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おねショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!  作者: 井伊 澄洲
おねショタ好きな俺が転生したらエロフに騙された!
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0450 禁忌魔法 STM

エレノアの話は続く。


「しかし、彼の考案した簡易PTMは不完全とは言え、非常に優秀な呪文でした。

公平な目で見て、確かにPTMには劣りますが、それでも困難な病気の7割から8割は治療可能だったのです」

「へえ・・・」


劣化版の偽物とはいえ、それなりに役に立ったという訳か?


「ですが当時、メディシナー家当主で三高弟の一人だったアスクレイ・メディシナーはそれを認めませんでした。

ライオネルはPTMの名を汚し、師である父ガレノスを裏切り、メディシナーの名を貶めたとして、激怒して彼を許しませんでした。

彼の妻であり、三高弟の一人のフローレンスもです。

その頃にはまだたくさん残っていたアスクレイ以外のガレノス様の弟子たちも同様です。

そこで彼は全メディシナーを代表して、ライオネル自身とアッタミ聖国に公式文書を送り、説明と謝罪を要求しました」

「まあ、そりゃそうだろうね」


本家PTMを教えている身としては、偽物を教えてPTMだなどと言っている者を許すわけにはいかないし、ましてやそれで自分たちを超えたなどと勘違いをして、こけにしている連中などを大量生産しているとなっては怒って当然だ。

メディシナーの人々が怒るのは当然だと言える。


「しかしライオネルはそれを無視しました」

「え?なんで?」

「彼は自分はもうメディシナーとは関係ない。

どんな治療呪文を考案して、どう扱おうが自分の自由だと返事をして来ました」

「ええ~?それはないでしょう?」


例えよその国に行った身とはいえ、自分がメディシナーで習った物を勝手にいじくりまわして、本家の許しも得ずに好き勝手するとは、いくら何でも通じないだろう。

俺の言葉にエレノアもうなづいて話を続ける。


「私はライオネルがこれを不完全なPTMとして認め、今後改めるのであれば、それも良いのではないかと考えましたが、ライオネルはそれを拒否し、アスクレイも決して許しませんでした。

アスクレイはその呪文を「劣悪治療魔法」と命名し、それを使う者はメディシナーに入国する事は許さないし、それをPTMと認める国とは国交を断絶するとまで言いました」

「まあ、気持ちはわかるね・・・」

「ライオネルの方も以前から確執のあったアスクレイの言う事を聞く気もなく、あくまで自分の方が正しく、不完全なPTMを単にPTMと称し、本物のPTMを上位PTMと位置づけてアスクレイと争う姿勢を見せました」

「え?何で?

そもそもその不完全なPTMは劣化版で偽物なんでしょ?

それをPTMと言うのはいくらなんでもおかしいんじゃないの?」

「はい、私たちもそれを指摘して改めるように言いましたが、ライオネルは決して曲げませんでした」

「へんなの?」

「どうやらライオネルとアスクレイの確執は第三者である我々の想像を超えていたようです。

一説にはライオネルがフローレンスに求婚したが、拒否された恨みという話も噂されていました。

また私が見た限りでは、ライオネルとアスクレイの魔法治療士としての腕はほぼ互角でしたが、ライオネルは自分の方がアスクレイよりも優れた魔法治療士であり、それが世間で五分と思われているのは、単にアスクレイがガレノス様の息子であるのに過ぎないからだと、私も含めた周囲に洩らしておりました。

