0068 第三無料診療所の面接
俺たちは第三無料診療所へ着くと、受付に向かった。
受付ではお姉さんがにこやかに話しかけてくる。
「こんにちは、今日はどうされましたか?」
「魔法治療士募集の紙を見て来たのですが」
「魔法治療士希望の方ですね?
では、こちらの用紙に必要事項を書いてお待ちください」
「はい」
俺とエレノアが用紙を書き終わった頃に別の人がやってくる。
30代前半くらいに見える、長い髪の黒い美人さんだ。
「魔法治療士御希望の方ですか?」
「はい、そうです」
「では、こちらへいらしてください」
「はい」
案内された部屋に入ると、俺たちを案内した人が話し始める。
「当第三無料診療所へようこそ!
私は診療部長で人事担当の魔道士ステファニー・モリスと申します」
「よろしくお願いします」
「はい、シノブさんとオフィーリアさんですね。
それで魔法治療の等級は・・・え?」
俺たちの用紙を途中まで読んだステファニーさんが固まる。
「あの・・・御二方とも治療魔法が三級相当なのですか?」
「はい、そうです」
俺たちは二人とも魔法治療の等級に三級相当と書いておいた。
三級と言えば、魔法学士相当だ。
おそらく流れの治療魔法使いで三級などという者はまず来ないのだろう。
だから驚かれたに違いない。
そもそも三級の治療魔士自体がほぼ存在しないだろう。
もっともエレノアは魔士ではないし、三級より上だろうけど。
「学士・・・の方なのですか?」
「え・・と、こちらのオフィーリアは魔法学士ですが、私は単なる魔士です」
「魔士?魔士・・・の方が、治療魔法が三級相当なのですか?」
ステファニーさんが驚くのも無理はない。
治療魔法が三級相当で魔士はまず有り得ない。
そこまでの実力があれば、おそらく魔法学校へ行って、正規の魔道士になっているだろう。
だが、俺は実際に魔士なのだ。
嘘をつく訳にもいかない。
「はい、何か問題があるのですか?」
「え?いいえ、何も問題はありませんが、あの、少々お待ちください」
そう言うと、ステファニーさんは慌てて部屋を出て行った。
「どうしたんだろう?」
「おそらく我々の治療水準が高すぎたので、上の判断を仰ぎに行ったのでしょう。
無料診療所の治療魔士で三級相当はまずいませんし、応募する者もいないでしょうから」
「え?じゃあ、もっと水準を下げて書いておけば良かったのかな?」
「しかし御主人様の修行のためには石化解除の練習もしなければならないため、これ以上等級を落とすわけには参りません」
「それもそうか・・・」
石化解除の等級は三級だ。
それを実践するには三級と書いておかなければ、おかしな事になる。
俺たちがそんな会話をしていると、先ほどのステファニーさんが、長身の若い男性を連れて戻ってくる。
何かのほほんとした感じだが、結構な美男子で、格好は良い。
「ですから!副所長が確認をしてください。
私では判断しかねます」
「わかったよ」
その男性を連れてきたステファニーさんが俺たちに、再び話をし始める。
「あ、どうもお待たせいたしました」
「どうも、ここの副所長でオーベル・ライトンと申します」
「初めまして、シノブ・ホウジョウです。
よろしくお願いいたします」
「何でも三級相当の治療士魔士だとか?」
「はい、そうです」
「実際にどこかで治療士として勤められた事は?」
副所長の質問にエレノアが答える。
「私は何箇所かで魔法治療士をした事がございますが、こちらの御主人様は初めてでございます」
「なるほど、さて、どうするかな・・・俺が決めちゃってもいいんだけど・・・
所長は今いたっけ?」
「はい、今日はずっといらっしゃるはずです」
「じゃあ、ちょっと呼んできてくれないかな?
せっかく珍しい人たちが来たんだから所長自ら決めてもらいましょ。
この人たちの説明をして、俺が呼んでるって言って、ここにきてもらって」
「承知しました」
しばらくすると、20代後半ほどの若い女性が二人やってくる。
オーベルさんが後ろの方の眼鏡をかけた赤髪の女性に声をかける。
「おや、ドロシーちゃんも来たのかい?」
「三級相当の魔士なんて珍しいですからね。
私も後学のために御会いしておきたいと、そちらの少年がそうなのですか?」
「そうみたいだよ」
二人がそう話していると、先頭にいたキリッとした感じの金髪美人が俺たちに挨拶をする。
髪は後ろでまとめてポニーテールにしていて精悍な雰囲気だ。
「こんにちは、私がこの第三無料診療所所長のレオニー・メディシナーと申します。
こちらは副所長のドロシー・パターソンです」
この人がここの所長らしい。
先ほどの男の副所長といい、この人と一緒にいる女性の副所長といい、三人とも若い。
地球基準で言えば、20代に見える。
よほど優秀なのか、それともここが無料診療所なので、若いのが派遣されているのだろうか?
「シノブ・ホウジョウと申します。よろしくお願いいたします」
「さっそくですが、お二人ともこちらで働きたいとの事ですが、なぜうちを?」
「はい、こちらが伝統のある診療所だと伺って、是非そのような場所で修行をしたいと・・」
「伝統あるだってさ・・はは」
「しっ!黙りなさい!オーベル!」
ドロシー副所長がオーベル副所長を叱り飛ばす横で、レオニー所長が俺たちの履歴を読む。
「なるほど・・・主従関係で、シノブさんが主人で、オフィーリアさんが奴隷と・・・
臨時魔法治療士が希望で、治療水準は三級相当・・・宿は取ってあるので、寮はいらないが、食事はつけて、風呂は使わせて欲しいと・・・
特記事項として、必ず二人一組で診療に当たらせて欲しい、診療時間は守って欲しい、顔やそちらの事情の詮索はやめて欲しい・・・と?」
「はい、その通りです」
宿は取ってあるが、素泊まりなので、食事はつけてもらった方がいいし、エレノアは俺の治療魔法の面倒をみる目的があるので、二人がバラバラでは困る。
そのためには診療時間も決めておいて貰った方が良いだろう。
そしてエレノアが顔を隠しておきたいのと、俺も過去を色々と詮索されるのは困るので、その点は希望として書いておいた。
エレノアも言っていたが、こういった無料診療所は、人手不足なので、応募者の過去は問わないそうなので、それでも大丈夫だろう。
「しかし、三級相当と言えば魔法学士級です。
この診療所でも治療魔法三級を持っているのは、ここにいる所長の私と、この副所長の二人だけです。
実はつい先日まで石化解除が出来る魔道士がいたのですが、生憎辞めてしまいました。
そういった意味であなた方の応募は非常にありがたいのです。
しかし、疑うわけではありませんが、本当に石化解除が出来るのですか?」
「はい、御疑いはごもっともですが、この場で石化解除を実演してもよろしいです」
そのエレノアの言葉に、レオニー所長が横にいるドロシー副所長に尋ねる。
「ドロシー、今日は石化解除の予定は?」
「はい、今日は珍しく三件も入っていますね」
「三件も?多いですね?」
どうやらここでも石化解除の患者はそうはいないようだ。
まあ、確かに普通に生活をしていれば、石化なんて目には会わないからね。
「ええ、今日は第一と第二の所長が出張なので、その分がうちに割り振られたようです」
「なるほど、では、ちょうど良いです。
この二人にやっていただきましょう。
よろしいですか?」
「はい、別に構いません」
「では治療室に移動しましょう」
俺とエレノアは所長たち四人とともに、治療室に移動する。




