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スノードロップ  作者: 白崎なな
第2章、龍元
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12。龍元とアルタイア

 話をしていると、不意に扉がノックされ家主の返事も待たずに入ってきた。

 扉を開けて入ってきたのは、はただった。


 「ただいま戻りました、父上」




 「ああ、賢裕けんゆうおかえり。そこに座りなさい」



 「先ほど母上にも会いに行ってまいりましたが、それぞれの稽古を見てからこちらに来るので遅くなるとのことでした」




 はた 賢祐けんゆうは、すい雲嵐うんらんとの息子。

 この国習わしに沿って、男児の畑は華楽からくに送られ華楽からく特有の刀術を学びにきていた。ぎょく達3人とは、16年来の仲なのだ。




 17年前にスノードロップを発足し、1年間はぎょく一人から始まり翌年にゆえしんの順で組織として人数を増やしていった。



 ぎょくは3歳、ゆえは7歳、しんは5歳で入隊をし、翌年に龍元りゅうげんにて賢祐けんゆうと出会った。賢祐けんゆうは、彼女たちと出会った時は19歳だった。



 華楽からくには、姓と名で名前が成り立つが龍元には姓は、かなりの偉業を成し遂げた者のみに与えられた。

そのため、華楽からくで国籍を取得しはたという姓をうけた。

 ぎょくら3人の軍部で使用している名は龍元りゅうげんのもので、国に貢献したとして姓をつけられた。



 また国籍を得るために保証人が必要で、その保証人が愛藍あいらんだった。

 そして、保証する形で結婚をして国長を目指していたこともあり "ちょうどいい" とはたは感じていた。



 「父上、手紙は見てくれましたか」



 「その書類は、今持っているかい?」



 ピラっと一枚の紙を四人の前にはたが出した。

 そこに示されているのは、手書きで数字や記号を使って何やら書かれているようだった。そして触られることなくずっと仕舞っていたのか、ところどころ文字が掠れて消えている。

 ぎょくが、はたに聞く。


 「こちらはなんでしょう?」



 「実は、ぎょくが、ペンダントを持つ組織の人間と対峙しているときに書庫で見つけたんです。アルタイアとのやりとりの書類を管理している棚の3段目の裏が、壁紙の色がそこだけおかしくて触ったら穴からこの書類が出てきたんです

 逆に、今までどうして気が付かなかったのかと思ってしまいます」



「それであの時いらっしゃらなかったのですね」



 「ええ。鑑定部で誰の筆跡なのかを探してもらいました。恐らく筆跡が水本前国長のものだろう、とのことです。

 ただ、内容まではわからないんです。それと、こちらのサインしている人が誰なのかも」




 「……この右上の印鑑は!」


 そうやって雲嵐うんらんが、言いかけたタイミングでガラガラっと引き戸を開けてすいが入ってきた。



 「遅くなったわね。 ……あら、お取り込み中?」

 そう言いつつも遠慮なく雲嵐うんらんの隣に座った。このメンバーなら遠慮は、いらないと判断をしたのだろう。



 「そろそろ…… 君の話しもしておかないと、これは問題解決の糸口は見つからないだろうね」

 すいの顔をチラリと見て、テーブルの上の紙を指でトントンと叩きながら言った。



 「……この印鑑は。そう、もしかして、とはずっと思っていたの。アルタイアは、今度は自分の番だと言うことなの?」



 すいは、唇を噛み辛そうな表情をして目を瞑った。その表情に、部屋にいる全員が口を紡いだ。

 何が言いたいか、全くもって見当がつかなかった。ただぎょくたちは、黙って翠が口を開くのを待つしかなかった。



 ーーどれくらい経ったのだろう。とても冷つく空気感で長く感じただけで一瞬だったかもしれない。

 



 すいは、呼吸が荒くなってきていた。隣に座る雲嵐うんらんは、何も言わず背中をさすって落ち着かせようとしてる。相当嫌なことを思い出したように見える。



 「ーーこの印鑑は、人身売買の印鑑。昔は、ここ龍元りゅうげんもアルタイアと人身売買のやりとりをしていたの。

 もっと言うなら、アルタイアになる以前から……」




 「じ、人身売買、ですか……?」



 「母上、私はここ龍元りゅうげんで21年生活してきましたが、そのような話を聞いたことがありません。

 しかも私は、一般教養と龍元国りゅうげんこく 政治教養せいじきょうようを学んできました。そのどこにも記載はありませんでした」




 「はい、知るものはもう少ないの。この国は、他の国に比べて寿命が短いからね。

 それに貴族たちは、奴隷解放の代わりに隠蔽をすることを条件としたの。嫌な過去は、もうなかったことにしたいのよ」



 「この奴隷解放も、私たちが行った政策の一つなのよ。かく言う私も元々は、アルタイアから連れてこられた奴隷だったの」




 「えっ、でも、っ母上は、娘娘にゃんにゃんとして国の頂に、立っていますよね、?」



 「ええ、じゃあ、私の瞳を見せたら納得できる?」

 そう言って、すいはカラーコンタクトを外した。その瞳には、ぎょくと同じ紫の瞳がキラキラと輝いた。



 「すい様、その瞳の色は……私と同じ?」



 「ええ、ぎょくと同じ紫色。

 ここ龍元りゅうげんが宝石がとれることは知っているよね?

 その宝石の色と瞳の色の人間とを交換する…… いわゆる、人身売買をしていたの。


 アルタイアの大陸の人々は、元々瞳の色が色彩豊かな人種なの。紫の瞳をもつものは、体が弱い人が多くて人数が圧倒的に少なかったの」




 「人数の少なさと、紫水晶の希少価値…… それで、高貴な色が紫ということですか」

  衝撃的な話に思考回路がストップしたぎょくに変わって、ゆえが話をまとめてくれた。



 「龍元は、移民受け入れも寛大な国なの。だから他の色をもつ瞳の人でも普通に過ごせるの」



 「では、なぜ翠娘娘すいにゃんにゃんは瞳の色を誤魔化しているのですか?華楽からくのように移民を排除しようとする民族でもないのに……!

 もし私が、華楽からくが移民受け入れに寛大な国だったら自分らしくそのままの色で生活がしたいと思ってしまうのに。

 ーーそう思うのは、 ”ないものねだり” というやつでしょうか」



 「ーー私が、嫌なことを思い出してしまうから。ただ、それだけよ。

 ぎょく、あなたと私とは恐らく親族関係なのだと思うわ」




 「それは、私がアルタイアの人間で。アルタイアからきた ……奴隷? なのですか?」



「 それは、わからないわ。でも。あなたがアルタイアの大陸の血を引く人であることは、間違い無いでしょうね」




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