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おねショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!  作者: 井伊 澄洲
おねショタ好きな俺が転生したらエロフに騙された!
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0883 テギン王国の行く末

 ホウジョウ子爵一行が去った後でテギン王一族は呆然としていた。

しかしいつまでもそうしてはいられない。

まずは妃が我に返った。


「ねえ、これからどうするの?あなた?」


その質問にネーロス王は弱弱しく答える。


「あなたではない、陛下と呼べ・・・」

「では陛下、これからどうなさるのですか?」

「逆にあいつらの町にこちらから攻め込んで・・・」

「そんな事よりもっと身近な事を考えてください!

私たちはもう今夜寝れる場所すらないんですよ!」


そう言って妃は崩れ去ったかつては小さいながらも王宮だった物を手のひらで示す。

その瓦礫の山を見た王は深いため息をついて、周囲を見渡すと、そこに宿屋が目に入る。


「仕方がない。

どうやら宿屋は無事なようだ。

この国では王宮の次に大きな建物はあの宿屋だ。

当分の間はあそこを仮の王宮としよう」

「それで?その後は?」

「落ち着いたらその隣に出来た町とやらを攻撃しに行くぞ」


しかしガルバー王子は激しく首を横に振る。


「だめだ!あそこはうちの何倍も大きな町で、全体が魔法防御で覆われているんだ!

しかもあの子爵とやらは親父よりもタロスを多く出せるんだぜ?」

「親父ではなく、陛下と呼べ・・・

あいつはそんなにタロスを出すのか?」

「陛下だって見ただろう!

あいつが1千体ものタロスを出すのを!」

「そうか・・・そういえばそうだったな・・・」


ネーロス王は先ほどの戦いを漠然と思い出してその事を確認する。


「しかもドラゴンが五頭もいるんだぜ!

それをどうするんだよ!」

「むう・・・」


確かにドラゴンに対する方法など何も思いつかない。

そしてゲルバー王子が別の現実的な問題を突きつける。


「それよりも腹が減ったぜ。

そっちはどうするんだよ?」

「食堂で・・・」


そう言いかけたネーロス王は瓦礫の山と化した王宮を見て途中で口を閉じる。


「食堂ならもうなくなりましてよ。陛下!

どうしますの?」


その妃の質問にネーロス王はしばらく考え込んでいたが、やがてノロノロと答えを出す。


「仕方がない・・・

全員タロスを出して瓦礫を片付けろ。

そして使えそうな物は仮王宮へ運べ」

「食事は?

俺たちは料理なんぞ出来ないぜ!」

「ジャベックを使え。

料理が出来るジャベックが一つくらいはあるだろう?」

「へっ!そんな上等なジャベックがうちにあったかね?」

「ああ、そんなジャベックはないんじゃないかな?」

「あったら昨日の晩飯に干し肉なんて喰ってないだろう!」


その時に王の弟である大臣が思い出したように話す。


「そう言えばあの子爵の献上したジャベックが確か多少料理を出来たと思いますが?」


その言葉にネーロス王は吐き出すように話す。


「あんなもんの世話になるくらいなら、メシなんぞ喰うか!」

「しかし陛下、背に腹は代えられないと言います」

「そうそう、腹が減っては戦が出来ぬとも言うからな!」

「ぬう、勝手にするが良い!」


王がそう言ったので、大臣がジャベックを呼び出す。


「おい、ジャベック!何と言ったかな?

ああ、そうだ!ラボロ!どこにいる!」


大臣が大声で叫ぶと崩れた宮殿の一部から瓦礫をガラガラと崩して、一体の白いジャベックが出て来る。


「はい、私はこちらにおります」


それはホウジョウ子爵の献上したジャベックのラボロだった。


「お前は確か料理が作れるような事を言っていたな?」

「はい、簡単な料理であれば可能です」

「ではそこの倉庫にある食料と、宿屋に残っている食料と道具を使って我々の食事を作れ!」

「何人前ほどを作りますか?」

「・・・6人分だ」

「かしこまりました」


そう言ってラボロは倉庫の中に入っていく。

少ないと言っても、300人近くはいた国民がいまや王族の6人だけだ。

その人数にその場にいた全員が寂寥感を禁じ得ない。


「6人か・・・」

「仕方がない、何、また貿易商人たちが来ればそいつらを理由をつけてここの住民にしてしまえば良い」

「それなんだが、何でここ最近は全然商人が来ないんだ?」

「ああ、それは俺も不思議に思っていた」

「まあ、そういう事もあるだろう。

ところで大臣よ。

お前少々シャルグの町へ行って、大工でも呼んで来い。

まずは王宮を建て直さなくてはな」

「は、しかしどうやって?」

「どうやってとは?」

「かの町ではかなりうちの国の噂が立っております。

曰く、我が国へ行くと色々と理由をつけて帰れなくさせられると・・・

多少の買い物であればともかく、大工などを呼ぶには無理があるかと・・・」

「ええい!では大工ではなくともそこらの人間で良い!

家を建てられそうな奴を適当に見繕って引っ張ってこい!

