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第1話 後天的転生者

誰も覚えてないと思いますが、久々の更新です。

中国ドラマの「三国志three kingdom」見て三国志に今更ながらハマってしまい、転生物でもしも劉備玄徳が魔族の外道皇子に転生したら、みたいな話を作りたくなって書いてみました。

ネタかぶりがあったらすみませんが、これはこれ、と言う感じに楽しんで見てもらえれば幸いです。

また頭は良くないので文才はありません。誤字脱字イミフ改行、文脈、後三国志の知識など、認識違いなどなどあったら申し訳ありません。

後、働きながらの時間の合間に書いてるので更新は遅いと思いますが、2度3度添削して、なるべく待たせず、お見苦しい文はお見せしないよう頑張るのでよろしくお願いします。

 暗い。

 真っ暗い闇の中。

 煌々と照らす一点の光は、我が身を纏う炎。

 その炎は胸の奥から絶え間なく噴き上がり、我が身を永久に焼き続ける。

 そんな炎に包まれた我が体の足元に蠢き呻く物が見えた。

 それは人。

 小さな小さな人の姿をしたそれは、炎に焼かれる苦しみの声を上げながらも、それでもなお私に擦り寄ってくる。

 助けを求めるように。

 希望を託すように。

 私に救いを求めている。

 そんな彼らを私は助けたいのに、どうしても体が動かず、ただただ彼らの悲痛な叫びを上げながら焼け消えていくところを見る事だけしか出来なかった。

 こうなってから一体どれだけの時間が過ぎたのだろうか。

 10年? 100年? 1000年か。

 悠久に感じるくらい、ずっとこのままだった。

 しかしどんなに時が過ぎようとも。

 どんなに同じ光景を見せられても。

 それは慣れる事は無く、まるで火に焚べられてるかの如く、絶え間なく、私の心を責め続ける。

 これはきっと罪火の炎なのだ。

 もうやめてくれ。

 私にお前達を救う事は出来ない。

 いや、救う資格は無いのだ。

 私は…私を信じ頼ってきたお前達が求める物を踏みにじり、炎で焼き、全てを灰にしてしまったのだから。

 …灰に? 私は何を灰にした?

 理由が思い出せない後悔の念を胸に抱き、その答えを導き出す為、思考を巡らす。

 何とか思い出そうとすると思い出せず、そのもどかしさからか、無意識に顔を手で覆っていた。

そしてその指の隙間から、今一度足元に群がる小人たちをじっと見る。

 じっと見て、そしてハッとする。

 「民」

 そう彼らは私の民だった者だ。

 彼らは私を慕い、頼り、信頼し集まってくれた民だ。

 そんな彼らにそう思われてた私はなんだ?

 私は…彼らが、そう平和に暮らせるように…、何をしようとしていた?

 何を…していた?

 民を…を。

 や…安んじる。

 そうだ…万民が安んじられるように、私は…私は…か…かん。

 そう漢王朝を復興させようと…していた。

 突然頭の奥から激流が噴き出るような、もしくは仄暗い水底から水面に向かってくような、そんな感覚の中、ぼやけていた記憶が次第に鮮明になっていく。

 そうだ私は。

 天下万民が皆、笑顔で幸せに暮らせる平和な国を作る事を我が一生の誓いとし。

 その誓いを果たす為、死する時を同じく誓った兄弟と、私を信じてくれた仲間達とあまたの戦場を駆けた。

 しかし皇帝になった驕りと兄弟を殺された怒りから自分を見失い、孔明の話に耳を貸さず、呉との戦で多くの兵を死なせてしまい。

 我が命を賭しても償えぬほどの罪を犯したにも関わらず、その耐え難い心労で死んでしまった身勝手で愚かな男、そう私は…。

 「劉備玄徳」

 そう言葉を発した瞬間溢れるように光が差し込む。

 暗闇から突然の光の世界に顔が自然としかむ。

 そこは先程の暗闇では無くベッドの上だった。

 辺りをよく見回すと、内装が中華風の作りでは無く洋風になっていたので、先程まで見ていた記憶に引っ張られているせいか違和感を少々感じるが、この部屋には見覚えがある、何故ならここは私の部屋だからだ。

 私の名前はレヴィル・グロリアス・マリアル。

 一応、魔征域を支配する魔帝ルード・グロリアスの末席の子供で皇子だ。

 そして…劉備玄徳。

 乱れた世を正す為漢王朝の復興を目指すも、死ぬ時は同じ時を誓った義兄弟である関羽、張飛が呉の計略で殺されてしまった怒りから、その雪辱を晴らすべく呉の孫権に戦いを挑むも、大都督の陸遜を若いと侮り、油断し、夷陵の戦いで火攻めに合い大敗。

 何とか白帝城に落ち延びるも、数十万の兵を死なせてしまった心労のせいか、その後は倒れてしまい、孔明と我が息子阿斗に蜀漢を託し…恐らくは死んでしまった中山靖王劉勝の末裔…劉備玄徳。

