0597 義務ミッションの免除
俺が少々不思議がっていると、グレゴールさんが説明をしてくれる。
「ええ、貴族で領主様ともなれば色々と忙しく、義務ミッションを出来ない場合も多々あるでしょうからね?
それを考慮して組合としても爵位を持った方の場合は、義務ミッションを免除しているのです。
つまりシノブさんはアムダール帝国でホウジョウ子爵として爵位を賜りましたので、その時点で義務ミッションは免除という事になったのです。
しかしそれではせっかく2年間の免除が意味がなくなってしまいますからね?
そこで組合の中でも話し合いにして、特例としてアンジュさんも遡及して義務ミッションを免除としたのです。
これで青き薔薇の面々は全員が義務ミッション免除となります。
しかし逆に爵位を持っている組合員の方々には「要請ミッション」という物が発生するのです」
なるほど、俺たちの義務ミッション免除の意味がなくなる代わりに、特例でアンジュも免除してくれたとはありがたい!
そういえばあの時、他の組合員たちは2年間の義務ミッション免除に喜んでいたが、男爵仮面とジョルジュは別にその事を喜んでいる様子はなかった。
元々あの二人は爵位持ちだから義務ミッションはなかったのか!
しかし「要請ミッション」というのは何だろうか?
「要請ミッションですか?」
「はい、「要請ミッション」とは特に回数は決まっておらず、組合が貴族の組合員相手にその人や戦団にしかできないと考慮した結果、申し込まれるミッションです。
何しろ爵位持ちの貴族の場合、他の戦団などにはない、特殊な能力や資格を持っている方が所属している場合が多いですからね。
シノブさんの所の青き薔薇など特にです。
ですから今回のこれは「義務ミッション」ではなく、組合から青き薔薇への「要請ミッション」なのです」
なるほど・・・
こちらもアンジュに関して甘くしてもらっていた負い目があるのだ。
そう言われては引き受けるしかないだろう。
まずは話を聞いてみるか。
「わかりました。とりあえず話を伺いましょう。
三つあると伺いましたが?」
「まず一つ目は前回と同じく昇降機の設置ですな。
これがもっとも緊急な問題です」
「昇降機?今度はどこですか?」
「ロナバール南西の迷宮です。
南西の迷宮の1階から10階に新しく二つ昇降機を作っていただいて、さらに10階から20階までの物も二つ設置していただきたいのですよ。
合計四基ですな。
それとそれに伴う1階の休憩広場の拡張ですね」
「なるほど、それは前回と同じく、大事業ですね?」
「ええ、何しろ3年前にシノブさんたちが北東の迷宮に最新の昇降機を設置した結果、大好評でしてね。
是非、南西の迷宮へも同じ処置を!と組合員からの希望が殺到して困ったほどです。
そこで魔法協会の方とも検討をしましてね。
実を言えば、シノブさんたちが卒業して、活動を再会するのをお待ちしていたのですよ」
「なるほど」
3年間も俺たちを待ちわびていた訳だ?
それは確かにわかる話だ。
あの作業は俺たち以外には難しいだろうしね?
これは応えない訳にいかないな?
「それで今回もお願いしたい訳です。
ちなみに要請ミッションは義務ミッション同様、組合からの報奨金などはありませんが、その代わり、ミッション終了時に組合の方から各国に要請ミッション完了の報告を正式にさせていただいております。
貴族様方には報奨金よりも、その方が良いという方も多いのでしてね。
そして大きな要請ミッションや、公共性が大きい要請ミッションの場合は、陞爵や勲章などが授与される場合などが多いようです。
今回の昇降機設置も、大規模で非常に公共性が高い物なので、勲章授与は間違いのない所でしょう。
そして仮にそう言った事がなくとも、要請ミッションの内容は公式に記録される訳ですからそれを行った貴族の知名度が上がるのは間違いありません。
言わば要請ミッションをする代わりに名誉を受け取ると言った所でしょうか。
ちなみにあくまでこれは組合からの「要請」であって「義務」ではないのですが、貴族の皆様の場合、体面もあってほぼ引き受けてくださいます」
「なるほど」
確かに御貴族様にとっては金よりも勲章や名誉の方が良いという人間は多いだろう。
俺としてはどちらでも良いのだが、公共性が高い仕事をするというのは貴族として当然な事だろう。
「ええ、そして2つ目は例の囮捜査ですね。
これに関してはこの3年間、こちらとしても盗賊を相手に色々とやってはいたのですが、どうもシノブさんたちのようにうまくいきませんのでね。
今回は囮捜査で盗賊を捕まえる事自体もさる事ながら、その方法を詳しく伝授していただきたいのですよ。
出来ればうちの他の組合員でも出来る方法をですな。
これは魔法協会の方からも是非にと要請が来ております」
