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おねショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!  作者: 井伊 澄洲
おねショタ好きな俺が転生したらエロフに騙された!
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0074 数の説明と行列対応ジャベックの実践

 次の日、仕事が終わった後で、オーベル副所長に引き止められた。


「よお、シノブ君、オフィーリアさん、昨日の件を所長に話したら結構乗り気だったよ。

君にもう少し詳しい話を聞きたいってさ。

仕事が終わった後で悪いが、今から良いかい?」

「はい、大丈夫です」


俺とエレノアはオーベル副所長について所長室へと行った。

所長室ではレオニーさんとドロシーさんが待っていた。


「御二人ともよく来てくれました。

昨日、オーベル副所長から話は聞きました。

確かにこの行列整理ジャベックは中々よく出来ていると思います。

あなたにもう少し話を聞いて、実際に実物を見て検討したいと思って呼んだのです」

「はい、ありがとうございます」

「だいたいの話は伺っています。

それで今度は見本ではなく、実物を出して説明していただけますか?」

「はい、わかりました」


俺は実物が入っているグラーノを取り出して、そこで実体化する。


「これが実際に使う事を考えて作った本物です」


親機の方は、見本の大きさとさほど変わらないが、掲示用の子機は縦1m、横2mほどはある。

その現物を見て、三人が話し始める。


「ほほう、なるほど、これは中々大きいね」

「でも大勢に分かり易く見てもらうのには、確かにこれ位の大きさではないと・・・」

「確かにそうですね?」

「おや?しかしこの文字はなんだい?

 こっちの本物には見本と違って見た事のない文字が書かれているが?」


「それは僕の国の数の文字で数字と言います」

「数字?」


「はい、この行列を整理するに当たって、僕はその数字の必要性を感じたので、あえてこの国の文字ではなく数字にしてみました」

「何でまたそんな事を?