方法は任せる!」

「方法は任せると言われてもどうすればよいか、私にはわかりかねまする。

是非、王からの御教授を」


そう言われると、しばし王は考えてから叫ぶ。


「むぅ、金じゃ!

少々金をばらまいても良いからそれで引っ張って来るがよい!

貧乏そうな連中であれば金貨の2・3枚でもやれば喜んでついてくるじゃろう!

そら!これを持って行け!

準備をして食事が終わったら出発をするが良い!」


そう言って王は自分のマギアサッコから金貨の入った袋を取り出す。

倉庫にあった物は食料以外は全てホウジョウ子爵に取られてしまったが、マギアサッコの中の物は無事だった。


「はっ、承知しました。

では準備をいたしまして」


そう言うと大臣は旅の準備を始めた。

一方、食事の準備をし始めたラボロが王に尋ねる。


「食事の支度をするにしても、何か火を点ける道具がございませんと、煮炊きが出来ないのですが?」

「火を点ける道具だと?」

「はい、私は自分で火を点ける事は出来ませんので」

「ふん、たかが料理に余の魔法を使えとでも言うのか!

いや、待てよ?

確かあ奴の物で火を点ける道具とか言うのがあったな?」


そう言いながら王はゴソゴソと自分のマギアサッコから携帯式ラディ炉を取り出す。


「お前はこれの使い方がわかるか?」

「はい、ラディ炉でございますね?

わかります」

「これはどうやって火を点けるのだ?」

「このように使います」


ラボロは渡された携帯式ラディ炉をパカッと開くと、その凹面鏡をラディに向けて焦点の部分に紙屑をかざすと、砂漠の強烈なラディの光を浴びて、それはたちまち燃え上がる!

それを見たネーロス王たちは驚く!


「おお!」

「本当に火が点いた!」

「これはそういう道具だったのか!」

「意外に便利だったのだな?」


火を確保したラボロがさらに王に尋ねる。


「それと料理をするには食器が足りませんが?」

「何故じゃ?」

「宿屋には何もありませんでしたし、王宮にあった食器はほとんど破壊されておりました」

「むう・・・」


食器類が無ければ食事などできない。

さすがに愚かなネーロス王でもその程度の事はわかっていた。

ここでゲルバー王子がふと思い出したように話す。


「陛下、そう言えばあの子爵が陛下に献上した品物の中に食器みたいな物があったと思ったが?」

「そうだったのう・・・

あれはどこにしまったかな?」

「あなたの部屋の物入れでしょう」

「そうだった、おい!

わしの部屋の物入れを探してこい。

こう・・・これ位の丸い白銅製の奴じゃ」

「承知しました」


しばらくすると瓦礫をかき分けてラボロが一抱えもある白銅製の丸い入れ物を二つ持ってきた。


「これでしょうか?二つございましたが?」

「おう!それだ!

中を開けてみよ!」


物が全て白銅製だけにそれらは全て無事で、中を開けると包丁に焜炉やら皿などが色々と丁度3人前入っている。

それが2つある。


「よし!ちょうど6人前あるぜ!」

「助かったわ!」

「ぬう、それにしてもまたもやあやつの献上品を使わなければならぬとは・・・」

「とにかく食べられるんだからいいじゃねぇか!」

「そうですよ」


そしてラボロは料理にかかった。

野営一式の中にはシモン式発熱タロスを仕込んだ焜炉こんろもあって、焼き物以外はそれで調理が出来た。

少々興味があって、それを見ていたガルバー王子も感心した。


「へえ?こいつは確かに便利な物だな?」


ラボロの作った食事は思いのほかうまく、王たちは少々驚いた。


「おい!これはうちの料理人が作った料理よりうまいんじゃないか?」

「そうだな?」

「ぬう・・・何故じゃ?

同じ材料を使っているはずなのに?」

「いいじゃねえか!親父!」

「親父ではない!陛下と呼べ!」

「とにかくこれでしばらくは食事の心配はなくなったんだ!

それでいいじゃないか!陛下!」

「ああ、何故か奴らは倉庫の食料には手をつけなかったから、当分の間は食料の心配はないしな!」

「ぬう、それにしてもことごとくあのホウジョウめの物を使わねばならぬとは忌々しい限りよ」

「しょうがねえだろ!陛下!」


食事が終わると大臣が馬車で出発する。


「ではシャルグへ行ってまいります」

「うむ、早急に王宮を立て直したいので頼むぞ」

「はっ」


大臣が出発すると、ネーロス王は新しく出来た町が気になって来た。


「それでガルバーよ。

その新しい町とはどこにあるのじゃ?」

「確か「ろぷのーる」とか言っていたかな?

結構近くだから西の関所へ行けば見えるかも知れない」

「そうか」


王たちその場にいた全員がぞろぞろと西側の入口へ行くと、そこから西を眺める。

確かにそこには何やらうっすらと見えるのだがはっきりとはしない。


「ううむ、確かに何かはあるようだが、はっきりとは見えぬのう・・・」

「そう言えばあの子爵の献上品で遠くの物が見える物とか言う物があったでしょう?」

「むう・・・あれか・・・」


王は自分のマギアサッコから黒い筒を二つと説明書を取り出す。


「しかしこれをどう使えというのだ?」

「さあ、多分この穴から覗き込むんだろ?

