32。軍師月
ノアが宣戦布告を受け取り、自分たちの勝利の時の戦利品について明言した。
ジルが、"今は、先ほどの音で火事が起きていないかを見てくる。なので、明日の朝から開始にしよう"と言った。
畑を含めた4人は、先に部屋から出ようとした。
そこにエマがテーブルに置いてたフォークを手に取り、4人に投げつけた。
『お前らなんかに、絶対負けない。』
さすがは双子というべきか、エマの動きと同時にニーナがナイフを片手に玉に向かってきた。
玉は、右足を軸にして左足をさっと引き伸びてきたニーナの腕を右手でぐっと握る。
そして、ひじにある手三里のツボに親指を入れ腕を下に引っ張る。
『勝手に動かない方が良いと思いますけど。』
『チッ。お前を殺すのは、あたしかジルがやる。』
『ニーナ。』
ジルが名前だけを呼んだ。それに全て込められているかのような言い方だった。
その言葉で、ニーナは腕から力を抜きノアとジルのいる窓際へ戻った。
『それは、楽しみですね。…それでは失礼します。』
そうして、4人は部屋に戻ってきた。
部屋に入るなり荷物からいつも使っているインカムをつけて、それぞれと連絡をとろうとした。
コンコンコンッー
「……失礼します!第一部隊桜井です!」
そう言って扉が開かれたその先に、桜井と共に翠が入室してきた。
「翠娘娘、先ほどの音はなんの音でしょうか?」
「実は、雲嵐が航空機を見つけたと無線が入ったの。その航空機には、翼の下に弾薬の大きなものが付いていたそうよ。」
「せ、戦闘機……ですね。」
「ええ、おそらく。ということで、爆破してもらったの。あんなに危険なもの放置はしておかないでしょう?」
「そうなのです、ありがとうございます。あと、問題はへりこぷたあと呼ばれる機体ですね。」
「それについては、玉が得意分野でしょ?今から行ってきて。」
「軍部の武器庫ね。了解。」
「桜井は、第二部隊の永井と第三部隊の豊永を連れてきて。」
「御意。」
「杏は、ここに残って進軍をどうするか話すからしっかり聞いてて。」
「うん、わかった。」
月は、アルタイアの地図を広げた。
"ちょうどここの軍の建物と鳳凰木の森との間に空間があって……"と、作戦を練り始めた。
コンコンッー
「「失礼します!」」
そうこうしているうちに到着をしたようだった。
「第一部隊〜第三部隊で縦割りで3つに編成をしたい。」
「それは、第一部隊を3つに分けるということですか。」
「うん、そういうこと。ひとつは、銃撃戦ができる人を集めて。」
「それは、玉様、月様、杏様にそれぞれ着いていくということですね。」
月は、こくりと頷いて返事をした。
月の返事を見て三部隊の隊長が名簿を出して、振り分けをした。
「…そうしたら、私たちは鳳凰木の方面から軍部の方面に向かう形になる。」
「しかし、今いるここは軍部です。」
「でも、相手の国で起こされる戦争なのよ。
皇室を守る形を向こうはとるでしょう?」
「そうなりますね。」
「月、そうすると12字の方角に鳳凰木。
6時の方角にへりこぷたあ。
3時の方角に図書館と街。9時の方角に軍部と皇室。という呼び方になるんだね?」
「そうだね。9時の方角に向かうのは杏。軍部方面からは、体術も強い人が多いから。
3時の方角には、私。市民が住む地域になるから、おそらく銃撃戦は少ないと思う。
今いないけど、6時の方角には玉。武器庫方面から攻めてくるから銃撃戦が予想される。」
「玉様側は、すぐにリロードが可能なように弾薬を置けるようにしましょう。」
「そうね。それと、銃撃部隊は念の為に銃と短刀を所持したいって。おそらく銃社会だから良いと思うけど、近距離戦になった時に少しでも有利に働けるようにね。」
「御意。」
「後ほど、私から玉様にはお渡ししますが…新しい無線機が出来上がりました。
以前よりは少し改善されていると思います。」
「ありがとう。ーそれと、翠娘娘…師は、今どこにいらっしゃいますか?」
「航空機を爆破させたあと、そのまま皇室側の港に行っているわ。私たちは、鳳凰木の隣の港に停めてるの。あなた方の船もそこに停まっていたよね?」
「はい、そうです。それなら、師は師で皇室に乗り込むと思いますし任せましょう。」
「翠娘娘は、危ないですから船を鳳凰木の裏に止めて船いてください。そして、もし身の危険を感じたら狼煙を使ってくださいね!」
「分かったわ。幸運を祈ってる。」
「ありがとうございます。……畑国長は、私ときてください。同じ刀を扱う者ですし、一緒に動いた方が良いと思います。」
「そうですね、さすがは月ですね。」
「!い、いえ。ありがとうございます。」
ーードンドンドンッ
「おそらく、玉ですね。しっかりやってくれてるでしょうね。
ところで、桜井?この新しいインカムは、古いものとは話せないの?」
「はい、新しい物同士になってます。」
「ちゃんと、母上と父上には新しい物を渡してあります。あとは、玉に渡すだけです。」
「きっと今頃、連絡が通じないって思ってますよ。」
「そうだろうねえ、悪いことをしたかな。」
「……なんか、畑国長と月……前より仲良くなった?」
「杏、関係ないこと言わないの!」
「あ、あぁ、ごめーん!作戦、実行だね!」




