人生最強の女(攻略編)
■ 似た者同士
もう30歳を過ぎた春のこと。蒼井涼介はある中小企業に中途採用で社員となった。ソフトウェア開発の仕事だが、集中力は1時間ほどで切れてしまう。少し疲れた時は席を立って休憩室へ向かう。その休憩室でよく会っていたのが社長秘書をしている藍原夏美とカスタマーサポート主任の植山順子だった。2人とも1つ年下で、藍原夏美は黒髪にポニーテル、目が大きく、どこか鋭さを感じさせられるかなりの美人である。植山順子はショートヘアー、すこしぽっちゃり系で見た目は普通の女性という感じだが主任という貫禄がある。蒼井涼介は休憩仲間という感じでその2人と話をすることがよくあった。
入社して2ヶ月ほどしたある日、いつものように休憩室に行くと藍原夏美が1人で座っていた。蒼井涼介は「お疲れ様です、今日は1人なんだ?」と声をかけると藍原夏美は「じゅんちゃん(植山順子)は今日から研修で1週間ほどいないんだよ」と言った。休憩室で2人きりなったのははじめてのことで少し緊張しながら沈黙を続けていると「ねえ、あなた、人のことすぐ見抜くタイプでしょ?」といきなり藍原夏美が声をかけてきた。蒼井涼介は「まあ、そういうところもあるかな」と曖昧に答えた。すると藍原夏美が話しはじめた。
「あなた口説き上手でしょ?」
「そんなこと言われたことないよ」
「そう?狙った獲物は必ずしとめるって感じするけど?」
「なんでそう思うの?」
「あなた、人の心の中に入っていくのが得意そうに見えるから。少し天狗になってる部分も見えるけどね」
「そんなことないよ」
蒼井涼介は藍原夏美の鋭い洞察力に少し動揺していた。そして藍原夏美は笑みを浮かべながら話を続けた。
「本当かしら?今まで何人口説いてきたの?」
「俺はそんなモテないから・・・」
「モテるんじゃなくて狙った女性を口説き落すのが得意だって意味よ」
「そんな、人聞きの悪い・・・」
「そのくせ、孤独って感じがするわ」
「それはたしかに。人間だれしも孤独だし・・・」
まさか藍原夏美は人の心が読めるのか!?蒼井涼介は少し黙り込んだ。
「アタシ達って似た者同士だって思うのよ」
「似た者同士?」
「アタシもね、こう見えていろんな男に言い寄られるんだけど、話してみるとその人が何を考えて求めてるのか、すぐわかっちゃうのよね。それにアタシも自分は孤独だって思ってるし」
「そうなんだ」
「ねえ、これからアタシをあなたの獲物にしてみない?」
「はあ?」
蒼井涼介は「何を言っているんだこの女は?」と不思議に思った。
「あなたがアタシをどのようにして口説き落とすか興味があるの」
「俺が藍原さんを口説いてどうするの?」
「その先のことなんて考えてないわ。ただそれまでの過程が楽しみなのよ」
「藍原さんのこと別になんとも思ってないし、楽しみって言われても困るんだけど・・・」
「とりあえず似た者同士ってことで仲良くやっていきましょ?」
「それはわかったよ。仲良くはするけど俺は藍原さんに何かするつもりないよ」
「あなたは必ずアタシを口説き落とそうとしてくるはず」
「だからそんなことしないって!」
「いいえ、必ずしてくるはずよ。楽しみにしてるわね」
そういう話をして藍原夏美は休憩室から出ていった。蒼井涼介は「何考えてるんだこの女は・・・まさか挑戦する気なのか?」と思ったが、はバカバカしいと思いながら仕事に戻った。それにしても藍原夏美の鋭さに度肝を抜かれた気分でいた。
■ 打つ手なし
仕事帰りの電車の中で蒼井涼介は考えていた。あのかなり美人な藍原夏美に彼氏がいない理由がわかる気がする。あの、人を見抜く鋭さからして、大抵の男性では扱えないだろう。特に外見だけで判断して言い寄ったりすると十中八九フラれるのは間違いない。似た者同士といわれたけど、今まで出会ってきた人から自分も同じように感じられていたのかと思う。ところで藍原夏美は蒼井涼介という人間に興味を持ってるのはわかるが、あの言い方だと恋愛したいというより、挑戦的な何かであるとしか思えない。それってバトルなのかゲームなのか、ただの気まぐれなのか。どちらにしても相手をするつもりはない。ただ、藍原夏美という人間に興味を抱いたので、彼女の心の中を覗いてみたいとは思う。しかし、もしかするとそんな好奇心までも藍原夏美は見抜いているのかもしれない。とりあえず、挑発には乗らず、もう少し話をすれば何かわかるだろう。
次の日、いつものように休憩室に行くと藍原夏美がいた。蒼井涼介はいつものように「お疲れ様です」と言うとにっこり微笑んだ。心の中では絶対に挑発に乗らないことを意識しながら椅子に座った。
