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スノードロップ  作者: 白崎なな
第3章、過去
21/46

21。愛藍

最高戦力と言われるようになったスノードロップは、どの部隊よりも国に居ないと行けない存在となっていた。

そのため一足早くに龍元りゅうげんから、帰国をした。


そのままぎょくら3人は、軍部を目指した。

他の13名は、寮に帰った。



ピピピッーー

「帰ってきたって感じする〜!なんか、船乗ってたらすごい懐かしい気分だった。

いろんなことがありすぎて楽しみにしてた向こうの地酒、飲むの忘れてたね〜」



しん、そもそも楽しみで行ったわけじゃないからね。」



「溜まった仕事をこなしてくれればなんでもいいよ。」



ゆえしんにそんなこと言っちゃだめ。」



「なんで〜いいでしょう?」



そんな話をしながら事務所の部屋を目指す。


ピピッーっと音を立てて事務所の扉が開いた。ーーと同時に部屋の中にいた愛藍あいらんが襲いかかってきた。



予想していない動きだったが、3人にその程度の不意打ちはなんと言うこともなかった。

それに一対三なのだ。愛藍あいらんに勝ち目はない。



愛藍あいらんは銃を取り出しぎょくに銃口を向けた。



「ねえ。」

と。野太い声で言った。



「え?あ、愛藍あいらん様?」



「あぁ、"わたし"と言った方がお前たちにとっては慣れ親しんでいるか。」



"わたし"の部分だけいつものような高い声でわざとらしく言う。



「え、どういうこと?ぎょく……ゆえ愛藍あいらん様って男性だったっけ?」




「いや、畑国長くにおさと結婚していて、女性であった、はずだけど。」



「あっはははは。僕のこと、まだ女だと思っているんだ?…もうそんなことないよね?

あいらんって、こっちでは女の名前。でも残念だけど、アルタイアでは男の名前なんだ。


ゆえは、頭がいいんじゃ無かったか?

それも嘘か。こんな初歩的なところで気づかないなんて、スノードロップもその程度だったということだ。アルタイアにとって何の脅威でもない。」



(なるほど、漢字を当てると女性になるってこともあるのか。

何よりも女性らしく振る舞っていたから、全く気が付かなかったな。

……ゆえの表情からして完全に盲点だったってことだよね。それは、誰も気づかないよ…)




「さあ、ぎょく。僕はね、君に用があるんだよ。」



「え、私ですか?」




「お前、こないだの騒動で処理をした人は誰だか知っているか。」




「ちょっと待ってください。

国で起きた事件は軍部のものだけが知り得ることになっています。なぜ、あなたがそのことを知っているのですか?」



「……僕が何者か、まだわからないのか?

こないだ殺したのは、僕の兄だ。

兄を殺されたのを知ったのだから、殺した犯人を殺すのは妥当だろ?」




「ペンダントを持っていた人物が……兄??」




「そう、そのペンダントだ。何故あの人物が紫水晶のペンダントを持っていたか。それすらもわかっていないのか。鑑定部とやりとりしてないのか?それとも、鑑定部は役立たずな連中ということか?」





「やりとりをしてるに決まってるでしょ?

ぎょくゆえもそれを解明するために尽力してたのに!」



「それでも、分からないんじゃ…その時間も行動も全てが無駄だ。

無駄な時間を過ごしている間に、僕はやるべきことをして情報を集めるところまでできたのに。

まあ何よりもどんな真実を知ったところで、お前ら3人はここで死ぬ。僕が3人を殺す。」



「兄があのレベルだったのなら、弟のあなたはどうでしょう?それに、ここ何年間もの間華楽からくでひっそり暮らしていたのだから腕前はいかほどでしょうね?」




「ぼくの兄さんは、銃もそうだけど戦闘が苦手なんだ。

でも母さんの組織に所属しているからやらざるおえないんだ。

だから、腕前があまり良くない。


でも僕は違う。殺しをする仕事ができるなんで、なんて快感なんだ。悶え苦しみ、一発で殺してなんてやるものか。苦しい顔を見るのが僕の生きがいなんだよ。……お前たち3人の苦しい顔を早く見たいなぁ」



どんどんと早口になってニタァとした顔で両頬を手で包み込み『あっははは』と笑い出した。




(え、どういうこと?

言ってる内容が衝撃的すぎて内容が頭に入ってこない。…母さん?)



