31。火蓋を切る
静かな時間が流れていたのを破ったのは、ジルだった。
大きな音を立てて椅子から立ち上がった。
そして、テーブルをぐるりと周りを歩き何も言わずに、扉から出ていった。
(え?何も言わずに退出するなんてことある?
しかも、あんなに大きな音を立てる必要ないのに。)
『ジルはニーナを呼んで来ると思う。悪気があったわけではないんだ。』
『無言で立ち去るので、驚きました。
……それよりも、この宣戦布告書は受け取ってくださいますね?』
『受け取らないといけないんでしょう。
龍元まで、絡んできていると言うのに。』
『そうですね。』
『あなたたちは、玉さまを、最大限使えてない。
それなのに、より良い生活、もっと利用価値があるところに引き渡すよりも。自分たちの利益のために利用したい。そう言うことですね。』
『いえ。それは、違います。』
『どこが違うのかわからんな。』
『分かりませんか?』
『……』
『…………』
畑が珍しく怒りをあらわにして、ノアの顔を見つめた。
『…戻りました。エマ妃とニーナだ。
一卵性双生児だから、顔がほぼ同じ。目の色が2人とも紫と赤で珍しい。
エマ妃は、右目が紫。ニーナが左目が紫。
なんだか、双子でなければどちらかの色で産まれてきたかのようだね。』
『ニーナ様……あなたの子供がニーナと言う名前の彫られた紫水晶を持って来ました。
それは、私に対して何か伝えたいことがありましたか?』
『話は聞きましたよね。あたしから話すことは何もない。』
『そうですか。』
『アイランと連絡がつかなくなりました。
正体に気づいたと言うのでしょう?それなら、もうおまえらの知っての通り。』
『アイランは、そちらと連絡をとっていないのですか。』
『……どうかな。』
(今、華楽にいるのは特殊部隊だけ。
ちょっと変わってる人たちでらあるけど、おそらくしっかり見張っててくれてるよね。)
ーーーードッーーンッーゴゴゴ……
急に大きな音が聞こえた。
『な、なにごとだ?』
『分かりませんが。おそらく音のした方角からすると、滑走路ですね。』
ボディガードが畑を守るように近づいてきた。
(自然な流れだ。だけど、彼が動いたということは、この音は龍元によるものってことね。)
そして、畑が3人に目配せをして口パクで"来た"と言った。
(やっぱり。……そして、見つけた戦闘機を即座に考えて実行できるあたり……流石は師というべきか。なんというか。)
『なるほど。ーー開戦をしようか。
こちらが勝ったら、玉はアルタイアに。
そして、龍元と華楽はアルタイアの国に吸収する。』
ノアは、畑のことを指を刺した。
ーーー戦争の幕開けだ。




