第5話 友の反旗
「メイドを殺されたく無ければ、大人しくナルフェルンに向かうんだ」
そう言葉をかけたのは、幼少の頃より付き合いがある友のラファルドだった。
今現在、ここ放逐領域にある唯一魔族の城が存在する領土デスメソルは、神領域に住む人間が、魔族の領域、魔征域を攻める足掛かりにする拠点を作る為か、数十年ぶりに本格的な軍勢を引き連れ攻めに来ていた。
その数は5000、その中に大量破壊を目的とした戦略兵魔級の力を持つ戦士、勇者連合筆頭勇者ヤマダ・タカシがいる事に対し、我がデスメソルの戦力は、元々いた兵士を本国に返してしまった事で、その兵力は100も満たない。
もはや戦いにはならない事は明白だが、私には引けない理由がある。
それはその軍勢の進軍先にゴブリンの村があり、そこで身重で動けないゴブリンの母が子供が生まれるまでの時間を稼ぐ、それにデスメソル城に住む者たちをナルフェルンまで脱出もさせねばならない。
一人でも多くの命を救う為に…。
私の中に劉備玄徳の記憶が戻った以上、私はそれを成し遂げねばならないのだ。
しかしそれを知らないラファルドは、ただ友、この私レヴィルを死なせたく無いあまり、無関係なメイドを人質に取り、一人でナルフェルンに逃亡する事を拒む私に言う事を聞かせようとしていた。
軍勢の数、さらに敵対関係である魔族と人間、話し合いもほぼ不可能…私を殺されないようにするには一分一秒でも早くここから離れる事が正解なのだろう。
私の命を救う為だけなら、そのラファルドの考えは正しい。
しかしこの状況下において、全ての命を救い打開する策は一つある。
それは勇者連合筆頭勇者ヤマダ・タカシの存在だ。
彼は恐らく私と同じ異世界人。
同郷の者なら、私が魔族であっても話し合いに応じる可能性がある。
そこが唯一現状を打開出来る方法だし、私自身成功の可能性は高いと思っている。
だがしかし、ラファルドは、私が後天的転生で劉備玄徳と言う人間の記憶が蘇り、勇者と同じ異世界人である事は知らない。
この事を話せばこのやり方を納得してもらえるかも知れないが、私が人間だと分かった時、魔族のラファルドが同じ友情を感じてくれるかは分からないし、他の魔族はよりそうなるだろう。
…言えん。
こんな…大軍が迫った切迫した状況でそんな事を言ったら、一体どんな混乱が引き起こされるか…今は…今だけは絶対にこの事だけは言えない…!
だがどうすれば…どう言えばラファルドは私の言う事を分かってもらえる? 一体どうすれば…。
その答えが分からず、次に言う言葉を失っていると、ラファルドは時間切れとばかりにこう言ってきた。
「君が悩む理由の一つをまず無くそう…おい、そのゴブリンを殺せ」
「な…!」
ラファルドは私が5000の軍勢に対峙しようとする理由を無くす為、その守る対象の一つを殺そうとしてきた。
その命令を聞いたのは、ホリザリの実験室であったあの魔兵士の隊長だった。
彼は嬉々として剣を抜くとゴブリンを殺そうと迫る。
「ヒィ!」
恐怖から短く悲鳴を上げて尻餅をつくゴブリンの子供。
「やめないか!」
当然殺させる訳もいかず、隊長の前に躍り出て止めようとした。
「ラ、ラファルド様…いかがいたしますか?」
隊長は立ち塞がる私をどうするか確認を取ったが、ラファルドは驚く事を口にした。
「多少怪我させてでも大人しくさせろ…最悪生きてさえいれば良い」
なんとラファルドは、私を攻撃する事に躊躇無く許可を出したのだ。
そんなラファルドの対応に動揺を隠せないでいたが、そんな事はお構いなしに、許しを得た隊長は肩で笑うと、ゴブリンと同じく嬉々として剣をこちらに構えてきた。
それに私もただやられる訳もいかず、相対する為に剣を抜き放つ。
それを見て小馬鹿にするようにニヤリと笑う魔兵士の隊長。
