0483 ロナバールでの挨拶回り
ロナバールへ帰った俺は、まずは立会人になってくれた人たちに改めて御礼の挨拶に行った。
アルヌさんに、ゼルさん、グレゴールさんにグレイモンだ。
俺はエレノア、豪雷、疾風、影主、飛鷲を連れて、まずはアルヌさんに挨拶に行った。
俺たちがバーゼル奴隷商館へ行くと、そこではアルヌさんと、先代のベルヌさんが出て来て俺たちと話した。
「アルヌさん、今回はわざわざ私のために帝都まで来て立会人になっていただいてありがとうございました」
「いえいえ、ホウジョウ様にはいつも贔屓にしていただいておりますからね。
それに我が家に大恩あるエレノアさんの関係でもありますからね。
この程度、何でもありませんよ」
「はい、どちらにしてもありがとうございました」
「ええ、むしろ私は今回、あのグレイモン伯爵と一緒になった事に驚きましたね。
父も感心しておりましたよ」
その言葉にベルヌさんもうなずいて話す。
「まったくですな!
こう言ってはなんですが、人も変われば変わる物です!」
「ええ、私も彼には今回とても世話になったので、この後で礼に行くつもりです。
実は彼には帝都の屋敷まで世話になったのですよ」
「ほほう?帝都の屋敷まで?」
「ええ、どうも以前断ったテレーゼの謝礼をどうしてもしたいらしいです」
「なるほど!それは納得ですなあ!
何と言っても全ての始まりはそれですからなぁ」
「ええ、そうですね」
アルヌさんも父親の言葉にうなずく。
俺たちはバーゼル奴隷商館を辞去すると、次は魔法協会へ向かった。
「コールドウェル本部長、このたびは、わざわざ帝都まで御足労いただいてありがとうございました」
「何の、我が師と親愛なる弟弟子の事ですからな!
何でもありませんよ!
それにこれで私の弟弟子は子爵で自治領主だと自慢できますからね」
「はは・・・それは帝都でガンダルフさんにも言われましたよ」
「ほう?ガンダルフ賢者にも会って来たのですか?」
そのゼルさんの質問にエレノアが答える。
「ええ、この機会に御主人様や、他の私の弟子たちにガンダルフを紹介しておこうと思いましてね」
「なるほど!確かにそれは後々の事を考えると良い判断ですね?
流石はグリーンリーフ先生です」
「はは・・・でも、おかげで色んな人に宣伝されて大変でしたよ」
「はっはっは・・・そうですな?
あの方は有名どころの関係者は全てあちこちに宣伝しますからな」
「・・・というとコールドウェル本部長も?」
「そうですな、ロナバールに来た時などは頼りにされる事もありますよ」
「なるほど」
やはり利用できる人は誰でも可能な限りパイプを繋げておこうという事か?
いかにもあの人らしい。
「ところでシノブさんの領地の魔法協会の事はどうなってますか?」
「ああ、領府におく魔法協会の事ですか?
それはエレノアに頼もうと思っているのですが・・・」
「いやいや、シノブさんやグリーンリーフ先生は他の事で色々と忙しいでしょう?
ここは一つ私に任せていただけませんか?」
「え?本部長にですか?」
「ええ、位置的にもうちが一番近い支部になるでしょうからね?
大森林領に出来るのが支部にしろ、分所にしろ、場所から考えて、そこを統括する管区支部には間違いなくうちがなるでしょうから、それなら最初から私が色々と関わっていた方が後々便利でしょう?」
「よろしいのですか?ゼル?」
「ええ、もちろんです!
グリーンリーフ先生の御役に立てるのであれば、大喜びでやらせていただきますよ」
ゼルさんの言葉にエレノアが俺に尋ねる。
「ではいかがでしょう?御主人様?
この際、うちの魔法協会の事はゼルに任せるのは?
うちでは土地を用意しておいて、後は任せてはどうでしょうか?」
「え?もちろん僕は構わないけど?
ゼルさんなら気心も知れているし、何と言っても魔法協会の管区支部長なんだから間違いはないでしょう?」
その俺の言葉にゼルさんは嬉しそうにうなずいて話す。
「そうでしょう、そうでしょう!
ここは一つ任せてください。
シノブさん、先生」
「では、よろしくお願いします。
コールドウェル本部長」
「ええ、私からもお願いしますね?ゼル?」
「ええ、お任せください」
こうして俺は自分の領地の魔法協会の事をゼルさんに頼み、次はアースフィア広域総合組合へと向かった。
そこでは受付でアレクシアさんが迎えてくれた。
「あら?お久しぶりです!
シノブさん、いえ、失礼いたしました。
子爵様になられたのですよね?
ホウジョウ子爵様?」
「やめてください。
アレクシアさんにそんな風に呼ばれると体が痒くなりそうです」
「いえ、でも子爵閣下になられたのですから」
「ええ、でも例えばダンドリー男爵とかの事は男爵仮面と呼んでいるのでしょう?」
「そうですが・・・」
「では私もここでは組合員の一人として今までどおり、シノブと呼んでください。
他の人たちはまだしも、少なくともグレゴールさんとアレクシアさんにはそう呼ばれたいです」
「かしこまりました。
それで今日の御用はなんでしょう?シノブさん」
「ええ、その貴族になった挨拶にグレゴールさんに御礼を言いに来たのですが、今日はいらっしゃいますか?」
「ええ、大丈夫、いらっしゃるはずですわ。
どうぞ、こちらへ」
「ありがとうございます」
アレクシアさんに案内された俺たちは組合長室へと向かった。
「やあ、これはホウジョウ子爵!
