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おねショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!  作者: 井伊 澄洲
おねショタ好きな俺が転生したらエロフに騙された!
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0070 治療訓練とルーベンさん

 次の日から俺とエレノアは宿から無料診療所へと通い、治療をし始める。

エレノアが説明したとおり、毎日患者がひっきりなしにやってきて、まさに医療の修行にはもってこいだ。

怪我の治療に普通の風邪、解毒に麻痺解除と様々な患者がやってくる。

そんな患者に治療魔法をかけて、毎日が治療魔法の修行だ。


しかし中には変な患者もやってくる。

特に無料だからと言って、ただの暇つぶしにやってくる人間が一番困るかもしれない。

俺もそんな患者に捕まった事が何回もある。


「だからね、昨日はその隣の奥さんと帝都に旅行に行く話をしていてね・・・」

「申し訳ないですが、関係ない話はやめてください。

どこが悪いのですか?」

「あら、大丈夫よ?

ちょっと熱っぽかっただけで、ここで待っている間に治ったから・・・」

「では帰ってください。

ここは話をする場所ではなく治療をする場所なので」

「あら、大丈夫よ?私は気にしないから!」

「こちらが気にするんです」

「でも私は話したいのよ」

「これ以上関係ない事を話すなら強制的に出て行っていただきますよ?」

「ダメかしら?」

「ダメです」


こんな感じだ。

俺がそこまで言って、ようやくこの患者?は部屋から出て行く。

はっきり言って、治療魔法の訓練より、他の精神力の耐久訓練になるのではないだろうか?と思ったりもする。

もっともその点は診療所も心得ていて、しつこく居座る患者は強制的に警備員が外へ排除する事になっている。

そうでもしなければ、しつこい患者は一日中でも居続けることだろう。

しかし、病気や怪我をした人たちを無料で診察するという事自体は良い事なのだが、こういった暇潰しに来る人たちは何とかならないだろうか?

それにこの雑然とした並び方も何とかならないだろうか?

整理券などの概念が無い世界なので、順番を待つ方法は純粋に並ぶだけだ。

正直、病気の人がズラッと長い列を作っているのも凄い。

しかも一人で来ている場合は、トイレに行ったりすると順番を取られてしまうので、それも大変だ。

こっちも何とかならないだろうか?


俺がそんな事を考えながら、ふと隣を見ると、エレノアもおかしな患者の一人を偶然診察する事になってしまっていた。

俺が隣で聞いていると、その若い男の患者が変な要求をエレノアにしつこくしていた。


「だからよ~、そのピーなんたらとやらで、パパッと治して欲しいんだよ。

そのためにわざわざ遠くからこんな所まで来たんだからさ~」

「ピーなんたら?」

「そうそう、何かそれをやると、どんな病気でもパッと治せるって話を聞いたんだ。

すっげー特別な魔法で、それをやってもらったって言うだけで、自慢できるらしいからさ~」

「ひょっとしてPTMの事でしょうか?」

「あ~多分それ、それってどんな病気でも治せる奴でしょ?」

「確かにそうですが、ここでPTMの処置はしておりません」

「え~?何でよ?メディシナーに来ればやってもらえるって聞いたぜ?」

「確かにメディシナーで、その治療はしていますが、ここではしていないのです」

「え~?メディシナーならどこでもしているんじゃないの?それ?」

「それはメディシナーでも特殊な治療になりますので、まずはここではなく、一般治療院に行って、診療してもらってください」

「いいじゃんかよ?ここでパパッと、そのピーなんたらをやってくれよ?」

「出来ないものは出来ないのです。お引取りください」

「なんだよ~、いいじゃないか?」

「受付に行けば、PTMの受診の仕方を説明してもらえるはずですから、後はそちらで聞いてください」

「そんな面倒な事しなくていいからさ~」

「次の患者さんの迷惑になりますからお引取りください。

これ以上騒ぐなら強制的に出ていただく事になりますよ?」

「ちぇっ!わかったよ!ケチ!」


こんな具合だ。


しかし、様々な患者を診終わって、昼飯時になると、それも一旦解放される。

俺は昼飯の時に、ここで仲良くなった老人の魔法治療士と、そういった患者の話をしていた。

老魔法治療士はルーベンと言って、この診療所の主のような人らしい。


「いや、今日も参りましたよ。

暇つぶしに来る患者は来るし、ピーティエムとか言う治療をしろ!とか言って来る患者は来るし・・・」

「ははは・・・PTM希望の患者か、たまに来るよ。

もっとも小さい頃からメディシナーに住んでいる人間は事情を知っているから言ってこないな。

大抵はよそから治療をしに来た連中だがな」

「へえ、そうなんですか?」

「ああ、何も知らん連中が、ここに来さえすれば、どんな治療でも受けられると勘違いして来るのさ。

あれをやってくれ、これをやってくれとね。

PTMなんて大呪文をこんな所でやるわきゃないだろうに、それもわからないんだからな。

いくら無料診療所だって限度ってもんがあらぁね。

それがわからん連中がたくさんいて騒ぐのさ。

昔から変わらんね」


どうやらPTMというのは、かなり特殊な治療呪文の事らしい。

今度エレノアに詳しく聞いてみるかな?