「どうしたの?難しい顔して・・・」
「別に普通だよ」
藍原夏美はクスクス笑いながら言った。
「アタシをデートに誘う方法でも考えてるのかしら?」
「そんなこと考えてないよ」
とりあえず藍原夏美のことを聞いてみようと思った。
「藍原さんってさ、悩んでることとかないの?」
「悩んでることかあ。あるにはあるけど、アタシは楽観的だから、何事もなるようになるって感じかな。そこはあなたと逆かもね。あなたは深く考えて自己解決するタイプでしょ?」
「たしかにそうかもね」
藍原夏美はニヤっとしながら言った。
「ふーん、なるほどね。そうやって狙った女性の悩み事を聞き出して、その相手の心の中に入っていくのね」
「そこまで計算してないよ」
しかしこれには蒼井涼介が半分嘘をついたことになる。藍原夏美の言った通り、たしかに今まで悩み事や相談事を聞くことからはじめていくのが攻略方法だった。ところが藍原夏美はそれを見事に見抜いてるようだ。そして、そのやり方では通用しないことを告げられたようにも思えた。
「次の手は何かしら?」
「次の手も何も、何もするつもりないって」
「どうして?」
「藍原さんはすごい美人だし、いつもオシャレで何着ても似合ってるし、俺なんかが相手できる人じゃないよ」
蒼井涼介は何気に褒め言葉を付け足したつもりだった。
「すごい美人かあ・・・あなたにとってアタシの存在ってそれだけ?」
「そんなことはないけど・・・」
やはり藍原夏美に誉め言葉なんて通用しなかったのだ。
「あなたがアタシを相手できるできないなんてどうでもいい話よ。あなたがアタシをどのようにして口説き落とすか?それだけが楽しみなのよ。じゃあよろしくね!」
そう言って藍原夏美は休憩室を出ていった。
ここまでくると蒼井涼介のやり方もしかり、一般的な恋愛マニュアルなんて藍原夏美には通用しない。打つ手なしといったところだ。しかし、彼女は一体、何を望んでいるのだろうか?とても蒼井涼介に対して恋愛感情があるとはとても思えない。ただ興味本位で口説いてほしいと言ってるだけだろうか。とにかく、今はわからないことだらけだ。蒼井涼介が本気で藍原夏美に恋していれば、必死に口説き方を考えるだろう。しかし、今はそんな感情を持っていない。ただ興味があって藍原夏美の心の中を覗いてみたいだけなのだ。それをするにはどうすればいいのだろうか。そんなことを考えながら蒼井涼介は電車の中で途方に暮れていた。
■ 超覚醒
蒼井涼介は10代の頃、いくつかの恋愛をしてきた。あっけなくフラれたこと、恋愛関係で友達に裏切られたこと、今考えると顔から火がでるくらい恥ずかしいこと。精神的にどん底まで落ちていって、いろんな経験をして、いろんなことを学んできた。恋愛関係とは?好きという感情の正体は?そんなことを疑問に思って勉強しはじめた恋愛心理、理論、哲学、自己分析。そして気づきもあった。そこから自分らしい恋愛のやり方を確立させていった。この相手を口説くにはどうすればいいのかという方法を考えて実行していった。相手に心を開かせて、相手にとってなくてはならない存在となっていった。相手を精神的に追い込む手段まで使ってまで手に入れてきた。ただ、自分が”この女性を攻略してみたい”という興味本位で振り向かせたこともあった。しかし、今はそんな方法では通用しないと言わんばかりに、蒼井涼介の恋愛攻略法を根底から覆す人間が現れたのだ。それが藍原夏美という存在といえる。
蒼井涼介はある言葉がずっと頭の中にあった。それは藍原夏美の「天狗になってる」という言葉。蒼井涼介はもう一度、自分のやり方を改め直す必要があるのではないかと思った。自分が今までやってきたことを思い出しながら、今はそれについてどう思うか、何を感じるかを考えてみた。自分は人の心を操れると錯覚していたのではないだろうか?今までのやり方で成功していることに自己満足していたのではないだろうか。神のごとく恋愛マスターにでもなっていると思い込んでいるのではないだろうか。そんなのはただの優越感にすぎない。自分はそんな優越感に浸っていたのだ。それに気づいた蒼井涼介は、まるで目が覚めたかのような感覚になった。これが藍原夏美の言っていた天狗の正体なのだ。こんな優越感はくだらなく邪魔なものなのでさっさと捨ててしまおう。そう悟った蒼井涼介は何かものすごく覚醒したかのように感じてきた。何かを超越したかのように・・・まさに超覚醒したのだ。そして蒼井涼介は新しい何かを獲得した気がした。
