサッ


(んー、手応えなし。大層なこと言ってたし、幹部なのに、残念。)



周りを見渡し、私がレイティに勝ったとしても戦況次第では動きも変わってくる。



(まずはジル、ジルを探さないと。)



周りに残っている兵も、ほとんどが華楽からくの軍だった。


(さっきから、ゆえからの無線が無いけど…)

「ジジジ……こちら玉。ゆえの状況を教えて。」





『ジジジ………』



(また故障?大切な場面で連絡が取れないなんて。)



「ジジジ…こちらぎょくゆえの無線が聞こえない。誰か幹部と対峙しているなら無線を入れて。」



『ジジジ…』




しんの方にリンで、今のがレイティなら残るはあとひとり。もしくは、……ジル?)




『ジジッーーこちら、雲嵐うんらん。ジルと遭遇。皇室の側だ。3人のうち誰か来れるか?』




「ジジッー。こちらぎょく。私が向かいます。」




(ジルだ。ジルは、私がやる。)


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