しかし、この人はここに勤めて相当長いようだ。


「そういえば、ルーベンさんは、ここに何年位勤めているんですか?」

「そうさな・・・かれこれ百年以上になるかな?」

「百年以上?」

「ああ、俺が四十才位の頃からだから、だいたいそんなもんだ。

おかげでここじゃ一番の古株さ。正規非正規を問わずにな」


すると、この人の年齢は百四十歳以上ってことか?

いくら二百歳まで生きるこの世界でも、年は取っている方だな。


「他の場所に勤めようとは思わなかったんですか?」

「そうさな・・・確かにここの給料は安いが、ここはベッドも食事も風呂もついている。

一人モンが暮らすには十分だ。

ここ以外なら給料は多少高いかも知れんが、食事も宿代も全部自分もちだ。

ましてや風呂までついている宿なんぞ、宿代がとんでもない金額になる。

それを考えれば、ここの方が遥かに待遇が良い。

それに俺はたかだか七級治療魔士だ。

正直ここ以外じゃ大した仕事はないだろう。

だが、ここでは期間職員として長年勤めているおかげで、六級近い給料を貰っている。

小遣いとしちゃ月に7500ザイも貰えれば十分さ。

それに病気になれば優先的に治してもらえるしな。

おかげでこの年になっても、この通り元気って訳だ」


そう言いながら目の前のソーセージをフォークでブスリとさして食べる。

確かに衣食住が保証されているならば、月に自分の好きに出来る金が大銀貨七枚分もあれば十分かも知れない。

令和の日本で言えば月の小遣いが7万5千円位になる訳だからね。

それだけあれば、博打でもするならともかく、質素に暮らしている人間には十分だろう。


「確かにそうかも知れませんね」

「もっとも逆に言えば、すぐに病気を治されて、こき使われるって訳だ」

「ははは・・・それは確かに」

「俺みたいなジジイなんぞより、お前さんたちこそ、これからどうするんだい?

三級の魔法治療士様なら、こんなとこで燻っている場合じゃないぜ?」

「ええ、ここである程度、実践的な修行を積んだら、次はどうしようかと考えているんですが・・・」


俺には特にまだ先の具体的な計画はない。

おそらくエレノアは次にどういう事をするのか考えてはいるのだろうが、今後はそれ次第だ。


「でもルーベンさんだって、がんばれば、もうちょっと級を上げて、稼ぐ事も出来るんじゃないですか?」

「いやあ、俺は七級辺りが限界さ」


そう言ってルーベンさんは笑うが、俺が知っている限りでも、この人は治療魔法の筋は、本人が言うほど悪くは無い。

四級は無理かも知れないが、おそらく五級位は取れるはずだし、六級は間違いなく取れるはずだ。

ふと、俺はルーベンさんを鑑定してみた。


平人 男性 レベル28 年齢143

才能 知力53、魔力12、魔法感覚41、体力18、力17、敏捷性15、格闘感覚13


やはり、少々魔力量は心もとないが、魔法感覚はそれほどひどくは無い。

それに知能も高い。

これなら六級は間違いなく覚えられるはずだ。

しかしこの後で俺はルーベンさんの使用可能魔法を見て驚いた。


使用可能魔法 照明 低位火炎 低位冷凍 低位治療 解毒作用 中位治療


何と使用可能魔法の中に、中位治療魔法が入っているのだ!

これは一体どういう事なのか?

俺は鑑定した事は言わずに、さりげなく聞いてみる事にした。


「でも、やっぱり、ルーベンさんなら、もう少し治療魔法を覚えられると思いますよ?

四級は無理かも知れませんが、五級なら何とかなるだろうし、六級は間違いなく取れると思います。

今度どこかで六級の講義を受けてみてはいかがですか?

必ず中位治療魔法までは使えるようになると思いますよ?」

「・・・そうか?お前さんはそう思うか?」

「ええ、間違いないと思います」

「私もそう思います」


俺とエレノアがそう太鼓判を押すと、ルーベンさんは周囲に誰もいないのを確認すると、声を低くして話しだした。


「・・・そこまで言われたのはお前たちが初めてだ。

ん~そうだな・・・そこまで言うなら、お前さんたちにだけ話すが、実はな、俺は中位治療魔法を使えるんだ」


ルーベンさんは中位治療魔法を使える事をついに話し出すが、俺もそれに合わせて驚いたように話す。


「え?そうなんですか?」

「ああ、だが余程の事が無い限り、それを言ったり、実際に使ったりする事は無い。

六級検定も受けてないから俺は七級のままだ、お前さんも誰にも言わないでおいてくれ」

「もちろん、言うなと頼まれれば、誰にも言いませんが、どうしてですか?