藍原夏美には人を見抜く力を持っているが、蒼井涼介もそれと同じ力を持っている。あの鋭い洞察力も自分と同レベルかそれ以上かもしれない。似た者同士というなら、もう下手な小細工は抜きに、本来の自分をさらけだして対等に向き合ってやろう。口説き落とすことなどはどうでもいいことで、重量なのは藍原夏美という存在と真剣に向き合うことだ。こうなれば真っ向からぶつかってやろう。それで本来の蒼井涼介という存在を彼女はどう感じるか。たとえ、くだらない人間と思われようが構わない。藍原夏美はたしかにこちらのことを見抜いていたが、逆にこちらも藍原夏美の心を見抜いてやる!そう決心した蒼井涼介はプライベートで藍原夏美を誘ってみることにした。
次の日、休憩室に足を運ぶと、1人でいる藍原夏美がいた。いつも通りの挨拶をして話を切り出した。
「藍原さん、フェアで話をしようよ」
「フェアで話って何?」
「ここだとあまり話ができないから、今度の休日にでも2人で会って話をしない?」
「ずいぶん直球なお誘いね?」
「勘違いしないでほしいけど、デートじゃないよ」
「そうねぇ、どうしようかなぁ・・・わかったわ。今週の土曜日の午後、そこの駅で待ち合わせしましょうか?」
「わかった」
意外と簡単に藍原夏美を誘うことに成功した。
■ お互いの過去
待ち合せをした土曜日、蒼井涼介は早めに駅に着いた。今日はとりあえずお互いの過去についての話をするつもりだ。待ち合わせの時間になると藍原夏美がやってきた。
「こんにちは、待たせたわね。今日のデートコースはどうなっているのかしら?」
「いや、だからデートじゃないって!」
「そうだったわね。それでどこに行くの?」
「藍原さんお昼ご飯は食べた?」
「まだ食べてないわよ」
蒼井涼介と藍原夏美は近くにあるファミリーレストランに入って昼食をとることにした。昼食が終わるとお互いに食後のコーヒーを飲む。さて、そろそろ話しをはじめるか。
「藍原さん、今日はお互いにどんな生き方をしてきたのか話をしたい」
「それは子供の頃からの話かしら?」
「どの時期からでもいいよ。俺から話していくよ」
「あなたの過去の話ね。興味があるわ」
蒼井涼介は自分の子供時代の話をし始めた。
自分は小学生の頃から好奇心旺盛でいろんな趣味を持っていた。でもそれは子供の趣味っぽいことじゃなかったこともあって、変な事をしていると言われた。口も達者でいわゆる生意気な子供といえばいいのか、クラスメイトや家族、大人にまで自分の考えをハッキリ言っていた。そのためか、周囲からは何を言ってるのかわからない変なやつ、大人からはただ理屈っぽい生意気な子供だと言われてきた。父親に意見をすると『生意気なこと言うな』と怒鳴られて暴力を受けることも度々あった。それでも自分はみんなが右を向いてるのに、それは違うと思ったら左を向くようになった。次第に周囲からは変子とまで呼ばれた。そのことで、どうして自分の趣味や考え方がわかってもらえないんだろうと悩んだ。自分自身、心の中で独りぼっちだと思った。つまり自分は孤独だということ。中学生になった頃、もう自分の意見を周りの人に言わないようにした。どうせ言っても理解されないと思ったから。今度は周りから「何考えてるかわからないやつ」だと言われるようになった。そのうち自分のことを他人に理解してもらうことなんて諦めた。そしてグレていった。世間はバカばかりだと反発していた。でもギターという趣味をはじめだしてから変わっていった。その頃、フラれたけどずっと忘れられないくらい好きな人と出会った。その後、病気になり入院して高校を辞めたことや恋愛話など話していった。
蒼井涼介の話を聞いた藍原夏美は憐れむような表情で「そんな子供の頃から孤独に耐えてきたのね」と呟いた。蒼井涼介は「ただ、母親だけはいつも見守ってくれてたのが救いだった」と言った。
「次は藍原さんの番だよ」
「アタシは中学2年生の頃、仲良くしてたクラスメイトが3人いたの。でも、どうしてアタシはこの3人と仲良くしているんだろうって疑問を持ち始めた。一緒にいて何気ない会話をしてたけど、これが友達なの?って思ったの。ある日、その中の1人の子が家庭の問題ですごく悩んでいたことがあったの。その子から詳しい事情を聞いたけど、人の家庭のことだし、アタシには何もできなかった。他の2人の子達は『元気出して!』とか言いながら励ましていたけど、結局そのくらいのことしかできなかった。アタシは自分の無力さに失望したわ。そして友達って軽いもののように感じたの。結局、表面上は仲良くしてても、本当に悩んでる人がいてもその程度のことしかできないんだと思ったわ。アタシはもっと親身になって話を聞いてあげればよかった、力になってあげればよかったと気づいて後悔したわ。それからのアタシは変わっていったの。