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スノードロップ  作者: 白崎なな
第5章、戦争
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29。やるしかない

『こちらです。』


と、先ほど涙ながらに訴えていた下女が軍部の部屋を俯いたまま扉を開けて案内をした。



彼女とすれ違いざまにぎょくは彼女にしか聞こえない小さな声でつぶやく。

『……必ず。私たちが果たすから。』



ぎょくのその言葉に頭をあげて、頷いて頭を下げ部屋の扉を閉めた。


部屋の中には、明日到着予定のはたの後ろ姿が見えた。



畑国長はたくにおさ、明日の予定ではなかったのですか?」



「予定より早く来れました。

それに明日は、実践での合同練習をするそうです。その前に作戦を練りたいと考えまして。」


しんが部屋を全て見て回った。


「怪しいもの無し。」



その言葉を待っていたぎょくが口を開いた。

「…実践ということは、戦場ですね。それは、3日で帰ってこれるのか。」



「そうなります。そのまま、戦争に発展することも視野に入れています。」



「人身売買の件は、先ほどここまで案内をしていた下女は元々華楽からくでスノードロップだったそうです。」




「そう、でしたか。……他にはどのような情報が手に入りましたか?」




「まず。私がの瞳についてですが。穢れた血すなわち赤の瞳の血が入っているということ。

父母は、アルタイアの人間で皆で華楽からくへ不法侵入をしていたようです。



そして、ノア皇帝の子供が6人いるそうです。男児はみな赤の瞳を持つそうです。

年齢を顧慮し紫の瞳の男児が欲しい。それで、”紫の瞳”を探していたそうです。


……戦争をするか、アルタイアでノア皇帝の妻になるのか。

帰国までに答えを出すように、とノア皇帝に言われました。」




ゆえぎょくの言葉につけくわえた。


「…それに、”共に歩く”を畑国長はたくにおさは、忘れているからそろそろ釘を刺そうか。と。」




「なるほど。…スノードロップをこちらにと言われたことがあって。それを拒否したんです。

まさかそれが人身売買のこととも思ってもいなくて。さらには、それを根に持っているとは……」




「戦争の件で言うなら、航空機を使って戦争をしようとしています。

へりこぷたあ、と呼ばれる機体を開発をしていてそれを使おうとしているようです。」



「へるこ?へり、こ?なんですかそれは?」



「私、直接見ました。軍部の武器庫に3機ありました。

航空機にプロペラが大きく上についていて、羽がない…そのような形でした。」




「あまり、想像ができませんが……とにかく航空機を使った戦争とは…それは、大きな問題ですね。」



龍元りゅうげんは、もしこのまま戦争がはじまるとなってもこちらに来るには時間がかかります。

要請を出すのは万が一を考えて必要かとは、思いますがー」




「実を言うと…もうすでに出してありまして…。

明日にはこちらに着く頃かと…。」




「戦争、ですか?」



「ええ。そうなりますね。

スノードロップを解放、と言うのは我々の華楽からくの民の解放になります。

龍元りゅうげんは、水銀問題の解決のために。


そして、水本元く……いえ、水本氏と酒井氏は国内にはいませんでした。

捕まえておくことも出来ず、こちらにいるのかと。」



「ええ、こちらにいます。

私の父と母がアルタイアの人間であること、ゆえのお母さんと弟を殺したこと、しんの家族を狙ったこと。


……全て水本氏が本人がやったことだと証言しました。」



「やはり、こちらにいるのですね。」



「はい。……戦争を起こしたくはありません。

ーーしかし、…私たちのように辛い思いをする子供を増やしたくありません。

……戦争、と言う手段しかないのでしょうか。」



「……と、いうと?」



「話し合い…は、聞いてくださらないでしょうね。

それならば、提案にあった"ノア皇帝の妻になる"を呑み込むというのはいかがですか?

ーーそうすれば、皇帝の妻なら人身売買を禁止令を出して、とか……いかがでしょう。」




「もし、妻となったとして。向こうが戦争を起こさないとは限らないですよ。釘を刺すために、戦争をと発言しているということは、……そういうことでしょう。」



ぎょくがもしその手段を取ったとして、紫の瞳の男児を産んで無事育った先にその権限を手にできるかもしれない。

そんなの、何年かかると思う?


………今、もし勝てたら。今ここに残されたスノードロップだった子達。

私たち含めた16名のスノードロップ。華楽からくにいる親を無くした子達。


ーーー全てを救える手段だよ。」



「やるしかないって、私も思うよ。

私たちだって、たくさん経験積んできたんだ。


最後までもがいて、苦しむ子たちを救う。

"スノードロップの子達を自由にする。"

それがぎょくの夢なんでしょう?」




「そうだよね。でも!戦争を起こせば、必ず犠牲者が出る。

それでも、この戦争を起こすべき、なのかな。

私が、そのレバーを引いて犠牲者を出していいのかな。」




「確かに。トロッコ問題ってやつよね。

でも、今回の戦争での犠牲者と今後もで続ける犠牲者と。どっちが、華楽からくの民のためになるんだろう?」



ぎょくは、重たい瞼を閉じて深呼吸をする。

俯いたまま、小声で"やるしかない"と呟き顔を上げた。


「……ふぅ。――奴隷解放。水銀の輸出停止の要請。スノードロップの解散。

……この3つを求めて、やりましょう。」





ぎょく、腹を決めてくれてありがとうございます。

それと、政権交代をしなければ同じことを繰り返すでしょうね。

それも要求に含めましょう。」




「そうですね。私たち華楽からくのように、国の民から立候補をして選挙をする……そうすれば、アルタイアも変わるかもしれません。」




「……また、詳しいことは戦に勝ってから……母上と父上とも相談をした方が良さそうですね。


どちらにせよ、戦に勝ち3カ国のより良い未来のために。

そして、華楽からくの無線機を母上と父上に渡してあります。

到着すれば連絡が入ると思います。」


近くにいつもいるボディガードが、自分の耳についているインカムを指差した。



「聞こえましたら、合図を送ることになっております。よろしくお願いします。」



「分かりました。」



ぎょくは、再度大きく深呼吸をした。


(やるしかない。今やらなくて、いつやるんだ。

なんのためにここまで、やって来たの?)




「ーーアルタイアに、…開戦を言い渡しましょう。」





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