彼がそうする訳は私の弱さを知ってる現れだった。
彼にはたまに剣の練習相手を務めさせた事があり、私は彼に一度も負けていない。
しかしそれは…今となっては彼が手加減をしていたからだと、その態度からはっきりと分かった。
当然だが、劉備玄徳の記憶が戻る前の外道なレヴィルだった頃は、負けて学ぶなど殊勝な心がけなど当然無く、例え練習だとしても自分が負ける事など絶対に許さなかった。
実際、そんなレヴィルの性格を良く知らず、容赦なく打ちのめした剣の先生がいたが、それに激昂したレヴィルは、あろう事か彼を部下に押さえつけさせ両腕を切り落としてしまったのだ。
以降レヴィルの剣の相手を務める者は、私の機嫌が悪くならないよう、バレないように手を抜いていた。
未熟だったレヴィルは、それで自身の剣の腕前は相当な物だと勘違いしていたが、実際はそこらの魔兵士とまともに打ち合えるかも怪しいレベルだ。
彼はその事を知り私なら簡単に勝てる、彼が浮かべるのはその余裕の笑みなのだ。
そして彼は笑いながらこう言ってきた。
「同じ皇魔族の御命令です…悪く思わないでくださいねレヴィル殿下殿!」
同じ皇魔族とはラファルドの事だ。
同じではあるが、魔帝直系の私の方が立場的には上だが、外道なレヴィルが積み重ねてきた悪徳の結果だろう…隊長は容赦ない大上段斬りを私が剣を持つ右手目掛けて振り下ろしてきた。
その太刀筋は伊達に隊長を務めてるだけあって鋭い斬り込みだった…しかし。
私はその大上段斬りを剣で受け止め、直後剣の軌跡が私の右半分から外へと逸れるように受け流す。
甲高い刃走り音を奏でながら、自身の勢いに前のめりになる隊長…そして剣が鍔に到達する直前でよろけた隊長を剣ごと薙ぎ払って吹き飛ばした。
吹き飛ばされた隊長は、千鳥足な足取りになるも何とか耐え、そして自身の剣とこの私を交互に見て不思議そうにしていた。
驚くのも無理も無い…以前の…温室育ちの剣技しか知らないレヴィルならともかく、今の私は本当の戦場を駆け抜け、最強の猛将呂布とも切り結んだ経験がある劉備玄徳ぞ…隊長とは言え一介の兵士などに遅れを取ったりはしない…!
私はそう思うと、キッと隊長睨みつけ剣を隊長に向け、ゴブリンを庇うように立ち塞がった。
その私の姿に、温室育ちのレヴィルであると侮るのやめたのか、隊長は気合いを入れ直すように剣を構え直した。
そして、ふっと口から息を漏らすと滑り込むように間合いを詰めると、先ほどのような舐めた大ぶりはやめ、素早く浅く縦に横に隙のない連撃を重ねてくる。
…が、見切れないほどの物ではない。
そう感じた私は、隊長が最後に放った袈裟斬りをかわしながら体をくるりと回すと、その勢いのまま隊長の振り下ろされた剣に撃ち落とすように打ち込む。
強烈な一撃に、甲高い金属音があたりに響くと隊長は剣を落とす。
隊長は痺れからか手を震わせており、完全に意識がそこに向いていた。
そこを見逃さず、剣の腹で隊長の首筋の裏を叩く。
鈍い打突音が聞こえた瞬間、隊長はがくりと地面へと崩れ落ちた。
隊長が倒れた事を確認すると、彼が落とした剣を拾い上げ、二刀の構えをラファルドたちに向ける。
「…い、いつから二刀流になったんだい?」
「…もはや答える義務は無いな」
もはや話す意がない事を示すように、握った二刀の煌めきで返答した。
「…そうかい、でもこっちにはまだ人質がいるって事を忘れてはいけないな」
そう言うと指を鳴らすラファルド。
すると同時に、それに呼応するかのようにマレーゼはメイドの顎を剣であげ、さらに喉元に剣近づけると首の薄皮に押し当てさらに斬り込んだ。
あぐっ! と言う小さい悲鳴を洩らすメイド。
「や、やめろ!」
「やめて欲しいなら分かるよねレヴィル? 剣を捨て…投降するんだ…!」