「なるほど」
これも状況はわかる。
何しろ俺とミルキィは短期間で驚くほどの盗賊を捕獲したからね。
しかもその方法を詳しくは話していなかったから、わからなかったのだろう。
そもそもあれは見かけが肝心だから、組合の強面がやっては成果は期待できないだろう。
かと言って、俺やミルキィのような見た目は資産家のか弱い少年少女を演技可能で、なおかつ1級以上の実力を持つ者でなければ、あれはやりにくい。
組合で失敗するのも当然だろう。
「・・しかし、捕縛の方はともかく、それを伝授するのは少々難しいかも知れません」
「でしょうな、実は我々もそれは気づいておりました。
何しろこの役割は「見た目」と「実力」と「演技力」の三拍子が揃ってないと難しいでしょうからな。
正直、組合員の中でも、それが全て揃っている者はそうそうおりませんからなぁ。
たまたまシノブさんたちはそれを持ち合わせておりましたが、これは場合によっては専門の組合員を育てなければならないでしょう」
やはりグレゴールさんも俺たちの特殊性は感づいているようだ。
だから「他の組合員」でも可能な方法をと条件付けたのだろう。
しかしそれは少々厄介だ。
「ええ、しかしそれに関しては何らかの方法を考えてみましょう」
「よろしくお願いします」
「それで三つ目は?」
「これは前の二つほど急ぎではないのですが、初心者の装備の改良と、中級者の装備の開発です」
「え?それは一体?」
「シノブさんもご存知かも知れませんが、うちでは初心者用に装備の揃えを開発してあって、それを初心者に薦めております」
「ええ、存じております」
もちろん俺は買った事はないが、組合の売り場でそれを売っているのは知っている。
中々評判も良いらしい。
確か100番も最初に会った時はその装備だったはずだ。
それにギルバートたちの初期装備もそうだ。
「それをどこか改良する余地がないか検討していただきたいのですよ。
何しろここ最近、また組合員希望者が増えて来たのは良いのですが、以前にも増して、何もわからずに迷宮へ入り、命を落とす方が増えておりますのでね。
そこで死亡率を下げるためにも何か装備に改良部分がないか、検討をしていただきたいのですよ」
「なるほど」
これまた、早いうちにやっておきたいのもわかる。
「そしてそれと関連して中級者用の装備の開発です。
以前から中級者にも見本になるような物を!と言う声も多いのでしてね。
ま、実際には中級者というよりも、慣れてきた初級者、五級か六級辺り向けの物という事ですね。
四級以上ともなれば、さすがにそういった物は自分で考えるようになるでしょうから。
またそうでなければならないですからね」
「なるほど、仕事の内容はわかりました。
それでどれからやりましょうか?」
「そうですね、やはり一番先にして欲しいのは、昇降機の件でしょうかね?
何しろ3年も待っていた訳ですから」
「わかりました。
しかしまずは大アンジュで種蒔きや春の作業をしてからそのミッションに移りたいと思いますが、それでよろしいですか?」
「ええ、もちろん構いません。
この要請ミッションを終了しましたら、「青き薔薇」の方は、また1年間の間、休止期間にさせていただきますので」
「はい、よろしくお願いします」
「ああ、それともう一つお願いがあるのですが、シノブさんの現在のレベルはいくつですか?」
「はい、463ですが?」
「はは・・・全く凄まじいですな!
まだ20歳にもなっていないのに、そのレベルとは・・・
実は出来ればシノブさんやエレノアさんにはオリハルコン等級になって欲しいのですよ。
実力はすでにそうですし、出来ればそうしていただいた方が、こちらも色々と頼み易いのでね」
「なるほど、エレノア、どうする?」
「ええ、我々も大分人数が増えましたし、何と言っても御主人様は帝国子爵となりました。
これならオリハルコン等級になっても問題はないでしょう」
「わかった、それでは等級試験を受けましょう。
いつ頃が良いですか?
「そうですな・・・他の皆さんもそれぞれ昇級をするのですよね?」
「ええ、そのつもりです」
「では三日後ではいかがでしょうか?
その日ならば私も空いておりますし、次の日も大丈夫ですから。
二日あればシノブさんたちであれば大丈夫でしょう」
「承知しました」
俺はこの要請ミッションを引き受ける事にした。
しかしまずはその前に大アンジュで春の農作業だ!
俺は組合を出た後で、バーゼル商館やジョルジュ、カベーロスさんなどにも挨拶回りに行った。
その後、俺たちはシャルルとポリーナ、エトワールさんたちと別れて大アンジュへと向かった。
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