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おねショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!  作者: 井伊 澄洲
おねショタ好きな俺が転生したらエロフに騙された!
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0095 ハインリヒの決心

 次の日の朝早く、エレノアが俺たちを招集する。


「どうやらこれから依頼主に会いに行く様子です。

 みんなで見ていましょう」


こうして俺とエレノア、レオニーさんとレオンハルトさん、ドロシーさん、オーベルさん、マーガレットさんが集まると、エレノアが大きな水晶玉を取り出す。

なるほど、これで虫型タロスが見た物を、こちらで見れる訳か?

その水晶玉にはハインリヒが映っていて、どこかへ向かって歩いているようだ。

水晶玉からは、周囲の音も聞こえるようになっている。


「どうやら監督舎へ向かっているようです」


レオニーさんがつぶやくと、全員がうなずく。

やはりというか、ハインリヒはクサンティペの監督舎へ報告に向かうようだ。

俺たちはその様子を虫型のタロスで見守る。

ハインリヒが歩いている間に、俺がエレノアに質問をする。


「そういえば、オフィーリアは昨日何であいつに「命令したのはクサンティペか?」と聞かなかったの?

 そうすれば一発で犯人がわかったのに?」

「それは、その可能性が低かったからです。

 その場合は意味がありません」

「何で?」

「言明の鐘というのは、あくまで問われた人間が嘘をついているかどうかを、調べる道具であって、真実がどうかがわかる道具ではないからです」

「え?どういう事?」


俺にはその違いがよくわからなかったので、エレノアに聞いてみた。


「言明の鐘は本人が嘘を言っている自覚がない場合、反応はしません。

例えば、このアースフィアは球体な訳ですが、もしアースフィアを平面、つまりまっ平らだと信じている者に「アースフィアは球体か?」という質問をして、相手が「いいえ」と答えても、鐘は鳴りません。

つまり質問をした相手が嘘だと自覚していなければ、鐘は鳴らないのです。

ですから、ハインリヒが暗殺命令をクサンティペから直接受けていなかったり、仮に直接受けていたとしても、顔などを隠されたりしていれば、「暗殺命令をしたのはクサンティペか?」と聞いた時に「違う」と答えても鐘はなりません。

あの鐘が裁判などであまり使われないのはそういう理由からです。

あくまで回答者が主観的に答えるだけであって、客観性はあまりないのです。

そこで私は逆にハインリヒを泳がせて、報告をさせた方が良いと判断したのです」

「なるほど、わかったよ」


俺がエレノアの説明を聞いている間に、ハインリヒが監督舎に到着する。

ハインリヒはクサンティペの部屋へ行くと、扉の外で守っていた衛兵に入室を求める。


「ハインリヒだ。クサンティペ様に報告しに来た」


どうやらハインリヒは顔なじみらしく、あっさりと衛兵は入室を許可する。


「入れ」


ハインリヒが部屋の中に入ると、そこにはケバケバしい中年の女性が、偉そうに大きな机を前にして座っていた。

それを見た瞬間、レオニーさんやレオンハルトさんたちがうなずいてつぶやく。


「やはり・・」

「ああ、そうだな・・・」

「予想通りですね」

「これがクサンティペなのですか?」


エレノアの質問にレオニーさんが答える。


「はい、これが現監督者で、我々の義母、クサンティペ・メディシナーです」


なるほど、話に聞いた通り、中々ギスギスした感じのオバハンだ。

豪奢な作りの机の前に立ったハインリヒは、クサンティペに報告をする。


「ただいま、戻りました。

 クサンティペ様」

「おお、ハインリヒ!首尾はどうです?」

「はい、お喜びください。

 見事レオンハルト・メディシナーの息の根を止めてまいりました。

 これがその証拠でございます」


そう言って、ハインリヒがレオンの指輪を差し出す。

クサンティペはまじまじとそれを眺めると、やがて満足したように話し始める。


「確かにこれはあの小僧の指輪です。

 よくやりました。ハインリヒ」

「はい、供にいた女も一緒に始末しておきました。

 これでしばらくの間は、メディシナーの者も、彼らが死んだ事には気づかないでしょう」

「なるほど、中々手際が良いですね。

 もっとも、今まで散々失敗していたのですから、それ位は当然ですね」

「はい、それで・・・」

「何ですか?」

「約束の報酬ですが?」


ハインリヒの言葉に、クサンティペは何かを思い出したように、引き出しを開けて中に入っていた物を取り出す。


「ああ、そうでしたね?

ではこれをあげましょう」


そう言って、クサンティペは、取り出した数枚の紙切れをハインリヒに渡す。

渡された物を確認したハインリヒが問いただす。


「これはPTMの抽選券?」

「そうです、それで当たればPTMを受けられます」


そのクサンティペの言葉に、ハインリヒが憤然と抗議する。


「私が求めたのはPTMの施術その物です。

 こんな抽選券ではない!

 これでは約束が違う!」

「あなたも知っている通り、このメディシナーではPTMの施術は公平に行われます。

 その抽選券を持っていれば、運が良ければ、PTMが受けられますよ」

「私があなたと約束したのはPTMの施術その物です!

 あなたは約束を破る気か?」

「おだまりなさい!

 私はあなたをレオンハルト・メディシナーの暗殺犯人として突き出しても良いのですよ?

 それをしないだけありがたいと思いなさい!」

「そんな事をすれば、私はあなたに頼まれたのだと訴えますぞ!」


その言葉を聞いて、クサンティペはカラカラと笑う。


「どこのやせ犬ともわからぬ人間の証言を誰が聞くというのです?

 私を一体誰だと思っているのです?

 私はメディシナー家の当主の妻にして、ボイド家のゆかりの者なのですよ?

 あなたのようなどこの馬の骨ともわからない人間の証言など、瞬きもしない間に覆してみせますよ?

 そうなったら困るのは誰ですか?

 さあ、それがわかったら足元が明るいうちに立ち去りなさい!」

「くっ!」


ハインリヒはワナワナと震えるが、踵を返して部屋を出る。


 そのまま監督舎を出たハインリヒは、近くの公園のベンチに座り、しばらくの間、頭を抱えて考え込んでいたが、やがて決意したように立ち上がると、第三無料診療所へと向かう。

 第三無料診療所へ着いたハインリヒは、受付でドロシー副所長を呼び出す。

ドロシー副所長はハインリヒを所長室へと案内すると、ハインリヒと話し合う。

残りの俺たちは隣の部屋で、その様子を伺っていた。


「どうしましたか?」

「あんたの仲間の予想した通りだった。

 あの女は俺との約束を守りはしなかった。

 それどころか、俺をレオンハルト殺人犯として仕立て上げて、自分の身を守るつもりだ」

「なるほど・・・で?あなたはどうするのです?」

「これであの女との縁も切れた。

 約束を守らなかったあいつに、もはや俺が義理立てする必要も無い。

 しかもあいつは俺に全て罪を被せるつもりだ。

 俺は自分の身を守るためにも、あんたがたに味方をする」

「なるほど、しかし、そのためには今までの経緯を話していただかなくてはなりません。

 その気はあるのですか?」

「ああ、もちろんだ。

 こうなったら、洗いざらい話すつもりだ」


その会話を聞いた俺たちが隣の部屋で無言で顔を見合わせると、全員でうなずく。

俺たちは扉を開けると、全員で中に入る。


「その話、全て聞かせていただきましょうか?」


レオニーさんが、そう言ってハインリヒに話しかけると、ハインリヒは驚いた様子だったが、うなずいて話を始める。

いよいよレオンハルト暗殺計画の全貌が暴かれる時が来た!


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