0588 雲の旅団の扱い
グレゴールさんの説明に俺は笑いながら答えた。
「良かったではないですか?」
「確かにそれはその通りです。
しかし我々はある事に気づいて恐怖したのです」
「え?」
「我々が1年をかけて調査したほどの事を最初からその結果をわかって計画して、それを実行した集団、しかも明らかに数人程度の小さな集団なのに、一伯爵領軍を手玉に取る能力、そのような集団が本当に実在するのであれば放ってはおけません。
しかも全てをラーガン伯爵領とハーベイ村の事として行動し、自分たちの存在は無かったかのように消してしまった集団です。
確かに今回は平和目的でしたから結果として問題はありませんでした。
問題があると言えばラーガン伯爵自身が被害を受けただけで、しかもそれは実情がわかっている者から言えば、自業自得の必然的な結果です。
もちろん領民の被害は皆無とは言えませんでしたが、信じがたいほどのわずかな物で、誤差と言っても良いほどです。
しかしもしこのような卓越した非凡な立案能力と実行力を持った集団が、次はどこかの国を滅ぼすつもりで行動を起こしたら?
もしくはどこかの国同士を戦争させるつもりで行動をしたらどうなるか?
それを考えると我々は恐ろしくなったのです。
さらに言えば、もし各国がその存在を知れば、この集団の奪い合いになるかも知れません。
いえ、おそらくそうなるでしょう」
「あ・・・」
確かにその通りだ。
この計画を立てた時にシルビアが俺がこんな能力を持っている事が知れたら各国の奪い合いになるだろうと言っていたが、グレゴールさんたちもそう考えたようだ。
「ですから我々は現地での調査を打ち切った後も、「雲の旅団」の行方は捜し続けました。
このような集団を放置して置く事は出来なかったからです」
「ええ、私もあちこちの支部と連絡を取り、それらしい集団や戦団がいれば、すぐに組合長に進言して調査に向かわせましたし、受付に来る戦団や組合員たちにそれとなく、「雲の旅団」の噂や話を聞いたらすぐに教えて欲しいと頼んでいました。
でも我々が知っている以上の事を知っている人たちはいませんでした」
「でまかせや誤情報は色々と集まったがな」
そう言ってグレゴールさんは苦笑する。
「しかしまさかその「雲の旅団」の正体が「青き薔薇」だったとは」
「ええ、驚きです。
でも同時に納得もしますね」
「全くだ、しかし念のためにもう一度お伺いしますが、本当にシノブさんたちが「雲の旅団」で間違いはないのですね?」
「はい、間違いありません。
そして私たちが計画的にラーガン伯爵を破滅させるつもりで、最初からそういう計画を私自身が立てて実行しました。
その詳細もお話しましょうか?」
「ええ、お願いします」
俺はミルキィとミルファが奴隷になった経緯から、俺が白狼族の村を心配して訪ねた事、そしてラーガン伯爵とその息子イライジャの存在を知って、ハーベイ村の奴隷たちを取り戻すために戦争までしかけた事、さらに最低でも今後10年間は戦争を起こさせないように軍需物資を根こそぎ奪った事などを全て話した。
俺が全てを話し終えるとグレゴールさんがうなずいて答えた。
「なるほど、確かに今のお話は当方で調べた事と全て辻褄が合います。
しかも実行した本人でなければ知りえない話です。
間違いなくシノブさんたちが「雲の旅団」ですね」
「ええ、まるで今までの問題の答え合わせをしているようでしたわ」
アレクシアさんも納得したようにうなずく。
ここでグレゴールさんはふぅ・・と息をつくと再び話し始めた。
「実は先ほども話したとおり、うちでも「雲の旅団」の行方を継続調査しておりますが、アムダール帝国やアドレイユ王国からも、こちらへ継続的な依頼が出ておりましてね。
もし「雲の旅団」の正体が判明したら直ちに報告をするようにと」
「えっ!」
俺は驚いたがグレゴールさんは笑って話す。
「大丈夫です。
先ほど言ったようにこの部屋での会話は全て無かった事にしますからね。
ですから組合としては公式には「雲の旅団」の正体は不明のままです。
シノブさんたちが自分から世間に話さない限り、私やアレクシアからこの話が漏れる事はありませんから安心してください」
「ありがとうございます」
俺が安心して礼を言うと、グレゴールさんが話を続ける。
「それにこの事件の数ヵ月後にちょっとした事がありましてね。
何とアドレイユ王国の組合支部に「雲の旅団」を名乗る連中が現れたのですよ」
「えっ?」
「当然、即座にその連中は当局に調べ上げられ、結果として「雲の旅団」とは全く無関係だった事が判明しました。
その連中は「雲の旅団」という名がまだ組合に登録されてなかったのを良い事に、それを名乗れば仕事の依頼が殺到するだろうと考えて登録をしただけの連中とわかったので、一応無罪放免としましたがね。
建前としてはそれだけでは罪に問えませんからね。
但し、次に同じ事をしたら組合除名どころか、命の保証はないと脅しておきましたよ。
そしてその話をこちらでも水面下で密かに噂話として広げました。
おかげで現在はその噂が結構広まっているので、「雲の旅団」を登録する無謀な者はおりませんがね」
ひいぃ~~!
名前を登録しようとしたら死刑って・・・!
俺たちが知らない間にそんな恐ろしい事になっていたとは!
なるほど、これが先ほど言っていた、でまかせや誤情報って奴か!
「ですからシノブさんが我々に相談していただいて本当に良かったですよ。
下手にどこかでこの話をしていたら大事になる所でした」
「ええ、シノブさんたちが用心深くて良かったですわ」
「ええ、私としてもこの話はアムダール帝国の子爵になる前の話だったのですが、子爵になってしまった今となっては軽々に話す訳にはいかないと思ってはいました。
少々勘違いされれば、アムダール帝国の貴族がアドレイユ王国を攻めたと思われかねないですからね。
正直これほど大事になっているとは想像もしていませんでしたが」
「ええ、全く賢明でした」
ここで俺は話を元に戻す事にした。
「しかし話は元に戻りますがどうしたら良いですかね?
私としてはハーベイ村に問い合わせが来るのを避けたかったので、最初に話したようにこちらに正体不明で登録が出来ればと思ったのですが・・・」
「そうですな、もちろんシノブさんの名前で「雲の旅団」を登録するのは論外です。
可能な手段としては今までシノブさんと何の関係もなく、それでいて信用が出来る人物に「雲の旅団」として登録してもらえれば何とかなるかも知れませんが、その場合でも特別等級でも3名は必要ですし、その3人は矢面に立つ事になりますから引き受け手などいないでしょうしなあ」
確かにそんな人物が存在する訳がない。
「それ以前に私と何の関係も無いのに、そこまで信用できる人物に心当たりはありませんよ」
「そうでしょうなぁ。
それに正直、組合としても「雲の旅団」の結果報告をして、この話を終わらせたいというのもありますからなぁ・・・」
「ええ、これは難しいですね」
「何か良い方法はないですかねぇ」
「そうですね・・・」
しばらく全員で考えて、グレゴールさんがある提案をしてくる。
「こういうのはいかがでしょう?
少々、いえ、かなり面倒で、おそろしく時間が長くかかりますが、その分効果は十分にあるでしょう」
俺たちはその案を聞いてかなり驚いたが、その計画を修正した結果、そのグレゴールさんの案を実行する事にした。
その計画は確かに驚くほど気長な物ではあったが、もっとも有効で確実だと思ったからだ。
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