22。紫の瞳
軍部の中階層に捕まえた人を収容する場所がある。
その一部屋に連れて入った。
「また、すぐに来る。畑国長と一緒に。」
ーーバタン
「まさか、愛藍がアイランで。父親がジル。ジルとニーナの子供…」
「…確かに、ジルには子供がいると言う情報があった。でも、それが二人もいてそれも女として扮装できる人だとか、息子でとか、そんなことまで聞いたことない。」
「でも。ジルの子供にしては、セルジオはあっけなく処理してしまったけど。」
「返り血も浴びず帰ってきたもんね〜?」
「今の話、本当のことなのかな。裏を取る必要があるんじゃ?
それと、紫の瞳の意味するものってなに?そんなにこの瞳に何かがあるものなの?」
「紫の瞳は、アルタイアの人々にとっては紫の瞳は、皇帝の色だから。」
「黄色は、太陽の色。青は、空の色。……紫は?」
「確かに。太陽の色だから皇帝に相応しい。空の色だから人を包み込めるから皇帝に相応しい。
でも、紫の色だけ理由を公表されてない?」
「ええ〜。高貴な色の位が決まるやつでしょ?それに意味とか存在したんだ〜」
「杏は、座学の勉強受けなかった?」
「ええ?一緒に受けてたでしょ〜?月は、忘れちゃったの?」
「そう言うことを言ってるんじゃ…
玉は、すごく考え込んでるけど…考えても答えは出ないから、書籍館にいって調べ直す必要がありそうだね。」
「今から行ってくる。二人は、書類分けをお願い。」
「わかった、気をつけて行ってきて。ケープとネクタイをしていかないと入れてもらえないから。
忘れずに持っていって。」
「うん、ありがとう。」
書籍館は、軍部から出てすぐの十字路の角にある。
そこは、一階フロアは誰でも出入りができるが二階に入ることができるのは軍部の幹部のみ。
2階フロアには、海外情勢にまつわる書庫や海外の歴史書など海外にまつわる書籍が多く並んでいる。
一般市民が出入りすると、情報漏洩につながるので出入りできないようになっている。
24時間365日、必ず守衛がいる。その守衛に自分の身分を証明出来るものを身につけていなければいけない。
守衛は、玉の姿を見るなり、中に招き入れてくれた。
「玉様、どうぞ中にお入りください。
ご存知かと思いますが、出る際には中から扉を鳴らしてください。それではごゆっくり。」
アルタイアの書籍が並ぶ棚に向かった。
ここにあるのは、書籍。軍部にあるのは、書類。
今回知りたいことは、アルタイアの歴史書の書籍からでしか情報を手にできないと考えた。
色にまつわるページを探す。
アルタイアの歴史書は、龍元ほどではないが紛争が絶えず国が入れ替わり立ち替わりを繰り返していたので書き込まれる内容もかなりの量だ。
そこから瞳の色に関する情報を探し出すのは、非常に困難だった。
(これ、記載されてないこともあるんじゃ?…あ、これ?)
ーーー
アルタイアの瞳に関する項。
紫 黄 青 の順に尊い色とされている。
国花、太陽、空。アルタイアの神の栄光の印の国花。皇帝にふさわしく、神の血を持つもの。
紫水晶に文字を刻むのは禁忌。皇帝を侮辱する行為。また、送った相手を侮辱する行為。
ーーー
と記載がされていた。
(侮辱する行為…。ニーナは、ジルの妻。そのニーナが私に向けて送ってきたとすると?
国花?アルタイアの国花についての記載は…ない。アルタイアの神の血を持つもの。
やっぱり私は、アルタイアの人間?でも、おじいちゃんおばあちゃんもみんな華楽にいたのに?)
書籍を棚に戻して扉をコンコンと叩いて扉を開けてもらう。
「玉様に幸が訪れますように。」
(私が今さら幸せなんて。願ってもらったところで叶わないことー)
ニーナが神の血を探している。と言うことは、現皇帝に何かがあるということ。
そうでなければ、アルタイアに渡った当時に捕まえられていただろう。
そのまま戦闘兵器として育てられた。ということは、玉の紫の瞳に対して重きをそれほど置いていなかったということ。
(それとも…紫の瞳の神の血を持つ人間は一人で十分。それ以外は生きていてはならない?)
ピピピッーー軍部の扉を開き事務所の部屋に向かった玉の後ろ姿に畑が声をかけた。
玉は、その声に振り返った。
「玉、月が先ほど私の元に来て愛藍のことを話してくれたんです。
もしかしてアルタイアの?とは思ってましたが、まさかでしたね。」
「畑国長、戻っていらしたのですね。
紫の瞳についても書籍庫で調べてきた内容がございます。それについてもおはなしさせてください。
…事務所の部屋の中へ、入りましょう。」
ピピッー
「月、畑国長に伝えてくれてありがとう。
おかげで今調べてきたことをおはなしできます。
紫は、国花。アルタイアの神の栄光。紫の瞳は、神の血を持つもの。紫水晶に文字を刻むことは禁忌。
皇帝または、送った相手を侮辱する行為。…だそうです。
ただ。この国花が何かまでは、わかりませんでした。」
「それは、鳳凰木ですね。暑さに強く、紫の花を咲かせ息を呑む美しさ。
鳳凰は、聖徳の天子の兆し。…まさに神の血を持つ人、ということですね。」
「鳳凰木……、10月に咲くあの空も地も紫に染める、紫の花の木…」
「その神の血を持つ人、玉だとして。なぜ今?」
「わかりません。私も、なぜ今さらなのかを考えていました。
考えられるのはふたつ。一つは、現皇帝ノアの身に何かあった。二つ目は、神の血を持つ人は一人でいいという考えに至った。です。
ですが後者であれば以前アルタイアに行った時に狙われていたでしょう。
そうでないのであれば前者なのでは?と私は思います。」
(神の血を持つもの…)