3年生にあがってクラス替えになったけど、表面上で仲良くしていた人達はいた。でも信用はしていなかったわ。助け合いとか絆とか友情とか、そんなの綺麗ごとでしか思えなかった。本当はみんな自分が一番可愛くて、悩んでいる人がいても所詮は他人事なんだと・・・そのことに気づいたアタシは本当にわかりあえて助け合える人がいれば、それが本当の友達って呼べる人なんだろうって思った。でもアタシの周りにはそんな人はいなかったの。アタシもそう、さっきあなたが言ってた”独りぼっち”だと思ったわ。高校に入学してもアタシの望む友達はできなかった。アタシは心の中で孤独に耐え続けた。でも、1人で部屋にいるときはあまりにも淋しくて泣いちゃうこともあったわ。それとアタシはいつの間にか周りに流されないようになっていたの。周りのみんなが同じ意見でも、アタシは『それは違う』って思ったら反発してた。アタシは頑固なひねくれ者になってしまったのかと考えたこともあったわ。そんな反発する自分も孤独だって感じてた」
藍原夏美の話を聞いた蒼井涼介は共感できる部分が多かった。表面的な関係に気づいたこと、周りに流されず自分の考えを貫くこと。まるで自分が過去に感じてきたことと似ている。
「上辺だけの関係じゃなく本物の関係を求める気持ち、俺にもよくわかるよ」
「藍原さんの恋愛経験についてはどうなの?」
「アタシは高校1年生の時、告白されて付き合ったけど長くは続かなかったわ。アタシの気持ちが曖昧だったのが原因だったんだけど、相手はいろいろ要求して迫ってこられるのに耐えられなくなったの。その後も数人の男の子に告白されて付き合ってみたけど、みんな考えてることは同じ。結局、みんな心がつながってなくても、体さえつながれば満たされるんだろうって思ったわ。恋愛関係なんて薄っぺらいものなんだと思うようになった。でも社会にでて1人だけ本当に好きになった人ができたの。その人はアタシの中身を見てくれて、まるで心の中を大きく包んでくれるようだった。包容力って意味ね。ただ、その人には婚約者がいたの。アタシは後悔したくないと思って自分の想いを伝えた。その時、その人は『きっと僕よりふさわしい男性が現れるよ』と言ってくれたの。その後、アタシに言い寄ってくる男は何人かいたけど、みんな考えてることは同じだった。アタシはそんなの相手にしなかったのよ」
蒼井涼介は恋愛を含めて藍原夏美の求めているものが何かわかった気がした。それは本物と呼べる人なんだと・・・
■ エンパス
エンパスとは簡単にいえば感情や求めていることがわかってしまう能力のことで、蒼井涼介は物心ついた時からその能力を持っていたのだ。子供の頃から初めて会った人でも、表情や仕草、話し方を観察すると瞬時にわかってしまう。たとえば「この人、嘘いってる」、「この人とは合わないな」、「この人は凄いな」などと感じ続けてきたのだ。
お互いの過去について話したが、もう一つ確かめたいことがあった。藍原夏美にもエンパスという能力があるのではないかということ。2人で話した時に”人のことすぐ見抜くタイプ”と言われたのが気になっていたからだ。
蒼井涼介はまず「どうして俺が人のことをすぐ見抜くタイプだと思ったの?」と聞いてみた。すると「あなた、社内の人達と話してる時の態度が不自然なのよ。言い方が悪いけど適当に合わせてるみたいな感じ」と藍原夏美は答えた。
「そんな不自然な態度してるかなあ?」
「本当のあなたじゃないって感じたのよ。なんか人によって扱いを使い分けてるみたいな・・・」
そんなところを観察していたのかと驚いた。しかも鋭い洞察力だ。
「他にも口説き上手とか孤独とか言ってたけど、なんでそう思ったの?」
「孤独はあなたの雰囲気と目を見ればなんとなくわかるわよ。アタシも同じように孤独だし、同類がいるって匂いでわかるものよ」
「そうなのか・・・」
「口説き上手はあなたが人をすぐ見抜くことに関係するけど、見た目が普通なのに、社内の女性社員との話し方とか接し方がすごく慣れてる。もちろんアタシ達と初めて話した時もそう感じたわ。それらのことを考えれば、あなたは人のことを見抜ぬく力があって、その相手の心の中に入って口説いていってたんじゃないかって推測できたのよ」
「なるほど・・・でもなんでそこまで俺のこと見てたの?」
「さっきも言ったけどアタシははじめてあなたに会った時からこちら側の人間じゃないかって匂いで感じてたのよ」
「こちら側ってどういうこと?」
「凡人じゃないってところかしら」
確かに変子とまで言われてきた蒼井涼介は凡人と言えないだろう。それにしても藍原夏美はどこまで頭がキレるんだ!?