 そう私は劉備玄徳なのだ。

 いや劉備玄徳だった、と言うのが正しいだろうか、これは…。

「後天的転生者か」

 そう呟くと書棚に向かい、記憶を頼りに一冊の本を引き抜き開いた。

 そこに書かれてる後天的転生覚醒と言う内容に目を通す。

 後天的転生覚醒、数ある転生の仕方の一つで、転生とは基本異世界の者がこちらの者として生まれ変わる事で、生まれた時からその前世の記憶がある物を先天的転生者、また後から記憶が戻る者は後天的転生者と呼ばれるのだ。

 どうやら私はこの後天的転生者として劉備玄徳の記憶が覚醒したのだと思われる。

 そこまで読み終えると無言で本を閉じ、そして盛大に溜息を吐きこう呟いた。

「何故、先天性じゃ無かったのだ…」

 先天性転生者じゃ無かった事に、激しい後悔の念が怒涛のように押し寄せてくる。

 それもそのはずである。

 何故なら、正義の志を胸に抱き、天下万民が安んじられる国を作る為、義と命を賭して戦い抜いた劉備玄徳、その私が転生した者は、魔帝グロリアス最末席にして魔皇子レヴィル。

 その名が示す通り人間に仇なす魔族。

 しかも最悪な事に、レヴィルは我欲の為なら何でもやる外道皇子で、その外道の名を冠するに相応しく、悪虐の限りを尽くしてきた暴君だったのだ。

 その非道は、自分が治める領民の生活がままなくなるほどの重税を課す事は当たり前。

 それどころか自身の心を満たす為だけに、民や立場の弱い者に暴力を振るい、その苦しむ様を見て喜ぶような腐った性根、さらに自分より強い者が現れ勝てないと思えば、すぐにみっともなく命乞いをし媚び諂う癖に、自尊心だけは人一倍強く、他人の才能を認めず、ただただ醜い妬みや嫉妬心をむき出しにすると言った外道で小人、そう言うならば外道小人、それが劉備玄徳の記憶が戻る前のレヴィルの姿だった。

 その記憶が一気に思い出され、劉備玄徳だった事を思い出したレヴィルは、背中が冷えるような、もしくは顔が激しく熱くなるような、そんな耐え難い罪悪感が湧き上がり、自然と頭を抱えてしまう。

 何と言う情けない人生…じゃなくて魔生を送ってきてしまったのだ。

 この劉備玄徳一生の不覚…いや転生だから二生の不覚になるのか? ともかくこれは夷陵の戦いで慢心から火攻め受けたくらいの不覚。

 私はあれほど後悔と無念を残して死んだと言うのに…また、くそ! 何をしてるんだ…!

 痛烈に感じる後悔の念に、罪を払拭する為か何度も頭を叩く。

 その時だった。

 「そんなに悔しいのかい?」

 不意に声をかける者がいた。

 声がした方を向いてみると、美丈夫と言う言葉が良く似合う、金髪赤眼の魔族の青年が、既に開け放たれている扉を叩きながら、爽やかな笑顔を向けていた。

 「ラファルド…?」

 彼の名前はラファルド・ネグロヴィア。

 現魔征域魔帝ルード・グロリアスの親戚であり側近であり右腕とも言える大臣ヨウゴク・ネグロヴィアの嫡男であり、また魔帝グロリアスとは親戚の間柄と言う事は、私とラファルドは従兄弟同士の関係となる。

 彼とはその関係から、幼少の頃に出会っており、何故か私が行くところにずっとついて来てくれた。

 劉備玄徳の記憶が戻る前の矮小で猜疑心が強かった私が、唯一安心して心を預けられる、ただ一人の友と言える者だろう。

 何故なら彼は、私が無能だった事により魔帝から、私が今住んでいる場所、放逐領域と呼ばれるデスメソルの領主として本国から追放される形、つまり流罪と同様の扱いを受けてここに来る事になってしまったのに、彼はそんな事は全く気にせず着いて来てくれた。

 領主と言えば聞こえは良いが、ここデスメソルは人間が住む神領域と接しており、古来より人間と戦争して来た魔族に取っては、言わばここは最前線で、その事から当然一番早く戦火に焼かれる場所となり、さらには神領域を攻める足がかりにする街を建築しようとすると、人間側はギルドの冒険者や正規の騎士団を駆り出して妨害する為、デスメソルには細々とした村々はあるものの、まともに交易している都市は一つも無い、まさに最辺境の名に相応しい貧しい土地なのだ。

 その事から魔族側も、ここに街や防衛線を作る事は諦め、その一つ後ろにある、夜翔州カラミティアル・フェザーを防衛の最前線の要としている事を、正式な国防白書として発表している事から、魔族はこの土地を完全に見捨てている、その事からここは流罪の罪に問われた者の流し場所にも使われるし、もしくは本国で罪を犯して逃げて来た者が身を隠す為にも使われている。その事から、訳ありの者が住まう地、放逐領域デスメソルと呼ばれるようになった。