お帰りになられましたか?」
「はい、でも今アレクシアさんにも言ったのですが、ここでは組合員扱いで今までどおり、シノブと呼んでいただけませんか?
少なくともグレゴールさんとアレクシアさんにはそう呼ばれたいです」
「承知しました。
ところで今日は何の御用で?」
「はい、先日の御礼を言うために伺いました。
その節はわざわざ帝都までありがとうございました」
「いえいえ、とんでもない!
しかしこれで無事にシノブさんも貴族の仲間入りをされて私も安心しました。
少々心配でもありますがね?」
「え?心配とは?」
「まあ、貴族になって領地持ちとなったからには色々と忙しいでしょうからな。
今は学業に専念しているでしょうが、御卒業後は領地の運営に専念されて、組合員を辞めてしまうかと心配でしてね?
何しろ青き薔薇ほど優秀な戦団はそうそうおりませんからな?
辞められてしまっては、うちとしては相当な痛手になります。
それが心配なのですよ」
「ああ、そういう事ですか?
別に貴族になったからって、組合員を辞めなければならないという事はないのでしょう?」
「それはもちろんです。
例えば男爵仮面や伯爵仮面など、貴族の方々でも、うちの組合員の人は何名かはおりますからな」
「それでしたら大丈夫。
確かに忙しくはなって以前のようには仕事は引き受けられないかも知れませんが、学校を卒業しても当分は組合も辞める気はありませんよ」
「それを聞いて安心しました。
御卒業をお待ちしておりますよ。
何と言ってもあと一年ですからね?
貴族になると少々規則も変わりますので、またその時お伝えしますよ」
「はい、ありがとうございます」
こうして組合を後にした俺たちは最後にグレイモン伯爵家へと向かった。
「やあ、グレイモン!
この間はわざわざ帝都まで立会人に来てくれてありがとう!」
「いや、散々世話になっているシノブとエレノアのためだ。
そのような事は何でもない。
それより屋敷の方は見てくれたのかな?」
「うん、それもありがとう!
帝都であんな大きな屋敷を探すのなんて大変だったのに、グレイモンのおかげでとても助かったよ!」
「ええ、本当にありがとうございました」
そう言ってエレノアもグレイモンに頭を下げる。
「うむ、私もようやくシノブとエレノアの役に立つ事が出来てうれしい。
しかし、何だな・・・」
「うん?どうしたのさ?」
「いや、こうしてエレノアに頭を下げてもらう日が来るなど、私には思いもよらなかった。
それで何だか私も戸惑っている」
「ははっ!そうかもね?
確かに以前の僕たちの関係からは想像も出来なかったかもね?」
「うむ、まったくその通りだ。
これもシノブとエレノア、そして男爵仮面の力が大きいな。
特に男爵仮面には実地で色々と教わった。
彼が色々と教えてくれなければ、私もシノブとエレノアにどう対応して良いかわからなかっただろう。
彼は私の第二の人生の師匠と言っても過言はない」
確かに男爵仮面は色々と細かくグレイモンの面倒を見てくれたようだ。
もっともあまりにも色々と面倒見すぎて、グレイモンとテレーゼは伯爵仮面1号と伯爵仮面2号という訳のわからん者にまでなっちゃったけどな!
まあ、でもそのおかげで、ここまで人が変わって温和になったのだから、それも良しとするか?
「そういえば、男爵仮面はどうしているのかな?」
「うむ、私の所にたまに便りがあるのだが、中々難航しているようだ。
しかしシノブが渡したジャベックがずいぶんと役に立っているようで、君に会う事が会ったらそれを伝えて欲しいと書かれていた」
「そっか・・・」
男爵仮面は親友であるナスカさんの仇を探して各地を放浪している。
しかしいまだにその悲願は叶えられないようだ。
「私も君にガルドとラピーダを貸してもらって、ずいぶんとレベルが上がった。
感謝する」
「そうなんだ?」
「ああ、この2年で私もずいぶんとレベルが上がり、今では160にもなった」
「え?160?」
レベル160と言えば組合基準でも白銀を超えている!
この2年でそんなにレベルを上げたのかと俺も驚いた。
「うむ、もちろん君やエレノアには遠く及ばないが、これでも男爵仮面風に言えば、精進しているつもりだ。
かつてはテレーゼに守ってもらっていたが、今では私がテレーゼを守ってやる立場だ」
「そっか・・・」
それを聞いて俺はちょっとグレイモンが羨ましく思った。
俺もエレノアを守りたくて自分のレベルを上げているのだが、それはまだまだ先のようだ。
早く俺もエレノアを守れる立場になりたい。
そう考えるとグレイモンを羨ましく思ったのだ。
「うむ、シノブもあと一年で卒業だな?
それまでには私も精進してレベル200以上を目指そうと思う」
「うん、僕も頑張るよ。
それじゃグレイモン、素敵な屋敷をありがとう!」
「うむ、ではまた会おう!」
「うん、今度は男爵仮面と一緒にうちの食堂で食事をしようよ」
「ああ、それは私も楽しみにしている」
「うん、じゃあね」
俺はグレイモンに改めて礼を言うと伯爵邸を後にした。
そして帝都の屋敷はアルフレッドが手配をしてくれて、ロナバールのうちの屋敷を作ってくれた人たちの何人かを連れて、改装に向かってくれる事となった。
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