「く…!」
ここで剣を捨てなければ今度はメイドの命が危うい…かと言ってここで諦めたらゴブリンの子を見捨てる事になる…一体どうすれば。
「…レヴィル…、5000の軍勢はもうそこまで迫っている、これ以上のゴタゴタはごめんだ。…だから提案だ」
「提案…だと?」
「ああ…今大人しく僕たちについてくれば、メイドの命は勿論、そこのゴブリンも殺さない…ただ村は諦めろ…断れば二人とも殺す、自害しても殺す」
自害…この私を死なせない事に固執するラファルド。
私が命を盾に要求を突っぱねる事を予見し、先手を打ってそう言ったのだろう…。
そしてそう言葉をかけるラファルドは焦燥の表情を浮かべていた。
長年の付き合いの友情から、必死になって私が死なないよう言ってくれている事が伝わってくる。
しかし一度ゴブリンの子に村と母を助けると言った以上…この劉備玄徳、それを成さぬ不義理を働く訳にいかない…! だが…。
私は…どうすれば良いのだ。
ゴブリンの子とメイドを何度も交互に見るが、出るのは苦悩の汗だけで答えは出ない。
…どっちを、いやどうすれば両方救える。
「…時間が無いと言ってる。答えろレヴィル5秒以内だ…答えなければメイドの指を一つずつ落としていくよ?」
「なっ…!」
「ひ…!」
魔族らしい人間に対し遠慮が無い言葉を放つラファルド。
指を落とすと言う言葉に顔を引き攣らせるメイド。
ラファルドは当然そんな事を気にせず、そのカウントを数え始めた。
「5…4…3」
カウントが始まると同時に、マレーゼは片手でメイドの手を掴むと強引に人差し指を立てさせ、首に当ててる剣に引き寄せる。
「ひっ…! お、お許しください! お許しください!」
メイドは何とか逃れようと身じろぎするが、人間が魔族の膂力に敵うべくも無く、抵抗虚しく指は剣へと当てられる。
「お…お願いします! ゆ、指何か切られたら…わ、私…私…!」
「…お前に恨みは無いがこれも命令だ…指の2、3本は諦めるのだな」
「そ…そんな」
「これも奴隷となったお前の運命だ…気休めにしかならんが、切った後はちゃんと回復魔法で治療してやる…まあそれもレヴィル様次第だがな…」
「か、回復魔法と言っても…」
最後までやめて欲しい感じを出すメイド。
当然だ…回復魔法で指を繋げるか再生すると言っても、切られた瞬間の痛みなど誰だって受けたくは無い。
「ゼロだ…マレーゼ」
ラファルドの言葉にマレーゼはコクリと無言に頷くと、剣に当ててたメイドの指をグッと押し込むようにする。
恐怖から逃れる為か顔を逸らすメイド。
ぶつりと血が噴き出す。
…と思われた瞬間だった。
マレーゼとメイドの顔の間に剣がいつの間にか現れていた。
それに気づいた瞬間だった…顔の肌が波打つように震えていた。
とてつもない突風が顔を叩いたのだ。
それはあの剣から発せられていたように見え、そしてその時気づく、あの剣はいつの間にか現れたのでは無い…恐ろしく早い突きで、そしてこの風はその突きから発せられた剣圧による突風だったのだ。
その突風に体を身を捩らせながら、一体何が起きたのか? 突風の発生場所、剣が現れた場所、マレーゼとメイドの方へと必死に目を向けると、その剣の持ち主が見えた。
それは…あの傭兵の暗黒騎士だった。
暗黒騎士がマレーゼに鋭い突きを入れていたのだった。
そのあまりに早い突きをマレーゼは寸でかわしていたようだが、その顔は先ほどまでのすました顔では無く、必死なそれに顔を歪めていた。
かわすので余裕が無くなったマレーゼは、メイドから手を離し距離を取る…いや取らされてしまっていた。
暗黒騎士はその隙を見逃さず、メイドを引き寄せると守るように抱え込んでいた。
暗黒騎士がメイドを助けていたのだ。
一体何故魔族の彼がメイドを助けたのか?