「もう1つ、いろんな男に言い寄られるけど、話してみるとすぐわかるっていうのはなぜ?」
「それはあなたにもわかるんじゃない?話してるときの表情や仕草を見ていると、カッコつけてるとか、嘘いってるとかわかっちゃうのよ。アタシは常に相手の言葉1つ1つに『なぜ?』『どうして?』と疑問を持ちながら話してるの。だから話のつじつまが合わなかったりすると違和感を感じるのよ」
「そういう風に人のことを見るようになったのはいつ頃から?」
「さっきの友達の話でアタシが人を信用しなくなってからかな。話しかけてくる人を観察していって、いつの間にかわかるようになってたのよ」
蒼井涼介の場合、先天的にエンパスの能力を持っていたのかもしれないが、藍原夏美は後天的なもので、自ら身につけていったのか。おそらくこの鋭さも洞察力を鍛え上げられたものなんだろう。
話も終わったので店を出ることにした。別れ際に話をしていた。
「今日は参考になったかしら?」
「何の参考?」
「アタシを口説き落とす参考に決まってるじゃないの」
蒼井涼介は「まだそんなことを言ってるのかこの女は!」と心の中で呟いた。
「別にそんなこと考えてないよ。じっくり話がしてみたかっただけだから」
「ふふ、でもそれってアタシに興味があるってことよね?」
「そこは否定しないけど・・・」
そういうやりとりをして蒼井涼介は電車に乗った。
今日、話をして色々なことがわかったが、藍原夏美という存在は自分の女バージョンのように感じる。似た者同士というのも納得がいく。しかし、こんな強者を相手に口説けるやつなんているのだろうか。もし、自分がそれをしなければならない状態になったら、どんなアクションを起こすんだろう。いや、挑発に乗ったらダメだ。相手にしちゃダメだ。しかし、蒼井涼介の心の中で藍原夏美という存在がどんどん大きくなっている気がした。
■ 決意
藍原夏美と二人で会って、月曜日が訪れた。蒼井涼介はいつものように会社に出勤して休憩室へ行くと、研修から帰ってきた植山順子と藍原夏美がいた。この2人は会社内でも大の仲良しで、休憩室ではいつも一緒にいる。今は藍原夏美と2人でいるときのような話なんてできない。何気ない日常会話をして休憩室を出る。
そんな毎日が続く中、蒼井涼介は藍原夏美のことばかり考えていた。電車の中でも家に帰っても頭の中は藍原夏美でいっぱいになっていた。それは恋愛感情ではなく、何か好奇心が掻き立てられているのだ。あの強者にどう立ち向かうのか。むしろ強敵になっているのかもしれない。手に入らないものを手に入れたくなる衝動。それは難しければ難しいほど蒼井涼介の中で燃え上がる。相手がこれほど強者であれば尚のことだ。これは、蒼井涼介のいつもの悪い癖だ。その感情が大きくなってきて”藍原夏美を手に入れたい”という衝動に歯止めがきかなくなってきている。このままだと「アタシを口説きたくなる」と言っている藍原夏美の思う壺になり挑発に乗ってしまうことになる。
ふと蒼井涼介の頭の中で「勝てばいいのだ」ということが思い浮かんだ。しかし、勝つとはどういうことなのだろう。見事に藍原夏美を口説き落とすことができれば、それは勝ちになるのだろうか。頭の中で自分にいろいろ問いかける。どちらにしてもあの藍原夏美を攻略して見事に口説き落としてみたいのだ。蒼井涼介の中で完全にそのモードに入っている。こうなればそれを素直に認めるしかない。もうこの感情を制御することができなくなっている。蒼井涼介はとりあえず落ち着ついて、冷静になって頭の中を整理してみた。
まず、蒼井涼介が攻略したいと思っている相手は、今まで出会ってきた女性の中で最も最強ともいうべき頭のキレる強者だ。これまでのやり方で下手な小細工してもすぐ見抜かれてしまう。一般的な恋愛テクニックなんかで口説けるほど簡単な器ではない存在。ただ、1つわかっていることは本物と呼べる人物を求めているということだ。しかしそれは彼女の弱点とは言えないが、こちらが”本物”という存在になればいいのだ。でもあの強者の心の中に入っていくにはどうすればいいのだろうか。ここで蒼井涼介はあることに気がついた。どうにも心の中に入るということに捉われてしまっているんじゃないだろうか。それがそもそもの間違いなのかもしれない。そう考えながら思い返してみた。先日、2人で会った時はお互いの過去について話した。いろいろ共感することができた。あの時、お互いに心を開いて話をしていたのではないか。それなら心の中に入っていく必要なんかない。しかしまだ足らないものがある。それは現在のお互いのことを心と心で話をする。お互いの価値観をぶつけ合ってはいない。お互い心を触れ合いながら共感することができれば”本物という存在”になりえる可能性はある。もしかすると既に藍原夏美の中で蒼井涼介はその”本物の存在”になりつつあるのかもしれない。ただ、今の段階ではそれは早すぎるだけで、相手もこちらを伺っているのかもしれない。どちらにしてももう一度、2人で話をする必要がある。今までのやり方では相談事や悩み事を聞くというキッカケにしていたが、今回は対等に心を開いて話せばいい。今度の話題はお互いの考え方や価値観を中心に話をしてどれだけ共感できるか試してみよう。対等な立場でお互いの価値観を話して共感しあうこと。これこそが攻略の一つになるかもしれない。