数を書きたいなら、この国の文字で書けば良いじゃないの?」

「僕もそう思ったのですが、実はそうも行かなかったのです」

「なぜです?」


レオニー所長の質問に俺が答える。


「はい、実は僕の国には数を表す文字が二つあります」

「2つ?」

「はい、一つは文字としての数、もう一つは計算をするための数、すなわち数字です」

「それは何が違うのですか?」

「文字としての数はこういう物です」


俺は紙の上に、漢字で一二三四五六七八九と書いてみた。


「そして数としての文字はこうです」


さらに俺は紙の上に、算用数字で1234567890を書く。


「この文字は両方とも見た事がありませんが、この2つがどう違うと言うのですか?」

「はい、文字としての字は「桁記号記数法けたきごうきすうほう」と言って、これはこちらの数の文字と同じ意味なのです。

つまりこれと」


俺は今度はアースフィアの文字で、ⅠⅡⅢⅣⅤⅥⅦⅧⅨⅩと書いてみる。


「これは100程度までの数や足し算や引き算をするには、それほど困らないのですが、数が多くなったり、掛け算や割り算をするとなると、致命的に難しくなるのです。

また5倍か10倍になる毎に新しい文字が必要となり、それを全て覚えなければなりません」

「それは当然ではないですか?」

「しかし、この数の文字「数字」は10個の文字さえ覚えれば、どんな数字でも書けるし、計算も非常に楽に出来るのです」

「え?10個覚えるだけで?」

「へえ?そいつはどうやってあらわすんだい?」


三人は算用数字に興味を持ったらしく、俺に説明を求める。

この世界では、まだ一部でしか算用数字に近い物は無く、通常計算は「アバーコ」と言われるそろばんのような計算道具でするのが普通だ。


「はい、最初はこうして1から2・3・4と9までは同じなのですが、次の十は違う文字を用意するのではなく、10と書くのです」


そう言って俺は、紙に10の数字を書いてみせる。


「この0というのはどういう記号なのですか?」

「それは「零」すなわち何もないという事です」

「何も無い?」

「はい、その代わり、そこはくらいの位置を表すのです」

「位の位置?どういう事ですか?」

「つまり、十なら10、百なら100、千なら1000と表します」

「なるほど、では百一なら101、二千と二十なら2020、三千三百三十三なら3333と書くのかな?」

「はい、その通りです」


さすがにこの手の事にはオーベルさんは飲み込みが早い。

レオニー所長とドロシーさんもうなずく。


「なるほど、それなら確かに10個の数字で数がいくつでも表現できますね?」

「確かに・・・」

「ふむ、なるほど、確かに魔法学校などでは、これと同じ「零」に相当する文字はあるが、あくまで文字であって、それで計算したりはしないからね」

「そうですね、我々の魔法学士番号や、魔法で順番を表す時などは確かにこの「零」に相当する「0」などは使います」


どうやらこの世界でも一部には「0」の概念はあるようだ。

しかしそれを完全に数字として使って計算したりはしていないらしい。


「これを僕の国では「位取り記数法くらいどりきすうほう」と言って、番号を表す時や算術の場合には大抵これを使います。

特に計算をする時は必ずこちらで表記します。

なぜならば、この記数法の方が計算をするには比較にならないほど早いからです」

「それほどの差が?」

「実際にやってみましょうか?」

「そうですね、では私が計算問題を出すので、シノブさんとオーベル、ドロシーの三人で計算をしてみてください」

「はい」


三人で計算問題をすると、俺の圧勝だった。

はっきり言って、ローマ数字や漢数字で計算するのと、算用数字で計算をするのでは、話にならないのは当然だ。

それは例えば実際に漢字で二十八×三十五などを書いて計算してみればわかる。

計算が得意な日本人でも、まず簡単に計算は出来ない。

算用数字で計算するのが当たり前な俺としては当然の結果だが、三人は相当驚いた様子だ。

そのあまりの速さに驚いたレオニーさんが俺に質問をする。


「なるほど、恐ろしく計算が速いですね?

しかしこれは元々あなたが計算が速いのではないのですか?」

「いいえ、確かに多少私は計算が速い方かもしれませんが、この速さはこの位取り記数法の文字で計算をしているからです」

「確かにこれほど便利な物ならここで使って我々も覚えた方が良さそうですね」


レオニーさんがそう言うとエレノアが賛成する。


「はい、私も最初御主人様にこの計算法を聞いた時は驚きましたが、お蔭様で今では御主人様並みに計算が速く出来るようになりました」

「なるほど」


レオニー所長が納得していると、オーベル副所長がさらに話を進める。


「うん、それにこれは所長の例の試練にもピッタリだと思うのさ」

「え?試練?何ですか?それ?」


何の事だかわからない俺がオーベル副所長に尋ねる。


「ああ、ここ第三無料診療所は基本的にメディシナー家の者が所長を務める事が多い。

そしてここは試験的な事をする場としても認められているので、ここの所長になった者は何か医療の進歩になる事を発明したり、開発する事を求められるんだ。

それは自分で開発するのでも、誰かにさせるのでも良い。

その点これはピッタリなのさ。

直接的に医療とは関係が無いが、医療の発展には貢献が大きいし、これを使えば医療の場が変わる可能性も大きい。

しかもシノブ君が説明した通りに医療の分野以外にも応用が利くというすぐれ物だ。

これを君が開発して、うちの所長が承認して第三の売り物として世に出せば、各方面が万々歳ってわけさ」

「なるほど」


中々にオーベル副所長も強かだ。

確かにそれなら俺も満足、所長も満足、患者たちも満足で、全てが喜べるかも知れない。


「わかりました、確かにこの数の方法にしても、そのジャベックにしても画期的な方法なようです。

この無料診療所はそういった試験的な物を試してみるのも、存在意義のひとつなのですから、やってみましょう」

「本当ですか?」

「ええ、早速明日に空いている職員から研修をさせて、あさってから実際に使用してみましょう。

御二人にはその講師をしていただきます」

「承知いたしました」


こうして俺の考案した行列用ジャベックと算用数字は採用される事となった。


 2日後、実際に行列ジャベックを使い始めて事態は一変した。

流石に初日と二日目は多少の混乱があったが、三日目ともなると、混乱は少なくなり、1週間もすると、職員は全てこの方式になれて、患者の方も常連はなれてきた様子だ。


2週間もすると、レオニー所長が再び俺とエレノアを呼んで、話をされた。


「これは確かに画期的方法だったようです。

おかげで行列の混乱もかなり軽減されましたし、暇潰しにやって来る患者の淘汰も出来てきました。

私はこれを全メディシナーで採用するために上の方の会議に提出しようと思います」

「全メディシナーで採用を?」

「ええ、これほど便利な物と判れば当然だと思いますよ」

「はい、ありがとうございます」


こうして俺の考えた行列整理ジャベックは「ホウジョウ式行列整理ジャベック」として広まって行くのだった。



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