一応私が金で雇った感じになっていたからだろうか?
暗黒騎士の真意が分からない。
そんな感じに考えていると、こちらの視線に気づいた暗黒騎士はこちらに向かって頷いてきた。
その態度にとにかく暗黒騎士はこちらの味方に見えた。
「マレーゼ! メイドを取り返せ!」
ラファルドが場の空気に割って入るようにそう叫ぶ。
その声にマレーゼは焦っていた顔を引き締め暗黒騎士に斬りかかった。
隊長と比べ物にならないマレーゼの斬り込み。
私では到底受けきれない物だったが、暗黒騎士はそれを赤子のように軽くいなしていた。
何と言う剣の達人か。
そうして暗黒騎士はマレーゼの攻撃を受け切ると、早く強烈な横薙ぎを打ち込む。
突きと同じく凄まじい剣圧で風が吹き荒れる。
その強力な一撃にマレーゼはかわしきれないものの、何とか剣で受け止めた。
しかし剣がぶつかった瞬間、受け止めた剣に亀裂が入り、折れ、そのままマレーゼの体を横に切り裂いた。
しかし切られたはずのマレーゼの体は、煙のように消えてしまう。
…これは転移魔法による瞬間移動か!
彼女は斬られる前に瞬間移動で難を逃れたのだ…しかし。
「ぐえ…!」
そう考えた時には女の呻きが聞こえていた。
見れば暗黒騎士の天高く突き上げた片足の先、そこに突き刺さるようにマレーゼがいた。
カエルを潰したような声を上げて悶絶するような表情を浮かべ…。
…まさか暗黒騎士は、マレーゼが瞬間移動する位置を読んでそこに蹴り上げ入れたのか?
そうだとしたら何と言う戦闘センス。
暗黒騎士はそのままラファルドの方へと放り投げる様にマレーゼを蹴り飛ばす。
ゴロゴロと土煙を上げて地面を転がるマレーゼ…口からは血を吐いていた。
そのマレーゼの様子を見て、苦虫を潰したような顔をして暗黒騎士みやるラファルド。
あまり一瞬な出来事過ぎて、頭が追いつかないが…とにかくさっきまでの窮地が暗黒騎士によって逆転する事が出来た。
暗黒騎士が何故助けてくれたのかは正直良く分からないところはあるが…今はとにかく。
「あ…暗黒騎士よ! 助けてくれるならこのままゴブリンの村へと向かうぞ!」
そう言うと暗黒騎士は頷きメイドを抱き抱え上げていた。
「よ、よし! じゃあこのままゴブリンの村へ行く! ゴブリンの子よ! 案内を頼む!」
「わ、分かっただ!」
そう言われたゴブリンの子は、即座に森の獣道に向かって走り出したので、その後を追う。
「ま、待て! レヴィル!」
後ろの方でそうラファルドが叫ぶのが聞こえたが、一切振り向かず森の奥へと全力で走り出す。
前を走るゴブリンの子は、森に住み慣れてるせいか、器用に茂みの隙間を縫って走っていく。
そのおかげで、そこまで速さは無かったが、恐らくすぐに追いかけてきてる魔兵士たちの気配がどんどん遠ざかるのを感じた。
それでもどんどん森の奥へと走り、20里(10km)を過ぎても足を止めず、さらにそこから10里(5km)進んでも走ろうと思ったが、そこで案内役のゴブリンの子が息切れを起こし地面へとへたり込んでしまう。
もっと追ってから離れたかったが、無理をさせる訳にもいかない。
それに30里(15km)くらいは引き離したし、森の道に不慣れな魔兵士たちもすぐには追いつけ無いだろう。
そう思い一旦足を止めて、ゴブリンの子が息を整うのを待つ事にした。
