0955 フリッツの死
俺は帝都の屋敷で筆頭執事たるジオルドの報告を聞いたが、その意味がわからなかったので質問をした。
「フリッツが死んだ?
どういう事だい?」
「ガルゴニア王宮で戴冠式の直後に最期を遂げたようです」
それを聞いてもやはり意味が分からなかった俺は、もう一度同じ事を言った。
「意味がわからない。
すまないが、もう一度よく説明をしてくれ。
最初からな」
俺に促されて帝都屋敷の首席執事のジオルドが話始める。
それまで俺と談笑していたアレックも息を飲んで説明を待つ。
「はっ!フリッツ様がガルゴニア皇帝陛下にホウジョウ藩王の名代として、祝辞を述べた所、そのままその場で殺害されたと報告が大アンジュ経由で来ております」
は?祝辞を述べた者がそのまま殺された?
そこまで聞いても、やはり俺には訳がわからなかった。
「その場で殺された?
祝辞を述べた後でか?
フリッツ・ボートは藩王である私の名代だぞ?
しかもアムダール帝国のボート伯爵家の息子だ。
それをいきなり殺したのか?」
「はい、その通りでございます」
「一体どういう理由でだ?」
「それはわかりません。
しかし亡くなったという事だけは間違いなく事実のようです」
そこまで説明されて、ようやく事態を飲み込めた俺は今度は愕然とした!
「フリッツが・・・死んだ?」
あのフリッツが・・・
魔法学校を卒業以来、何年も一緒に仲良くやって来たのに・・・
俺の脳裏にはフリッツがアレックと一緒に俺の所へ土下座して学びたいと言って来た日の事を鮮明に思い出していた。
そして俺と一緒に白西瓜を収穫したり、それを港でニコラスと一緒に水夫たち相手に売った事も思い出していた。
時には血の気の多い水夫たちと立ち回りなどをしたのも、今となっては良い思い出だ。
ほかにも除虫菊を一緒に刈り取って、蚊取り線香も売ったりもしていた。
ミズホまで行って、ヤマタノオロチだって一緒に倒したのだ。
俺が砂漠の旅をしている間も、ガルゴニア帝国のエバイン伯爵領を頑張って治めていてくれた。
ついこの間も、アッタミ聖国で色々と一緒に働いてくれたのに・・・
ガルゴニア帝国へ俺の名代として行くと笑っていたフリッツを思い出す。
そのフリッツが死んだ・・・
しかも殺された!?
殺された・・・
殺された?
殺されただと!
俺はようやくその事を理解すると、怒りがフツフツと沸いてきた。
「許さん!
何の理由もなく、うちの者を殺したのか?!
一体どういうつもりだ!」
そしてたまたまそばにいたアレックも怒りで震えて答える。
「はい、私も同じ気持ちです」
「ああ、君は初等学校の頃からの付き合いなんだ。
怒りは私の比ではないだろう」
アレックとフリッツはアムダルンで初等魔法学校時代からの付き合いと聞いている。
その長年の友を突然無くしたのだ!
その思いは察して余りある。
「はい、奴はいい奴でした・・・
まさかこんな最期を遂げるとは・・・
いえ、報告を聞いた今でも信じられません。
これは本当の事なのでしょうか?」
「それは私も同じだよ!
ジオルド!これは間違いないのかい?」
確認をする俺にジオルドが答える。
「はい、事実でございます。
我が軍からの報告以外にも、アグラム伯爵やトランダール伯爵など、うちと親しいガルゴニア帝国の各方面からも同時に報告が来ております。
その方たちは実際にその場に同席していたそうです。
それこそ、止める間もないほどのアッという間の出来事だったそうです。
その場で伯爵たちはガルゴニア皇帝のその行為を非難し、諫めたそうですが、全く聞く耳を持たなかったそうです」
「ぬう・・・」
驚いて言葉も出ない俺にアレックが話す。
「あいつは今回、私の代わりにガルゴニア帝国へ行ったのです。
それが私の代わりに殺されたのだと思うと、もはや言葉が出ません」
「それは私も同じだよ!アレック!
とにかく一度急いで大アンジュへ戻って、もっと今回の顛末を詳しく調べよう!」
「はい!お供します!」
こうして俺たちは早急に魔法飛行艇で大アンジュへと帰った!
大アンジュへ戻った俺は、直ちに新ガルゴニア皇帝へ詰問状を出した!
いかなる理由で自分の名代である者を殺害したのかと、強く問い詰める論調でだ!
しかし帰ってきた答えはフリッツの塩漬けの首と宣戦布告状だった!
< ガルゴニア帝国は積年の恨みによりホウジョウ子爵領に宣戦布告をする!
この首はその戦いの幕開けの証とする! >
それを読んだ俺は怒り狂った!!
ワナワナと震えながら、その宣戦布告状を片手でぐしゃりと握りつぶしながら叫んだ!
「許せん!
よくもたかが戦争の道具に俺の大切な友人を使ったな!
ガルゴニア帝国ガルガン1世、覚悟しておけよ!
貴様だけは絶対に許さん!」
そう叫んだ俺の元へ報告が届いた!
「ホウジョウ様、ガルゴニア帝国各地から進発したガルゴニア帝国の軍隊を確認しました!
全軍がアグラム伯爵領に集合の後、こちらに進軍する模様です!
大森林領到着予想は1週間後です!」
「何だと!」
どうやらガルゴニア帝国は本気でうちと戦争をするつもりのようだ。
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