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スノードロップ  作者: 白崎なな
第1章 玉 月 杏
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3。一報

 『ジジジー……スノードロップに告ぐ!

 密入国者を発見。処分をするように…』



 『……こちらぎょく。私が行く。皆は、待機。』



 『『御意』』


 インカムで組織間でのやり取りをしている。その方が効率がいいから。

 事務所は、高いビルになっている。



 それぞれの部屋でバディを組んで待機をする。 二人一組が基本だ。

 私たち幹部はまとめて3人で行動することも多く、同じ部屋にいる。

 総人数が16名なので、私たち幹部ともう一つのグループが3人になっていた。



 私たちの部屋は、外仕事も多いので最下層を使っている。



 もちろんそれだけではなく。

 上層階に幹部がいると思われがちなので、逆に何かあった時には最下層の方がうまく立ち回れるからという理由だ。




 私たちの部屋には、報連相で訪れる組織の人間がいることも少なくない。




 ーーでも今は3人だけ。

 いつものように砕けた言い方で、お互いはなしをしていた。



 「いいの? 1人で行って。私もしんも一緒に行くよ」

 「そうだよ! ぎょくは、強いけど…

か弱い女子って感じじゃん〜! 私たちもいく方がいいんじゃないかな〜?」




 「"か弱い"は、余分かな。……うーん、でも今回は"処分(ころす)"っていう要請だよ。私だけで問題ないよ。

 それより、ゆえはこっちの情報が正しいか確認を。

 しんは、例のあれのGPSの位置の確認を怠らないで。本当にその人たちが、不法侵入をしようとしているのか。……それ次第ではまた仕事が増えるから。

 じゃあ、私は行ってくるね」




 「わかった。」

 「しっかり見てるよ! 気をつけてね!

それにしても、処分だなんて……すごく久しぶりじゃない?」



 「例の、あの人からの刺客とか諜報員とかなんじゃ……?」


 (あの人、ねぇ〜。嫌な予感って当たるんだよなぁ。)


 梨那りなはスッとスイッチを切り替えてぎょくになり、クローゼットの前に立つ。


 「何かあればすぐに知らせる。誰が相手だったとしても問題ない。」



 ささっと身支度を整えて、事務所を後にする。

 黒いワンピースに白のタイ。

 黒のケープを羽織る。

 腰に手錠と、銃を下げて。


 ぎょくという証の揺れる珠かんざし。

 普段の黒のカラーコンタクトを外し、本来の色に。



 ぎょくは、急いで要請書類を取りに向かった。



 今でこそスノードロップは、国の最高戦力と言われるようになったが。

 できた当初から数年前まで、国の軍部の中でも下の下として見られていた。



 最高戦力と名付けられてから何年か経つ。それでもまだ、軍部の事務所内を歩けば白い目で見られることも多い。

 頭を下げようが、顔には ”何故、お前が” と書いてある。



 それでも、堂々と歩く。


 (白い目で見ようが、私は ” 玉覇ぎょくば” スノードロップという用意された箱に、ぎょくという役。……それを演じるのが私なんだから。)




 軍部のビルと政府のビルは渡り廊下で繋がっている。

 もちろん繋がっているが入れる人間は限られていて、私たちスノードロップでは幹部3人のみ。



 茶色の重厚感のある、一際大きな扉の前につく。



 コンコンコン。

 「ぎょくです。失礼します。」



 『あぁ、どうぞ。』

 扉の中から優しい声がした。




 声が聞こえてきてから、部屋の扉が開く。

 部屋の主のボディーガード2人が、私に深く頭を下げて扉を開いている。

 2人に軽く会釈をして部屋の中に入る。



 後ろでキィっと扉が閉まる音がする。



 両手を左腰に添えて、膝を軽く曲げ頭を下げる。

 「国長くにおさ。一報を伺いました。処分書を作成願います」


 言い終え、下げていた頭を戻す。

 手だけそのまま残して。この国で女性がする最敬礼。

 そして相手に敵意がないことを示す、聞く姿勢。


 (軍部の最敬礼はまた違うけど、この頭の下げ方がベストよね。)