あとは藍原夏美を攻略するにはハートにトドメを刺す必要がある。しかし、どのようにしてトドメを刺すかが問題だ。相手は今まで口説いてきた女性とはレベルそのものが違う強者なのだ。まわりくどい言い回しなどしてもすぐ見抜かれるだけで、下手をすれば屈辱を味わうことになる。だからといってストレートに「好きです」と告白するのも味気がなく何かが足りていない。何か良い方法はないかと考えを巡らせてみるが、何も思いつかない。考えれば考えるほど答えが出てこない気がしてきた。少し考えすぎて頭が疲れてきた時、蒼井涼介はある言葉を思い出した。それは藍原夏美が自分のことを楽観的と言ってこと、そしてこちらは深く考えるタイプだと言ってたことだ。藍原夏美が楽観的なタイプであれば、このことに関して深く難しく考えすぎているのかもしれない。相手が楽観的であれば、口説き落とす方法もシンプルでいいのだ。ただ、シンプルに強い想いを伝えることができればいい。そこでシンプルな方法を考えてみた。頭はキレるとはいえ藍原夏美も女性なのだ。その女心を揺さぶることができれば、それが最後のトドメになるのではないか。シンプルに女心を揺さぶる方法といえばこれしかない。蒼井涼介は確実にトドメを刺す方法を思いついた。しかし、その方法を実行してしまうとその後はどうなるかわからない。失敗すれば全てが終わってしまうのだが、この方法以外に考えられない。蒼井涼介は考えをまとめたところで、これから藍原夏美という強者と一戦交える決意をした。まずやるべきことはもう一度、2人で話をすることなのだ。
■ 宣戦布告
一戦交える決意した蒼井涼介は早速、会社内で使われているメッセンジャーを使って藍原夏美にメッセージを送った。内容は『もう一度2人で話がしたいので次の休日は空いてないか?』すると『土曜日は出勤なので日曜日の午後ならいいよ』と返ってきた。
日曜日の午後、前回同様に駅で待ち合わせとなった。早めに着いた蒼井涼介は待っていると藍原夏美がやってきた。
「こんにちは、今日はデートになるのかしら?」
「いや、前と同じだよ。ただもう少し話がしたかったから」
そんな話をしながらファミリーレストランに入った。今回も昼食を終え、食後のコーヒーを飲みながら蒼井涼介が話を切り出した。
「今日はお互いの考えや価値観とかそういう話をしてみたいと思うんだけど・・・」
「ずいぶんと真面目な話なのね。哲学でも語り合おうってことかしら?」
「いや、そんな難しい話じゃなくて、世間ってどう思う?とかそういう感じかな」
「なるほどね。価値観といえばさ、アタシが社会人になった時の話になるんだけど・・・」
「続けて!」
「社会に出た時、思い知らされたことがあるのよ」
「それって?」
「アタシの価値観なんて社会で通用しないってことかしら。あの時は大きな壁があって、そこに行き詰ってしまって悩んだのよ」
「そうなんだ。それでどうしたの?」
「アタシは一度リセットしたといえばいいのかな」
「その時の価値観を壊してしまって捨ててしまった・・・そういう感じかな?」
「そう、それよ、それ。それでアタシはいろんなものが見えるようになった」
「俺もプライドやくだらない意地を捨てて、何度も自分の価値観ぶっ壊してきたから、いろんなものが見えるようになるってわかるよ。でもいろんなものが見えるようになったってことは、知らなくていいことまで知ってしまわなかった?」
「そう、そうなのよ!知らなかったほうがよかったって思うことがたくさんあったのよ」
「生みの苦しみってやつだよね。俺は人間の汚い部分とかずるいところとかそういうのが見えて、一時期人間が嫌いになったよ」
「アタシも人間嫌いって思ってた時期があったよ」
「そうなんだ、今はどう?」
「今は無関心になったというか、言い方は悪いけどバカはまともに相手しないって感じかしらね」
「まあ、世の中バカなやつだらけって感じもするけどね。会社の人間はどう思う?」
「うちの会社ってさ、仕事柄かもしれないけど機械人間って感じの人多いと思わない?」
「たしかに!俺の部署なんか特に多いよ。感情がないというか、全てがシステム化された感じなんだよね」
「そうなのよ。だからアタシは業務的な話し方しかできないのよ」