しんもおなじことを考えていたのかぎょくが声を発する前にゆえを向いて聞いた。

「え、ゆえ……どういうこと?」



「…つまりは、こないだいたのは愛藍あいらん様の兄でこの2人の母親がニーナ、ということだと。思うけど。」



「おお!正解!ここまでヒントをあげたらさすがにわかるよね?わからない方がおかしいよ」




「ニーナは、なぜ紫の瞳を持つものを探しているんです?」



「なぜ??紫の瞳の意味をお前たちは知らないのか?…ぎょくなんて自分の瞳の色なことなのに調べようとは思わなかったのか。」




「紫の瞳の意味…」



「まあ、お前は殺人兵器だから考えるだけ無駄か!

…とりあえず、ぎょくは殺す。兄の敵討ちだ。楽に殺してもらえると思うな。」




そう言って再度銃口をぎょくに向けた。

それに対してぎょくは、そのまま綺麗な姿勢のまま愛藍あいらんに近寄っていく。



「ぎょ、ぎょく!!!何してんの!」




「ねぇ、愛藍あいらん様?ああ、それともアイランと呼ぶべき?

貴方は頭と心臓どちらが良い?私は貴方と違って優しいから、特別に選ばせてあげる。さあどっちがいいの?」



腰からどんな時にも持ち歩いている、リボルバーに手をかけた。


「は?何言ってんの?……死ぬのはお前だから。」


バンバンバンッーー



ぎょくは右肩を後ろにさっと引いた反動で半歩後ろに下がってかわす。


(ここで愛藍あいらんをやらないと、アルタイアへ情報を送り続けることになる。

この人をここにおいて龍元りゅうげんに行ったのは正解だったな。

…でも私たちがいない間に調べたんだろうな。)



銃口を向けられているのに構わずさらに一歩前に出て、銃を抜いた。



「ちょ、ぎょく?殺しちゃだめ。まだ聞きたいことたくさんある。拘束する。私としんはサポートに回る。」


後ろの二人に視線も向けずにこくんと頷いた。


その舐められた距離と殺さず拘束をするという言葉で愛藍あいらんの怒りの沸点に触れたのか、怒りを浴びた顔に変わった。

表情が変わった瞬間にぎょくの左肩を掴みにかかった。



ぎょくは、もう一度首をこくんと頷いた。

そのタイミングでゆえしんは、二手に綺麗に別れ愛藍あいらんの両サイドを固めた。



ぎょくは手が肩につく前に左手で払いのけ、愛藍あいらんの右肩を右手だけで撃つ。



「あなたの兄の名前は?」




「…それを教えるなんて、敵に塩を送る行為だろ。」



「そう思ってる時点で、あなたは敵ってことで良いのね。アルタイアは、華楽からくと戦争がしたいってこと?」



「……するわけないだろ。」


右肩を撃たれて痛みからか、顔をしかめて言った。




「…じゃあ、あなたはなんのためにわざわざ女性になりきって結婚してまでここにいるの?」



「紫の瞳の人間を特定するため、それとーー」



それだけを言ってナイフを取り出して、自害を図ろうとし始めた。

胸に刺さる前にぎょくは、ナイフの柄の部分を狙って撃ちナイフを弾き飛ばした。



「あははは。はあ、さすがだ。銃撃でお前に勝てるものは、父さんぐらいだろうなあ。

もし僕がここで死んだら、兄さんと同じで1ヶ月放置されて燃やされるのか?」



「アルタイアでは、肉体に魂が宿るから埋める。という考えよね。

でも残念だけどここ華楽からくでは、知っての通り。1ヶ月現世うつしよに滞在して火葬で天に登る。とされているからね。

その考えに則って、罪人も不法侵入者もおなじ対応よ。」



「…馬鹿だろ。そうやって遺体を放置をするから、気づかれるんだ。死体は真実を語るっていうのにな。」



「思想の問題。」



「さあ、アイラン。自分の口で、自分の母と父、兄の名前を言うのよ。」



カチッーーそう言ってぎょくは、アイランに銃口を向けた。



「あははは。お前らが考えているその通りだ。

父は、ジル。母は、ニーナ。兄が、セルジオ。これでいいだろ?

もう使い道のない僕は用無しだ。ぎょく、僕は頭で死にたいなあ。」



「まだ、アイランはやるべきことがある。だから、殺せない。」


銃口を下ろしたタイミングでゆえが手錠をかけた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまでの感想じゃ!玉の過去、月の過去、杏の過去、それぞれ悲惨じゃった。とても悲しいのじゃ。そして愛藍、男じゃったのか!これは捕らえた事で物語が動くのかのう?しかも家族構成が敵の重要人物ば…
[良い点] 玉たち三人の会話が生き生きとして、作者さんが創作を楽しんでいるように感じられます。まだまだ始まったばかりのようですが、三つの国の事情がどのように絡み、玉たちがどのように立ち回るのかも楽しみ…
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