中位治療魔法を使えるなら検定を受ければ六級になれて、それをここに申告すれば、給料もあがるでしょうに?」


俺が質問をすると、ルーベンさんは困ったように説明を始める。


「それはなあ・・・俺は中位治療魔法を使えるけど、実際には使えないからなんだ」

「使えるけど、使えない?どういう意味です?」

「いや、確かに俺は中位治療魔法を使う事は出来るんだが、俺は魔力量が少ない。

500そこそこなんだ。

だからせいぜい中位治療魔法を2回も使ったら、その日はもうほとんど何も出来ない。

それじゃ逆に迷惑になる。

だから使わないんだ」

「え?逆に迷惑?一体どういう事です?」


俺はルーベンさんが言っている事の意味が分からずに、もう一度聞いた。


「つまりなあ・・・ここは無料診療所でバンバン人が来るだろう?

それこそ朝から晩までひっきりなしだ。

俺たち魔法治療士も一日に何回も回復や解毒をする必要がある。

そんな場所で、一日に二回しか使えない呪文を使ったらどうなる?

二回使っちまったら、もう何も治療が出来なくなるんだ。

後はそれこそ診療所の掃除でもしているしかない。

それじゃ診療所も困るだろう?」

「あ・・・!」


それは確かに盲点だった。

ほんの初期の頃しか魔力量不足に困った事がない俺にとっては思いつかない事だった。

低位回復呪文は魔力を20ポイント消費する程度だが、中位治療魔法となると、魔力を250も消耗する。

確かに余程の大治療呪文ならともかく、中程度の治療呪文を二回使っただけで、一日が終わってしまう魔法治療士では、下手をしたらお払い箱になってしまうかも知れない。

それだったら確かに周囲には黙っていた方がいいだろう。

俺はルーベンさんが考えている事がやっとわかった。


「でも、どこかでレベル上げの修行をすれば、最大魔力量も上がるし、そうすれば使っても大丈夫になるのでは?」


俺の提案にルーベンさんも腕を組みながら答える。


「それもなあ・・・考えたんだよ。

だけどお前さんも知っているかも知れないけど、このメディシナーの周辺には、これといった魔物がいる場所も迷宮もないんだ。

例外は南西のコカトリスの森だが、あんな物を相手にするほど俺のレベルは高くない。

あんな魔物を相手しに行ったらあっという間に石ころにされて終わりだ。

それ以外は一番近い迷宮でも120カルメルは離れている。

俺は航空魔法は使えないから、そんな遠い場所に行って帰って来るには時間が掛かるから簡単に行く事は出来ない。

それに仮に行く事が出来たって、こんなジジイと一緒に迷宮に入ってくれる酔狂な奴はまずいない。

もちろん、一人で迷宮に入ったら死ぬのが落ちだしな。

当然、仲間や奴隷を金で雇うほどの余裕もない。

その上、中位治療魔法を問題なく使える位の魔力量にするには、おそらくレベルを50以上まで上げなきゃならないだろう。

それを実際にやるのはかなり時間もかかるだろうし、ちょいと無理だな」

「なるほど・・・」


確かにそれは難題そうだ・・・しかし、待てよ?

今の問題は俺が一緒にいれば、全て解消できるのではないだろうか?

俺ならば航空魔法でルーベンさんを一緒に迷宮まで連れて、日帰りで行けるし、迷宮に一緒に入るのにも問題はない。

多少強い魔物がいても当然大丈夫だし、一日でもルーベンさんのレベルをかなり上げる事は可能だろう。

もちろんエレノアが協力してくれれば、この上ない。

俺はルーベンさんに聞いてみた。


「ルーベンさん、今度の自由日は時間が空いてますか?」

「ん?次の自由日は勤務日ではないし、特にこれと言って、用事はないが?」

「オフィーリア、付き合ってもらってもいい?」


俺は横にいたエレノアに聞く。


「ええ、もちろん、私は構いませんよ」

「じゃあ、ルーベンさん、今度の自由日に、僕たちと一緒に迷宮にレベル上げに行きましょうよ」

「ええ?お前さんたちとかい?」

「ええ、一緒に迷宮に入る仲間が入ればいいんでしょう?」

「そりゃまあ、そうだが・・・迷宮まではどう行くんだ?」

「僕とオフィーリアは航空輸送魔法が使えますから、ルーベンさんを連れて行きますよ。

 迷宮まで30分もかかりません」

「そりゃありがたい事だが、お前さんたちはそれでいいのかい?」

「ええ、別に大丈夫です。

僕たちもレベルを上げておいた方が良いですからね。

どこかにレベルを上げに行こうかと考えていた所ですから、ちょうど良いです」


ルーベンさんのレベル上げのために行くと思われると、気遣いをさせてしまうだろうから、ここは俺たちもちょうどレベル上げをしに行く予定だった事にしておこう。


「じゃあ、ちょいと頼んでみるかな」

「はい、わかりました」


こうして次の自由日に俺とエレノアはルーベンさんと迷宮探索に出かける事になったのだった。


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