 現在の国長くにおさは、スノードロップが軍として活動をすることを好まない。そういう人だ。




 「えぇ。もう作成済みですよ。

 もしかしたら、彼がいるかもしれませんよ。

 ……もしくは、諜報員かもしれませんね」


 そう言ってこちらに、書類を渡してきた。



 「ありがとうございます。書類にサインをしておきます。

 それと、その件は私もその覚悟で伺うつもりですので。」




 「そうですか。便りを待ちます。」



 書類を受け取り、会釈をする。


 「失礼します。」


 そう告げてぎょくは頭を上げ踵を返した。扉をさっと開けられる。


 (さぁ。仕事だ。)



 不法侵入者というが、本当のところ分からない。

ただ海に流され漂い、着いた先がここだった……それなら何の問題もない。



 が、しかし。

 不法侵入をしているあたり、諜報員としてやってきていることが多そうだ。



 それとも。国を滅ぼそうと考えているアルタイアの軍人だったりするだろうか。そもそも、アルタイアは、華楽からくを滅ぼそうがなんの特にもならないだろうが。




 我が国の以前に務めていた国長は、アルタイアと華楽からくと共に歩む。

 アルタイアと我が国は、二人三脚で歩めることを誇りに思うーー。




 だったか。

 それがいつからか、アルタイアのいいようにさせられてるようにしか感じられない。


 いや、最初からそうだったんだ。

 政府は、華楽で起こる問題は全て龍元りゅうげんのせいだと報道する。それは、アルタイアの人間が何か問題を起こしたとしても。


 (実は、アルタイアの人間がほとんどなんだけど。)



 そんなことは誰も知らない事実だった。そうしておけば、華楽からくはアルタイアと手を繋いでおける。そういう魂胆だ。



 もらった書類に目をとおした。

 (あぁ、あの通り沿いね。

 それなら、ささっと終わらせて戻れそう。)




 思っていた通り、書類に書き示された人物はすぐに見つかり。

 処分もさっさと、終えることができた。



 『ーーこちらぎょく。特定の人物を処分済み。第一班、処理を。』




 『……こちら第一班、すぐに向かいます。』



 『了解。』




 そんな無線機で会話をしていたら、背後のビルにいる狙撃手を見つけた。




(やられた。不法侵入者と共に動いているのかと思った。)




 もちろんぎょくのことを狙っている、ということは彼の差金だ。 と。すぐにわかる。




 (今日スナイパー持ち合わせてないんだけどなぁ。

やるしかないかぁ。)



 物陰に隠れながら、狙撃手のいるビルまで近づく。


 ………入り口に5人。



 上層部に1、2……3人だけか。



 道に西側に2人。東側に4人。





 (たったこれだけ?? 何だか拍子抜け。

 むしろ……お前にはこれで十分だっていいたいの?

 完全に舐められてるとしか言いようがない)



 サクッとこちらも終わらせてしまおう。東側からダンッダンッと撃って進む。

 西側と入り口にも。





 上層部からスナイパー弾も降ってくる。



 上手くかわしながら、処理していく。

 ーーダンダンダン。


 (弾薬も勿体無いから、一人一発ね。

 それに、急所にしっかり当ててあげた方が苦しまなくてすむよね)



 心を無にして遂行していく。

 道端でのそんなやり取りは、すぐ終わった。返り血ひとつ浴びず身綺麗なまま。


 カツン。カツン…… ビルの中に進む。



 ビルの中に入るとすぐに螺旋階段が伸びていた。

 ……カシャン、ガチャンとリロードをしながら階段をどんどん進める。




 おそらくスナイパーがいたであろう部屋にたどり着き、ひと呼吸をつく。そして、一気に部屋を開ける。



 そして、銃口を部屋の中に向けた。

 下から見ていた通り、3人だけだ。



 (本当にこれだけ……?)


 「仲間と同じようになりたくなければ、それを置いて手を上に。」



 「ハハハハハ」


 「聞いていた通り、お嬢ちゃん何だナア」


 「ねぇ、ねぇ、早く殺していいかなァ」



 (訛りの強い話し方。アルタイアの人が話す話し方そっくり。隠しもしないのね)




 「そっちがその気なら私もきちんとお返ししないと。ね?」




 (私は、今日何人を殺めなくちゃいけないんだろう。……ぎょくとして、仕事をしなくちゃなんだから。そんな甘いこと言ってられないよね)

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