説明書を読めよ!」

「この説明書には「ラディは絶対に見るな!」と書いてあるぜ?」

「なあ?どうでもいいけど、結局俺たちって、あいつの献上品を全部使ってないか?」

「そうね、陛下はけったいな品とか言ってたけど、結構みんな便利よね?」

「ああ、あの献上品がなかったら、俺たち今頃ろくに食事もできなかったぜ」

「うるさいっ!黙っていろっ!」


一同がああでもない、こうでもないと騒いで、説明書を読みながら2つの望遠鏡をいじっていると、ついにガルバー王子が使い方を発見する。


「あっ!見えた!」

「何っ!本当か?」

「ああ、こっち側から覗いて、この筒を動かしてちょうど良く見える場所を探すみたいだ」

「どれどれ・・・」


ネーロス王が望遠鏡を覗いて焦点を調節すると、なるほど西の彼方に町の壁のような物が見える。


「ふむ、なるほど、あの町か・・・」

「そうだ、陛下、何故かあそこに突然町が出来ていたんだ」

「一体、どうして・・・」


動揺する連中を王が一喝する。


「落ち着け!町がいきなり出来る訳がない。

おそらく以前からチマチマと造っていたのを我々が気づかなかっただけじゃろう!

大した事はない」

「そうですかねぇ?」


王の言葉にガルバー王子は懐疑的だ。


 数日するとシャルグへ行った大臣が戻って来るが、そこでネーロス王たちは驚くべき話を聞く事になる!


「おお、戻って来たか!

ん?一人ではないか?

大工はどうした?」

「その前に水を!

水をください!」

「水か?ああ、そら!いくらでも飲むが良い」


王がそこにあった水差しを指さすと、大臣はそれをそのまま口にして一気に飲み始める。

しばらくの間、ゴクゴクと水を飲むと、ようやく大臣は落ち着いたと見えて話し出す。


「ふう・・・何とか人心地がつきました」

「一体、どうしたというのだ?」

「実はシャルグの町へ入れませんでした」

「何っ?どういう事だ?」

「はい、シャルグへ着いて町へ入ろうとすると、関所の入口で止められて追い出されました」

「何故じゃ?」

「何でもテギン王国関係の者は入れないとの事で」

「入れない?どうしてそうなった?」

「はい、ホウジョウ子爵領から通達が来たそうで、テギン王国の関係者が町へ入ると、その町がホウジョウ子爵領から攻撃を受けるとして、決して入れないそうです。

しかもそこで聞いた話によると、ウガヤナ王国からミイン帝国に至るまでの、この砂漠の町全てにその話が行っているそうです」

「なんじゃと!」

「私は3倍の入国料を支払うから入れてくれと頼みましたが、許可されませんでした。

そして水もあまり予備を持って行かなかったので、帰りに水が尽きてしまい、この有様です」

「むむむ・・・何と言う事じゃ!」

「しかしあのアムダール帝国の子爵はそこまでやっているのか?」

「一体、どうやって?」

「そんな事はどうでも良い!

問題はこれからどうするかじゃ!

ガルバー!」

「はい?」

「お前は飛んで行って、シャルグの町の様子を探って来い!

実際どうなっているのかをな!

ゲルバー!お前は西のガルブに飛んで行って同じように探って来い!」

「わかった」

「ああ、行ってくるよ」


さすがに危機感を覚えた二人は、東西の隣町へそれぞれ飛んで行ったが、数時間後に戻って来て、同じ報告をした。


「だめだ!陛下!

俺はシャルグの町へ入れなかった!」

「俺もだ!

ガルブの町へ入ろうとしたら止められた!」

「なんじゃと!何故だ!」

「シャルグの町に俺たちの肖像画が出回っているんだ!

それが街中でも張ってあって、それで追い出された!

念のためにその隣の町へも行ってきたんだが、そこでも同じで追い出された!」

「こっちもだ!

町の入口で俺の顔を見たらすぐに追い出された!」

「むむむ・・・何故じゃ!

何故そんな物が出回っているのじゃ!」

「この前のシャシンって奴だ!

あれが全ての町へ持ち込まれているらしい!」

「なんじゃと!」

「そうだ、この前、俺たちの事を描いたあの肖像画だ!」

「そんな馬鹿な!

あれは1枚しか描いてないのじゃぞ!」

「だけど、それが何枚もあるんだよ!」

「俺たちの魔力じゃ、あれ以上遠くの町へは飛んで行けない!

もう俺たちはこの町からはどこへも行けないぜ!」

「どうするんだよ!陛下!」

「うぬぬ・・・・」


その息子たちの報告で、初めてネーロス王は事態の深刻さに気が付いたのだった!

しかしもはやこの状況を打破する有効な方法など、ネーロス王には何もなかった・・・

そしてこのホウジョウ・テギン戦争は意外なほどに長引くことになっていく。


今年の更新はこれにて終了です。

来年の更新は1月7日からになります。

その間にもし出来たら外伝の方を更新したいと考えてます。


次回は、<0884 タルギオス族の来襲>です。





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