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おねショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!  作者: 井伊 澄洲
おねショタ好きな俺が転生したらエロフに騙された!
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0051 エレノアを渇望する者

 誘拐事件以降、エレノアは町を歩く時には常にゴーレムを3体ほど出して警戒させていた。

それのおかげか、もう誘拐されかかる事もないし、例のブローネ団の事もあって、俺たちにちょっかいを出す連中もいなくなっていた。

ところがそれから3日ほど経った頃、町を歩いている俺たちに話しを持ちかけてきた人物がいた。

どこかの執事のような雰囲気の初老の男だ。

その人物は道であった俺に恭しく挨拶をすると話を始めた。


「シノブ・ホウジョウ様でいらっしゃいますか?」

「はい」

「実は私はさるお方の使いで参上いたしました。

わが主人があなた様に御話をしたいと言っておりまして、是非屋敷までお越しいただきたいのですが?」

「どういった御用事ですか?」

「あなた様の所有されている奴隷に関する事です」


俺の所有している奴隷と言えば、エレノアしかいない。

俺はもう一度、その男に尋ねる。


「どういった事ですか?」

「簡単に言えば、その奴隷を売っていただきたいという事です。

その事に関して御話をしたいといっております」


なんですと!

私の大切なエレノア様を売れですと?

もちろん俺にそんな気はさらさらない。

当然そんな話を聞く必要も無い。


「なるほど、御話は伺いました。

 しかし私にはその気は全くございませんので、その御話はなかった事にしてください」

「いえ、主人はですね、金額に関してはいくらでも出すと言っておりまして」

「今申した通り、私にはその気は全くございませんので御引取りください」

「いえ、我が主人は金額以外の点でも色々と都合をつけたいと申しておりまして・・・」


食い下がる男に、俺は深呼吸をすると、はっきりと言った。


「申し訳ありませんでした。

 私の言い方が悪かったので訂正させていただきます。

 私の所有するエレノアは金品や他の条件に限らず、いかなる条件であっても、どなたにも譲る気はございませんので、御引取りください」

「いえ、しかしですね」

「それ以外のお話がないのでしたら、失礼させていただきます」


俺はその男を置いて道を歩き出した。

しかしその男は追いすがるように俺の背中から声をかける。


「お待ちください!

 主人は!グレイモン伯爵は、エレノア殿をあきらめてはいませんぞ!」


その声を聞いて、横でエレノアが呟いていた。


「グレイモン伯爵が、まだ私の事を・・・」


俺には意味がわからなかったが、その日はそれで済んだ。

しかし、その翌日から問題が起こった。



 翌日、起きると朝食を食べている時に宿の主人から話があると言われた。


「朝からすまない、あんた達は上客だし、サーマルさんからもよろしくと頼まれている。

 しかし、突然で申し訳ないが、この宿を出て行ってもらえないだろうか?」

「え?どういう事?」


俺は驚いて尋ねるが、エレノアは落ちついて質問する。


「グレイモン伯爵ですね?」


エレノアの質問に主がうなずいて答える。


「その通りだ。

あいつは手下を通じてあんたたちを追い出せと言ってきた。

一応俺は断ったんだが、さもないと、この宿を潰すと脅してきた」

「なんだって!」


俺は驚いた。

昨日エレノアの話を断ったら、次の日にいきなりこういう手段に訴えてくるとは!

一体グレイモン伯爵とは何者なのだ?


「だからうちとしては心苦しいが、あんたがたには出て行って欲しいんだ」

「そんな・・・」


俺は呆然とするが、エレノアは淡々と返事をする。


「承知しました。

ここに迷惑をかける訳には参りません。出て行きましょう」

「すまない」

「いいえ、しかし、今夜泊まる場所を探すまでは、ここに荷物を置かせていただいて構いませんか?」

「ああ、それ位は大丈夫だ。

正直、俺もあの伯爵には腹を立てている。

宿のためにあんた方に迷惑をかけるが、何か俺の役に立ちそうな事があったら言ってくれ。

せめてもの罪滅ぼしに俺にできる事なら手伝うぜ」

「ありがとうございます、では御主人様、参りましょう」

「行くって?どこへ?」

「この分ではこの周辺の宿には全て同じような事を言っているでしょうし、遠くの宿に変えても結局は同じでしょう。

エレノアに少々当てがございますので」

「そうか、では頼むよ」

「かしこまりました」


エレノアについて行った先はバーゼル奴隷商館だった。

俺たちが中に入るといつものように、主人のアルヌが出迎える。


「これはシノブ様、何かご用事ですか?」


その言葉に俺ではなく、エレノアが答える。


「ええ、少々問題が起きまして、申し訳ないですが、ベルヌさんを呼んでいただけますか?」

「父を?承知しました。お待ちください」


部屋で待っていると、先代主人のベルヌがやってくる。


「これはこれはシノブ様とエレノアさん、今日は私に用事とか?

どうされました?」

「実はグレイモン伯爵がシノブ様に妨害をして来ました」

「伯爵が?・・・そうですか・・・やはりまだあきらめていなかったのですね?」

「そのようです」

「彼は私たちの宿の主人に私たちを追い出すように圧力をかけてきました。

おそらくこの周辺の宿、全てに同じ事をしているでしょう」

「そうですな、あの人ならその程度の事はやりますな」

「あの~、すみません」


ここで会話についていけない俺が質問を挟む。


「何でしょう?」

「そのグレイモン伯爵ですか?

一体どういう人なんですか?