その後、お互いの考え方や自分たちの思うことを話し続けた。今回もかなりお互いに共感できた部分はあったと思う。そして店を出た。駅まで歩く途中、藍原夏美は「今日は話をして何か参考になったのかしら?」と聞いてきた。蒼井涼介は”本物という存在”になれたのかわからなかったが、できることはやったつもりだ。「まあ、参考になったといえばなったかも」と答えた。すると「あら、前と言ってることが違うじゃない。本気でアタシを口説き落とす気になったのかしら?」と藍原夏美は笑みを浮かべながら言った。
「あ、あの・・・藍原さんを口説くのに一つ条件がある」
「条件?何かしら?」
「俺がどんな方法を使っても、後で文句を言わないってのが条件かな」
「方法にもよるけど乱暴なことをするのはなしよ」
「じゃあそれを約束に、口説き落としてやるよ!」
「ふふふ・・・随分、自信満々じゃない?その顔だと何かいい方法でも思いついたようね。どんな方法かしら?」
「敵に作戦を言うわけにはいかないよ」
「敵ね・・・アタシは獲物だから敵ってわけね。いいわ、どんな方法を使ってくるのか楽しみに待ってるわ」
蒼井涼介は藍原夏美に「絶対に口説き落としてやる」と宣戦布告した。さて、この最強の強者にトドメを刺すことはできるのか!?不安でいっぱいだが、もうやることはただ1つなのだ。帰りの電車の中でそんなことを考えながら覚悟を決めた。
■ 強者射る
先日、藍原夏美と2人で会ってから3日目。蒼井涼介はトドメを刺すタイミングをうかがっていたのだが、休憩室にはいつも藍原夏美と植山順子の2人セットでいる。2人きりでないとこの方法は実行できないし、他の誰かが休憩室にいても実行できない。あくまで2人きりになるチャンスを狙っていた。蒼井涼介は共有ファイルを開いてこっそりカスタマーサポートの予定表を見ていた。木曜日、つまり明日は植山順子が出張になっていた。それならば明日が狙い時なのだ。しかし実行中に誰かが入ってくる可能性は十分にある。業務中に実行は避けるべきと考えた蒼井涼介は、明日がノー残業デーであることに気づいた。狙うなら勤務時間終了後の休憩室しかない。
次の日、蒼井涼介はいつものように出勤して休憩室に入ると、藍原夏美がいた。2人きりの状態だが今はまずい。
「お疲れ様です!藍原さん、今日はノー残業デーだけど、勤務が終わってから、ちょっとここに来てもらっていいかな?」
「なにか話でもあるの?」
「うん、ちょっと話したいことがあるんだよ」
「ふーん、アタシを口説く実行開始ってところかしら?」
「まあ、それは秘密だよ。そんなに時間はとらせないから」
「わかったわ」
これで準備は整った。あとは実行あるのみ。しかしトドメを刺すことができるかという不安もあったが、その後どうなるかのほうが不安になっていた。しかし決心は変わらない。ここまできたら実行するしかないのだ。
17時に勤務時間終了となり社員達が帰っていく。蒼井涼介は少しの間、自分の席に座りながら、社員がいなくなるのを待っていた。数名の会社役員は残っていたのだが、ここの役員が休憩室に入ってくるのを見たことがない。だから大丈夫だ。蒼井涼介はシーンっとなった社内を確認して休憩室に入った。まだ藍原夏美は来ていない。おそらく社長室で片付けでもしているのだろう。
5分ほど待っていると休憩室の扉が開き、藍原夏美が入ってきた。「お待たせ。それで話って何?」といって椅子に座った。蒼井涼介は心臓が破裂しそうなくらいドキドキしていた。今から実行することは人生初のこと。落ち着け、冷静になれと心の中で呟きながら蒼井涼介は話を切り出す。
「藍原さんを口説き落とすって話だけど・・・」
一瞬、言葉に詰まった。
「その話なのね。それで?」
落ち着いた表情で聞いてくる藍原夏美。蒼井涼介は軽く深呼吸をして心を落ち着かせた。
「その方法はいたってシンプルだよ」
「シンプルな方法ね。それでどうするつもりなの?」
蒼井涼介は座っている藍原夏美の目の前まで行った。そして「ちょっと何?」と言われた瞬間、「藍原さん、好きです」と告白して、そのまましゃがみこんで藍原夏美の頬を両手でそっと押さえてキスをした。2秒か3秒か・・・唇と唇が重なり合っていた。ついに実行してしまった。この後どうなるのか、もうどうなったっていいのだ。これが成功なのか失敗なのかわからないが、こうするしかなかったのだ。そっと顔を離していくと少し赤い顔をした藍原夏美の姿が目の前にあった。少し沈黙が続いた。少しなのにその時は長く感じた。
「これは・・・ルール違反だよ・・」
小さな声で呟く藍原夏美。ルール違反!?この一戦にルールなんて設定した覚えはない。
蒼井涼介はそっと向かいの椅子に座って「文句を言わないって条件だったよね」と言った。藍原夏美はこくりと頷いた。また沈黙が続く。やはり短いようで長く感じる。
