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忘れる記憶と蘇る記憶

「いーっやたぁあ」

めちゃくちゃ喜んでいる少女が今、俺の目の前にいる。


「落ち着け、(さち)

東京の地下。ここに来るのにめちゃくちゃ凄い音の出るエレベータを降りて、参加料を払ってここにいる。

いや、今ちょうど幸が払っている。


「どんどんいくよう」


一つ一つ、丁寧に処理しては生み出し、また処理していく。

その手際は何かに精通した、熟練の技そのものだ。

それを初めて見る目の前の男は顔が真っ青だ。


「おいおい、聞いてねぇ!話が違うじゃねぇえか」


幸がそろそろ何を目の前でやっているのかを話す前に、俺たちが今何をやっているのか。

ちょっと俺自身も整理しておきたいので聞いてほしい。

というか、昨日から一体どうしてこうなってしまったのか全く頭が追い付いていないので、

今回は大体の説明で勘弁してほしい。


(つとむ)!!はやく次の準備して!!」

はいはい、わかりましたよ。

目の前の仕事もやりつつ。今回はこのメモを残しておく。

後日、修正を加えるかもしれないが勘弁してほしい。


これは、幸と書き手である俺、努の日々の記録である。

忘れないようにメモをとり、それをもとに後日まとめていっているが、ほとんどメモをそのまま載せている。


できれば、どうしてこうなっているのか解明できるものがいたら幸いだ。冗談、こんなのわかるわけないだろう。なぜなら、二日したら記憶が消えてしまうのだから。


二日で消えるので、日々というものでもないかもしれない。まぁ記録は消えないか、記憶だけしか消えない。食われない。



それでは、二日前に戻る。

俺は、幸とはプールで出会った。どこのプールかはメモってなかったので、わからない。

初めてのはずだが、妙に馴れ馴れしい。それが、最初の印象だ。


「やぁ、努。はじめまして。メモをみて、私は幸ソウルコネクター。面倒だから、以下略!これでわかるでしょ、ずっと前から一緒に行動してる。私も記憶ないけど、この子たちが教えてくれてるから多分そうなんでしょ」


何を言っているのかわからない。


「あ、そうか、メモ全部燃えたんだね昨日。データで残すのはやばいとか努は言ってたみたいだし、なくなっちゃったね」


ちなみに、このメモを小説のように書いているのは、嘘と真実をごまかすためだ。こうやっておけば、誰も真実のメモとは思わないだろう。誰も覚えていないのだから。幸が借りてる力がなければ、忘れたものを知ることはできない。


「工夫する必要があるって、努は言ってたね。待ってね昨日の分だけの一部だけ解放できるから」


そして、俺の中に知らない映像が頭の中に流れ込んでくる。

いや、知っている映像だった。そうなった。


「まじか...」


「毎回、そんなリアクションだね...」


その後は、重要な部分だけ知っている状態になったみたいだ。

どうやら、幸は記憶を操ることができるらしい。だが、その代償に記憶の保持が二日のみになる。使用されたものも同様だ。

そして、幸は自分自身に一日ごとにすべての記憶を思い出すようにしているらしい。寝ている間なら可能なのだという。ただし、自分だけ。思い出させる時間は思い出す場面でかかった時間だけリアルタイムでかかってしまう。そのため、どうやってもすべてを他人にこの能力を使って思い出させることはできないという。


「私たちは自分たちのことをソウルコネクターと呼んでるみたい。そう言ってた人がいる」

体験は伴わない現実。他人の思い出を語るようなその口調は、不気味なものだった。


「それじゃあ、早速お仕事だよ。明日ここに来ること」


隣に置いておいておいたスマホがマップのURLを伴ったアプリケーションに送信されていた。


「そこのエレベータ、めちゃくちゃうるさいけど、我慢だね」

彼女は後ろ振り向いて、そのままプールから出て行ってしまった。


翌日、約束の場所に来てみるとさらに妙なことになっていた。

「ああ、説明してなかったね。省いてたもんね」


何か、目の前に意味わからんのが見える。



「ちなみにこれ見えてる人は私と同じだからね」

つまり、二日で記憶が消える。


「なんで、俺も巻き込まれるような感じにするんだ?」


「そうした方が信じやすいと思うし、結局この後この力を使うのに努に協力してもらうから同じ」


とりあえず、協力しなければならないのは昨日、見せてもらってわかった。

わかったんだが、これを書いているときには記憶がなく、メモしかなかったので内容が書けない。

記憶がない状態でもメモって難しい。


「それで幸さん、そいつは何だ?」

火の玉みたいなのがうようよとしている。


「これは、今回協力してもらう隣人たちだよ。私の能力はこの子たちに協力してもらわないと、能力の使い方どころか、それがあることすら覚えてない状態になっちゃうから向こうで契約したんだ」


向こうとは幸が寝ている間に行っている別世界らしい。そっちでは記憶を食べるものがいるので、どうせ自分は記憶がなくなっちゃうんだから二つ返事で了解したらしい。


「待てよ。それじゃあ、その能力をもったそいつらは幸さんの能力じゃないんだよな。何で俺も記憶が消えるんだよ」


「それは、この子たちを向こうからこっちに呼ぶのは私の能力のうちの一つだからだよ。いや、そういうこともできるってだけで実際能力は一つなんだけど...そこらへんは説明しないよ。どうせ努は忘れちゃうし、今回は必要ないから」


その後はエレベータに乗り、今のこの状況である。

火の玉のような、よくわからないやつは誰かが見てないとこの世界では迷子になってしまうらしい。

今回はその見張りとして俺を使っているらしい。

幸は参加料を払い続けている最中は目の前に集中しなければならないからだ。


参加料というのは、強いやつが総どりする目の前で行われている祭りに参加するためのものだ。本来、金を払うのだが、幸は暴力で解決している。幸が勝ったら一回だけ参加料はなしにするという闇のリングでの格闘技だ。どうやら、彼らは俺が参加すると勘違いしたらしい。

女が男に勝てるわけないというのと、結構、かわいい幸の容姿をみてのちょっとした下心もあったのだろう。負けたときの内容はまあ、お察しの通りなのだが。


「いーっやたぁあ」


目の前の男はぼこぼこである。

この大会での優勝候補だったみたいだ。

掛金は昨日レイズされているので、変更は利かない。


どうやら、小遣い稼ぎに来ただけらしい。もちろん、俺にオールインしているらしい。


火玉はそのために必要だったらしい。自分に憑依させて戦っている。

火玉はもともと空なのだが、そこに、魂を入れるとその魂を自分に憑依させることができるらしい。

しばらくすると魂は火玉から出ていくので、ストックが必要だったのだという。

俺は、そのストックの火玉を一つずつ掴んで幸の方に投げている。なぜか触れることができているのである。


「全員気絶させたから、全員棄権だね。はい報酬」


観客はみな顔面蒼白である。もちろん気絶させられたものたちは二日後には全く記憶がなかったという。

観客たちにも、無理やり範囲効果のある能力を使って幸の記憶は消去完了だ。

俺は仮面をかぶっていたので、賞金だけいただいてその日はおさらばだった。


「めちゃくちゃだな....」

今日は、記憶がなかったが幸の方からまた会いに来て記憶を少しもらった。

そして、この物語を書いているのである。

賞金は幸がもっていると思うが、メモがないので書けない。

帰ってきたらすぐに書くようにすべきだったはずなのに、どうしてそうしないでメモにしているのかはよくわからない。多分、あの後すぐに次の日になりそうだったから急いでメモだけ残したのだろうと思い、今日は物語を閉じることにする。




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