 そんな荒んだ土地に、尊い身でありながら、何も権力も無い私について来てくれたのだ、彼の友情は本物だろう。

「お目覚めのところ早々で悪いけど、早く次の手を考えないと、ちょっとヤバイよ」

「次の手…?」

「…死にかけて少し記憶に障害が出てるのかな? 君にその傷を与えた子の事だよ」

「傷…? う…!」

 言葉と共にラファルドが肩の辺りを指し示すのでそこに触れると耐え難い痛みが走った。

 これは切られた傷だ、しかも魔族の再生力を超えての深傷、この傷を負った原因は…。

「これは…そうか、あの冒険者の女に…」

「思い出したかい? そうだよ…確かハルビヨリ…ユメルだったか、その子にやられた傷さ」

「ああ…そうだ思い出した、私はその者の怒りを買い…切られた…そうだった」

 私が今まで寝込むほどの重症を負わせた、人間の冒険者ハルビヨリ・ユメル。

 彼女との出会いは、劉備玄徳の記憶が蘇る前の、外道のレヴィルだった頃、私はこの放逐領域に追放されても何とか再起してやろうと、その資金を稼ぐ為、神領域で人間同士の戦争で住む場所を失った民、通称『戦災奴隷』を、神領域の奴隷商と取引きし、本国の貴族階級の魔族に、労働、食用、愛玩目的と言う愚劣な目的で売ろうとしていた時だ。それを阻止してきたのが彼女、ハルビヨリ・ユメルだった。

 驕り高ぶっていた時の私は、人間風情と、あの娘の強さを認めなかったが、彼女は私など足元にも及ばないほど強かったのだろう。

 そう言えばハルビヨリ・ユメルと言う名前は、神領域ではあまり聞かない変わった名前だ。

 もしかしたら彼女は、私と同じ転生者か

、もしくは生きたままこちらに来た召喚者なのかも知れない。

 異世界から来た者は、様々な形で強力な力やスキルを持っていると聞く、ならばあの強さにも納得がいく物だ。

 …そう言えば私も後天的と言え転生者、何かそう言った力があるのだろうか?

 その事に気づき、自身のステータスを確認しようとした時、不意にラファルドが声をかけてきた。

「深く考えてる暇は無いよ、彼女はすぐにでも君を殺しにくるよ」

「すぐに私を殺しに来る?」

「当然さ、君は彼女にあれだけの事をしたんだ、死にかけたくらいで許される訳がない」

 そうラファルドは言っていたが、何故か、何をしてしまったのか、ぱっと記憶に出てこなかった。

 しかし、何かしたと言う感覚は確かにあり、深く記憶を探れば思い出せそうな気がしたので、思い出す為、思考を巡らす事にした。

 あれだけ…なんだ? 何を………。

 ………! ああ…そうだ。

私は彼女に殺されても仕方の無い事をしてしまったのだ。

 そう…あれだけ許されない事を…。

 また自分が犯してしまった罪に頭を抱えてると、提案するようにラファルドは言ってきた。

「そこで僕に良い案があるんだ」

「何…? 良い案だと?」

 ラファルドの言ってる言葉が分からないと言う感じに小首を傾げると、そんな私の様子に、同じように小首を傾げて、しっかりしてくれよ、と言わんばかりにラファルドは言葉を続けた。

「おいおい…まだ寝ぼけてるのかい? ディアザレイドの事だよ」

「ディアザ…レイド………っ!」

その言葉を聞いた瞬間、私は頭がガンと叩かれる感覚を受けたが、すぐに頭を振り正気を取り戻すと、ベッドから飛び跳ねるように起きた。

「レ…レヴィル!?」

 その様子に、いつも飄々とした余裕の態度を崩さないラファルドが呆気に取られていた。

 私はそんな彼の稀有な様子も気に留めず、床へと力強く足を着地させる。

 ダン! と、それ相応に鳴り響く床音、その瞬間、肩に耐え難い苦痛が走り顔を歪める。しかしそんな事は気にしてはいられない。

 痛みに耐え、さらに走り出すと、ドアを開け放ち部屋を飛び出した。

 ちょ…ま、待ってくれ! そう言うラファルドの言葉を置き去りにして、さらに走り出して地下へと向かった。

 その時私の中あった物は、激しい後悔と焦燥。

 絶対に止めなければいけない…! あれだけは…あんな事は…、私が劉備玄徳だった以上、あんな恐ろしい事は絶対にやらせる訳にはいかん! その一念を胸に、私は暗く湿った地下階段を駆け下りて行くのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 劉備が心優しい性格だった? じゃあ安熹県で督郵を二百回棒叩きをしでかしたのは張飛ってことです? もしそうなら、この劉備は演義の登場人物でしょうか?
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