「文句を言うつもりはないけど、ちょっと強引な方法だったし意表を突かれたって感じよ」
「藍原さんを口説き落とすにはこの方法しかなかったんだよ」
まるで体の力が抜けたようになった藍原夏美は恥ずかし気に「あなたにはしてやられたわ」と呟いた。ついに人生最強ともいうべき藍原夏美を見事に口説き落とすことができた瞬間だった。
「1つ聞いてもいいかしら?どんなことを考えてこの方法を思いついたの?」
この質問に対して蒼井涼介はこの実行に至るまでの経緯を話していく。そしてこれからの関係についても話すことになる。
■ 強者との結末
蒼井涼介は口を開いて実行までの経緯を説明していった。
「藍原さんが最初に『口説き落としてみない?』と言った時から俺に興味があるんだと思ってた。俺も藍原さんに興味を持ったし話してみたいって思ったから2人で会って話した。でもその時はまだ”口説き落とそう”なんて思わなかった。逆に挑発に乗らないでおこうって思っていた。でも藍原さんのことばかり考えるようになってきた。藍原さんは”口説いてみろ”といわんばかりに挑発してきた。俺はだんだん藍原さんを攻略したくなってきた。それは俺の好奇心だけど、難しい相手であればあるほどその欲求に歯止めがかからなくなった。藍原さんの挑発にまんまと乗ってしまった。しかし、藍原さんの鋭い洞察力と頭のキレは半端じゃなかった。普通の恋愛テクニックや、今までのやり方では通用しないことはわかっていた。だから考えたのが、下手な小細工は抜きにして真っ向から対等に話してみようと思った。これが2回目に2人で会った時のことだけど・・・それと最後の仕上げとしてあとは藍原さんをどうやって”口説き落とすか”だった。口説き落とすなら藍原さんのハートにトドメを刺す必要があった。それをどうすればいいかいろいろ考えた。でも、考えれば考えるほど答えはでなかった。その時、ふと藍原さんが言ってた『楽観的』という言葉を思い出した。俺は自分が深く考えすぎていることに気がついた。藍原さんが楽観的であるなら、トドメを刺す方法はシンプルな方法がいいと思った。シンプルに自分の想いを強く伝える方法について考えた。それには藍原さんの女心を揺さぶる必要もあると思った。そしてこの方法を思いついた。俺は自分の感情を心と体でぶつけてみる方法を思いついた。それはある意味賭けになったんだけどね。そしてさっきそれを実行したというわけだよ」
長い話を聞いていた藍原夏美は「なるほどね」と呟いた。
「それでだけど・・・その想いは藍原さんにちゃんと伝わったのかな?」
「すごく伝わったわ。それに見事な方法を思いついたわね」
「しかし、これほど恋愛についてさんざん考えさせて悩ませた藍原夏美という人間は、俺にとって人生最大の強者だったよ」
「人生最大の強者か・・・それって誉め言葉になってるの?」
「なってるよ」
少し間があいた。
蒼井涼介は「それで、今後どうしていくかなんだけど・・・」と話を切り出した。
「そうね、あなたはどうしていきたいと思ってるの?」
「俺らはさ、恋人というより大親友って感じのほうがいいと思う。同じ会社内ってのもあるけど、ぶつかり合うようなことになったら、お互いを壊していくと思うんだよ」
「そうね。アタシもそう思うわ。それにあなたと付き合うってなんか違う気がするわ」
これで話は終わった。藍原夏美という強者との戦いで、蒼井涼介は多くの事を学び成長できたと思う。今こうして超覚醒した姿でいられるのは藍原夏美のおかげといってもいいだろう。藍原夏美に恋愛感情がなかったといえば嘘になるが、大親友という形になったことに大満足している。それは完全に自分を信用してくれているという証になるから・・・
「ねえ、さっき言ったこともう一度言ってもらえるかしら?」
「さっき言ったことって?」
「人生最大の・・・」
「ああ、藍原夏美は俺にとって人生最大の強者だったよ。今まで出会ってきた女性の中で1番最強だったよ」
「褒めすぎじゃないそれ?」
「褒めすぎてもいいくらい頭使わされたよ」
藍原夏美は嬉しそうな表情しながら「一番最強の女ね・・・ふふふ」と呟いた。
蒼井涼介は得意気に「その最強の女もしとめられちゃったね」と言った。
藍原夏美はにっこり微笑みながら「まったくね」と呟いた。
ところで、今回はまるで自分が自分を攻略する方法を考えていると感じていた部分もあった。それなら蒼井涼介も強者になるのかもしれない。そう思うと今まで関わった女性から自分も強者と思われていたのだろうか。どちらにしても、これは蒼井涼介にとって人生最大の恋愛バトルだったといえる。それからは大親友という関係が続いていった。しかし、1年後、蒼井涼介はもう一度、この人生最強の女と一戦交えることになるのだ。




