0939 ルネオイラ教団裁判
事件に関する自白とも取れる証言は取れたので、これ以上アイシャルを尋問しても無意味と判断した俺たちは、二人の尋問を終えた。
二人は再び独房へ戻されて、しばらくはそこで過ごす事となった。
その際にローランドはアッタミ聖国とメディシナーに関する事をもっと知りたいと申し出たので、俺たちはメディシナーの歴史とアッタミ聖国の歴史、そしてライオネルに関する資料を何冊も渡しておいた。
他の連中の尋問もほとんど終わっており、素直に白状した者、黙秘を通した者、事情は知っていても自分に罪はないと主張する者など色々だった。
俺たちはその陳述書をまとめ、後日裁判をする事となった。
国家間に関する問題のために、裁判は魔法協会が担当する事となり、アースフィア広域総合組合もそれに協力する事となった。
そしていよいよ裁判が始まった。
裁判は俺たちが集めた様々な証拠と逮捕者たちの陳述により、次々と刑が決まり、ルネオイラ教団の上層部の者たちはほとんど死刑、中層部の連中は犯罪奴隷となって裁かれた。
もちろんその首謀者たるアイシャルは死刑の判決が下ったが、そうするまでもない事が起こってしまった。
それは裁判が終わってアイシャルが護送される時の事だった。
いきなりどこかの女性が近づいて来て、持っていた刃物でアイシャルを滅多刺しにしたのだ!
それはあっという間の出来事で止める間もなかったのだ。
俺やエレノアはその時まだ裁判所の中にいて、その話を聞いて驚いた!
後で聞いた話によると、その女性はアイシャルに対して「この詐欺女が!私の子供を返せ!平人を虫けらのように扱いやがって!その虫けらに殺されるがいい!」と言ってアイシャルを襲ったそうだ。
もちろんその後でその女は捕まったが、その時はやりたい事をやり遂げたような表情をしていたらしい。
アイシャルはあれほど馬鹿にしていた平人によって、その人生を終わらせたのだ。
裁判に当たって困ったのは本当に何も知らない連中だった。
ローランドを始めとして逮捕した連中の中には、本当に何も知らずに教団で働いていた良心的な連中がいたのだ。
彼らは一様にルネオイラ教団の正体を知って驚いていた。
そしてそのような組織に自分たちが所属していた事を恥じて、罪滅ぼしをしたいという者が続出した。
ローランドもその一人だ。
そう言った連中は無実という訳にも行かないので、教団上層部がいなくなった後の残務処理をさせた上で、アッタミ聖国、ウトロウ王国を始めとした関係国から無期限追放とした。
犯罪組織の中にいた人間としては罪が軽すぎるという意見もあったが、彼らは本当に自分の無知さと行動を悔いていたので、それで十分という判決だった。
もっとも中にはそれを狙って何も知らなかった振りをする者もいたが、そういう連中はことごとく膨大な陳述書とケット・シーたちの証言によって見破られて、返って罪が重くなった。
そしてローランドの側近には2種類いて、アイシャルの命によってローランドを見張りつつ側近をしていた者、ローランド同様に善人で、何も知らずに教団に加担していた者だ。
前者は当然アイシャルの悪事を知っての上で協力していたので、犯罪奴隷となり、後者はローランドと共に追放刑に加えてホウジョウ子爵預かりとなった。
ようやく更新が出来そうです。
0931「調査結果」以降は、かなり加筆修正したので、再読していただければ幸いです。