なぜ私に嫌がらせをするのでしょうか?」


俺の質問にベルヌさんが答える。


「グレイモン伯爵はこの町の有力者です。

15年前にエレノアさんがうちの奴隷としてここに来た時に一目見て気に入り、購入を希望しました」

「なるほど」


これだけの美形エルフだ。

それは無理もない。


「しかし、シノブ様も御存知の通り、エレノアさんを購入するには条件があったので、私は彼を断りました。

それでも伯爵はあきらめず、当商館に日参し、エレノアを所望し、彼の示す購入額は日に日に上がり、ついには金貨二千枚にもなりました」


金貨二千枚か、それは確かに相当の高額だ。

俺が支払った額には届かない物の、奴隷一人にそこまで払う人間はそうそういないだろう。

その事だけでもグレイモン伯爵とやらが、相当エレノアに惚れ込んでいたのはわかる。


「エレノアさんも最初は律儀に会って断っておりましたが、ついには会う事すらしなくなり、どうしても会う時にはフードをかぶり、顔を隠すようにさえなりました。

他にもエレノアさんを希望する客は多数いましたが、エレノアさんが首を縦に振らないので、結局はあきらめていきました。

しかし伯爵だけはあきらめなかったのです」


ああ、あのフードはそういう経緯でかぶることになったのか・・・なるほど、納得だ。


「そしてあきらめきれない伯爵は、うち自体にも圧力をかけてきました。

しかしうちもこう見えても一応子爵で、この町ではそれなりに、発言権がございましてね。

それで伯爵もあきらめざるをえなくなって、それ以降はおとなしくなったのですが・・・」


へえ?この奴隷商って、子爵様だったんだ?

それにしては腰が低いな?驚きだ。


「ええ、おかげで私も助かりました」


エレノアが礼を言うとベルヌが笑う。


「なんの、なんの、うちが子爵号をいただいたのも、エレノアさんが私の父を助けていただいたおかげですからな。

わがバーゼル奴隷商館が、この町一番の商館となれたのもあなたのおかげです。

その程度の事はどうという事はないですよ」

「え?エレノアって、この奴隷商館の関係者だったの?」

「ええ、昔少し、御手伝いをした事があります」

「それにしてもアルヌさんやベルヌさんも子爵様だったとは・・・

そうとは知らず、失礼しました」

「いえいえ、私どもは子爵号を持っていると言っても商人ですからな。

お客様第一なのは当然ですからお気になさらないでください。

それにうちの家訓で、貴族になったからと言って、ふんぞり返っている奴はロクな奴がいないというのがございましてね。

私もそれを守っているので、むしろ自分で言うのも何ですが、庶民派な貴族でございますよ」

「その通りです」


父親の言葉に、息子も同意する。

どうやらその家訓はちゃんと続いているようだ。


「はは・・・そうですか」


これは中々気持ちの良い貴族様たちだ。

世の中の貴族が、全てこういった貴族ならば、きっと世界も平和だろうな。


「そういった訳ですから、今まで通りに御贔屓を」

「はい、こちらこそ」


俺が挨拶を返すとエレノアが話を続ける。


「そういった訳で、私たちは泊まる場所がなくなってしまったので、差し当たり、どこか良い場所がないかと御相談に伺ったわけです」


エレノアの言葉にベルヌも納得する。


「なるほど」

「父さん、それならあそこはどうかな?」

「ああ、そうか、あれがあったな、確かにあそこが良かろう。

あそこなら伯爵も手が出しにくかろう」

「どこか良い場所が?」


エレノアの言葉にベルヌさんがうなずいて説明をする。


「ええ、ここから通り三つほど離れた所に、うちで購入した家がありましてね。

建て替えて使おうかと考えていたのですが、まだ手付かずで、今は空き家になっている場所があるのですよ。

建て替えようか、売りに出そうかと考えていたのですが・・・そこが良いのではないかと思いましてね」

「ええ、行く当てもない身ですから、そこで結構です。

家賃はおいくら位になるのでしょう?」

「はっはっは、そんな物は入りませんよ。

その家は土地ごとシノブ様に差し上げましょう」

「えっ?それはちょっと・・・」


さすがに家を土地ごと貰うなんて、とんでもない事だ。

俺が抗議をしようとすると、ベルヌさんが首を横に振って返事をする。


「いえいえ、エレノアさんの金額が驚くほど高値でしたから、エレノアさんの込みの値段だと思ってください。

実は私どももあの時は呆然としていて、そのままの金額を受け取ってしまいましたが、やはりいただきすぎたので、何とかお返しをしようかと思っていた所なので、ちょうど良かったです。

書類も遡って作りましょう。

その家と土地はエレノアさんに付属していた物としてね」


家付き土地つき奴隷という訳か?

まあ、それなら納得かな?

確かに値段が半端じゃなかったし、それぐらいはおまけにつけてもらっても良いだろう。


「そうですか?

私はエレノアの価値はあれでも、まだ低いのではないかと思っていた位ですが、そうしていただけるならありがたいです」

「ははは、大層エレノアさんを気に入ったようですな?

それはうちとしても何よりです。

まあ、これでそこは土地ごと家丸ごとがシノブ様の物となりますので、誰にも文句を言われる筋合いはございません。

それに、そこなら場所柄、伯爵もそう簡単には手が出せないでしょう」

「ありがとうございます」

「いえ、しかしあの人の事ですから、おそらくまた次の手を打って来るでしょう。

それに関しては御注意ください」


ベルヌの助言にエレノアもうなずいて答える。


「はい、それは重々承知しております。

それに関しては私も考えがございます」

「なるほど、しかし、十分お気をつけください。

何かまた問題が起きたらここにいらしてください。

できる限りお力にはなりますぞ」

「はい、ありがとうございました」

「では、アルヌ、御二人をあの家に案内してさしあげなさい」

「はい、父さん」


こうして俺は、突然この町で家を手に入れる事になった。

しかも土地ごとだ。

一体どういう家なのか、ちょっと楽しみだ。


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