辺りを見回すと、暗黒騎士もちゃんと付いてきて、抱き抱えていたメイドを気遣いながら下ろしていた。
それに怯えながらも、あ、ありがとうございますと暗黒騎士に礼を言うメイド。
魔族にしては人間に対する扱いが丁寧な暗黒騎士の姿に、そんな魔族もいる物なのかと少し驚く物を感じたが…まあ金で雇われた傭兵。
金で雇われてるうちは、雇い主の意向に沿って行動をしてるだけかも知れない。
しかしそれよりも…。
チラリとメイドを見る。
首筋と人差し指に剣を当てられた時の傷口、それと…外道だったレヴィルの時に殴ってしまった頬の痣などなど痛々しい傷跡が目立っていた。
手当をしなければ、そう思い懐に入れていたそこそこ質の良い回復薬を取り出す。
これはつい先日冒険者のハルビヨリ・ユメルに斬られた肩の傷を治す為に貰っていた物だが…劉備玄徳の記憶が戻った事で色々バタバタしてしまい使いそびれていた。
しかし丁度良かった…これでメイドの怪我。治してやろう。
「メイドよ…こっちに来なさい」
「は、はい?」
私の呼びかけに、恐る恐るとした足取りながらもこちらに来るメイド。
すぐ側まで来ると差し出すように回復薬をメイドの前に突き出す。
「手を出しなさい」
そう言うとメイドは素直に手の平を広げる…そこに回復薬を落とした。
「こ…これは?」
「回復薬だ…魔族製の物だが人間にも効くだろう…首や指…その頬の痣の傷に使いなさい」
「…!」
そう言うと、目を見開くようにして驚くメイド。
無理もあるまい、私が劉備玄徳の記憶が戻る前のレヴィルが腹いせにこのメイドを殴ってしまったのだ。
そんな男が出した回復薬など信用は出来ないだろう。
ただでさえ魔族の奴隷にされてから色々恐ろしい目に合わせてしまっているのだ…仕方ない。
そう思うともう一度メイドの手から回復薬を取った。
「毒では無いから安心しなさい」
そう言って、毒では無い証明の為に回復薬を少し飲んでみせる。
そして再びメイド怪我してる手を掴むと回復薬をかけようとする…しかし。
「あ、い、いえ! そうでは無くてこれぐらい大丈夫なので…か、回復薬はいらないです!」
突然身を捩って嫌がるようにする。
ただ回復薬するだけで、大袈裟に嫌がる様子に不思議に感じるが…回復させる事に悪い事はない。
そう思い少し強引に回復薬を怪我してる人差し指にかけようとした。
「いや!」
するとさっきより強い力で抵抗する物だから、つい手を滑らせてしまい回復薬をビンごと彼女にかけてしまった。
「す…すまん! …ん?」
回復薬がかかった彼女は、髪からポタポタと雫を垂らし、確実に回復薬の液がかかったように見えたが、薬で回復した時に絶対出る回復光と言う発光現象が起こらなかった。
どう言う事だ? 回復薬の液がかかった生き物は、怪我があっても無くても必ず回復光と言う発光現象が起こる事は、学を修める者なら子供の頃に習う世の常識だ。
この娘は…まさかアンデットなのか?
いやでも切れば血を流していたし、何より生気を感じる。
ならば一体何故、回復薬が効かない。
ん? 回復が…効かない?
…まさか…この娘。
「メイドお前まさか…イファリウスの…使徒…だったのか?」
「あ…あ…」
イファリウスの使徒、そう問うとメイドはこの世の終わりのような顔をしその場に崩れ落ちていた。