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スノードロップ  作者: 白崎なな
第2章、龍元
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11。龍元

龍元りゅうげんは、100年もの歴史を持つ古い国。



龍元りゅうげんやアルタイアはとても大きな大陸となっている。

そのため、国のトップが変わるタイミングで国が変わることが多く100年以上の歴史を持つ国は少ない。



たくさんある国の中でも珍しい、女性の王が収める国でもある。

女児は、王女として教育を受け育つ。

男児が産まれた場合には、従者として教育を受けるか海外に行き海外での技術を身につけ帰国後に指南役になる習わしがある。



スノードロップ、第一部隊、第二部隊は大きな船三隻で早朝に出発をし、2日揺られてようやく龍元りゅうげんに到着した。



最初に船から降りたぎょくはグッと伸びをして、辺りを見渡す。

(ようやく到着だ。久しぶりの龍元りゅうげんだ。華楽からくよりまだ少し涼しいなあ。)



ーーシャンシャン

そこに大きな鮮やかな朱の日傘を侍女に挿されてゆったりとこちらに向かって歩いてくる、龍元りゅうげんの王女が現れる。

現王女はすい。ここの国の王女の敬称は、娘娘にゃんにゃんという。



ぎょくは、すいの姿を見つけすぐに華楽からく軍の最高敬礼をした。



翠娘娘すいにゃんにゃん、お久しゅうございます。

おかわりなきお姿に安堵いたしました。」


目の前にすいが来たところでゆったりとした動きで後ろについてきていた侍女に静止を促した。

傘に付いている鈴がシャンと音を立てて、ピタッと侍女たちは止まる。


ぎょくに続いて船から降りた、ゆえしんも同じように最敬礼をしていた。


「お久しぶりね。3人ともよく顔を見せて?」



3人とすいはそれぞれしっかり見て、ほほほっと口元に手を添えて笑った。

すいを含めた後ろに控えた10名ほどの侍女らは、こちらの正装をしていた。



すいは淡い緑色の衣に薄い桃色の大判のスカートを胸下で巻きつけ、腕に濃い桃色の領布ひれを靡かせている。

侍女たちも同じような色合いの衣を身につけていた。



「さあ、あなた方の師が道場で首を長くして待ってるわ。

早く行ってあげてちょうだい」



「「「御意」」」


すいはそれだけ言い終えると、扇子を胸で合わせた衣の隙間から取り出しすっと王城を扇子でさすと侍女たちがさっと方向転換をし来た道を引き返していった。



(なんと雅な光景なんだろう)


…シャンシャン…

小さくなっていくすいの後ろ姿を横目に、船で待機している軍部へ外に出てそれぞれの持ち場について説明をし始めた。



王城の東側に訓練所がありそのマップを広げながら説明をする。

訓練所には、中心に休憩所がありそこを取り囲むように北側から体術の道場、東側に剣術、西側に基礎訓練所、南側には、宿舎が建っている。



「まず体術、剣術、基礎訓練をローテーションで行っていく。

初めは、体術にスノードロップ。剣術に第一部隊、基礎訓練に第二部隊。そこから、時計回りでローテーションをする。…以上。」



「「御意」」


荷物を各自持って、宿舎に行きすぐに準備を終え訓練にとりかかる。


ぎょくたち3人は、師の元で寝泊まりをするのでそのまま師の住まう王城の西側へ向かっていく。



「失礼します、ぎょくゆえしんが到着しました。」



トントントンッとこちらに歩いてくる足音が聞こえ

師がギィっと引き戸を開けてくれた。



「首を長くして待っていたよ。

すいも後でこちらに来るそうだよ。」



「師、訓練の前に大切な話があります。」



「中で話を聞こうか。」



中はとても質素な作りをしていて、実に師らしい部屋になっていた。



翠娘娘すいにゃんにゃんの夫がぎょくたちの師にあたる雲嵐うんらんだった。

そのため、王城の西に離宮を建ててそこですい雲嵐うんらんは生活をしている。


ぎょくら3人が入隊しすぐに龍元りゅうげんに送り込まれた。



そこで師として2年間、剣術と体術を教えたのが雲嵐うんらんだった。

雲嵐うんらんは、40代半で柔らかな物腰だがジルよりもはるかに強い。



体術はもちろん剣術も国一番…もしかしたら、世界で1番と言っても過言ではないほどの腕前だった。



龍元りゅうげんは、煌びやかで荘厳な建物が王城の周りに立ち並ぶ。

この国の豊かさを示しているようだ。


その中でこの雲嵐うんらんの住まう厳かな雰囲気のある離れは馴染まない佇まいをしている。


コトッーー。

「どうぞ。」


下男がお茶を出して、下がって行きシンーっと静まり返った室内に響くようにゆえが話を切り出した。



「実は、アルタイアのニーナの組織が動きを見せました。

…紫水晶の宝石にニーナの名前を掘ったペンダントを送り込んだ人間に持たせて、華楽からくに不法侵入をしました。

その宝石に刻んだ店はジルの組織下にある店です。」



「…そうか。紫水晶、とはなんとも…

まあ。でもこれで、こちらも対応ができるようになるんだね。」




ぎょくは、前のめりになる衝動を抑えて一口お茶を飲み一呼吸を置いて、ゆっくりとした口調で言う。

「ーはい、戦争です。もちろん、こちらに着いてくださいますね?」



「もちろん。私の可愛い教え子がいるのだから。

それにこの問題は、スノードロップだけ…華楽からくだけではなく

アルタイア、龍元りゅうげん華楽からくの3カ国の問題なんだ。」



「しかし、まだジルとアルタイア政府との関係性やニーナのことも明確に情報がそろってないのが現状です。

どう切り込むかが悩みどころです。」


戦争に発展するにしても、しっかりとしたデータと明確な理由が必要になる。

どうなったとしても情報こそが勝利に近道となる。



はた国長は、空路で参ります。

先にこの手紙を師に渡すよう言伝を預かりました。」


パラっと三つ折りにされた手紙を開いて目を通している師に、ここに来て初めて口を開くしんがすうっと息を吸って言う。

「私は、愛藍あいらん様も怪しくてなりません。

彼女のことももっと調べ上げたいと思っています。師も彼女のことを知らないのですよね?」



「…ああ、彼女の戸籍もおそらく偽造されたものかと。」






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