そして二人の仲は険悪となり、このままでは収拾がつかない事態に発展すると思われました」

「そりゃねぇ・・・」


どちらも引かないのではどうしようもない。

しかし俺がエレノアの話を聞いた限りでは、明らかにライオネルとやらの方がおかしい。

引くべきなのはどう考えてもそちらの方だろう。


「そのために魔法治療界はまっぷたつに割れて、危機が訪れる所でした。

しかしライオネルの治療魔法を検証した結果、ライオネルの主張はおかしいと判断した魔法協会とアムダール帝国がメディシナー側を支持しました。

その結果、圧倒的にメディシナーが有利になり、さらにその後に事態は急変して、意外な事であっさりと決着がついたのです」

「どうしたの?」

「ライオネルが病気になったのです。

それもPTM以外では決して治らない類の難病に・・・」

「ああ・・・」


それは完全に話が詰んだな・・・


「PTMは肉体的な病気や怪我は遺伝病以外は全て治せるはずなので、弟子たちは教わったPTMを師であるライオネルに使いましたが、彼の病気は治りませんでした。

そこで彼の弟子たちもようやく自分たちが教わった物はPTMではない事に気づきました。

どうもそれまでもライオネルはPTMでしか治らない病気の場合は、自分でPTMを患者に対して行っていたようです。

なまじライオネルの考案した劣化治療魔法は能力が高かったために、そんな例は滅多にないですからね。

ですから弟子たちも自分が習った物をPTMだと信じていたのでしょう。

しかしこうなればライオネルに選択の道は2つしかありませんでした。

自分が間違っていた事を認め、メディシナーでPTMを受けて生きながらえるか?

それともあくまで自分の正しさを主張して死を受け入れるかです。

しかし彼は自分の教えている物はPTMだと称しているのに、弟子がその呪文を使って自分の病気を治せなかったのですから、自分の死後それが暴かれるのは明白です。

そうなれば彼の名声は地に落ちるでしょう。

それまでの名声を捨てて生きながらえるか?それとも自分の死後、その名声が落ちるのを覚悟するか?どちらにしろ彼の選択肢はもはやなかったのです。

そして彼は生きる事を選びました」


単純に自分が死ぬだけでも厄介なのに、それまで自分が築き上げてきた名声まで地に落ちるのでは本人としてもたまった物ではないだろう。

生き恥を晒すか?死に恥を晒すか?どちらにしてもそれまでの名声は地に落ちるのだ。

ならば延命して、その後の人生でわずかでも汚名を返上するために、生き延びるのを選んだのは当然と言える。

しかし自業自得とは言え、この選択は彼にとっても過酷だったろう。


「でもそれじゃアスクレイさんは相当厳しい条件をつけたでしょう?」

「はい、その通りです。

アスクレイはまずライオネルに自分が教えていた物はPTMではなかった事、本物のPTMは別にある事を公表するように求めました。

そしてウソを教えていた事を全世界に対して詫びるように求めました。

これはメディシナーとしては最低限の線です」

「そりゃそうだろうねぇ」

「しかしそれをライオネルは渋りました。

なにしろそんな事を宣言すれば自分の首を絞めるも同然です。

自分の面子のためにも、どうかそれは許して欲しいと望みました。

しかしアスクレイはそれを認めずに自業自得だと罵りました。

命が惜しければ言う事を聞け、と」

「まあ、間違ってはいないね」

「そしてさらに彼の考案した不完全なPTMの使用を禁止させました」

「え?そうなんだ?

それはそれで役に立つだろうに・・・」

「私もそう考えましたが、アスクレイは絶対に認めませんでした。

アスクレイは他の事に関しては、大抵私の意見を取り入れたのですが、この件に関してだけは決して折れませんでした。

よほど、父とメディシナーを侮辱されたのが許せなかったのでしょう。

そしてそれは妻のフロ-レンスも同意見でした」

「うん、まあその気持ちはわかるな」


尊敬する自分の父親が生涯をかけて編み出した物を歪められて、言わば汚されたのだ。

その位の気持ちにはなるだろう。


「私もアスクレイとフロ-レンスの心情を尊重して、その意見を認めました。

結果として、ライオネルは全ての条件を呑んでアッタミ聖国でアスクレイの指示通りの宣言をして、生きながらえる道を選びました。

その後、当然のごとく彼は公職を解かれ、PTMの処置後、健康体になった所で投獄されました。

それでメディシナーではその不完全なPTM、すなわち「劣悪治療魔法」はなかった事になり、少なくともメディシナーに関係する場所、すなわちアムダール帝国とその周辺国ではその呪文は禁呪きんじゅとなりました。

魔法協会に正式に加盟している国でも全部です」

禁呪きんじゅ・・・」

「はい、その頃にはすでに魔法治療に関してはメディシナーは魔法協会にも絶大な影響力がありましたからね。

ましてやライオネルが行った行為は詐欺とも言えますから、当然魔法協会もメディシナー家の案に賛成しました。

その結果、「劣悪治療魔法」は魔法協会に加盟している国で使用した場合、罪となり逮捕される事となりました。

ライオネルは虚偽を国家に教えていた大罪人として一旦はアッタミ聖国で投獄されましたが、彼の弟子たちや実際に救われた人たちからの嘆願もあり、その後、単純に国外追放となりました。

彼は彼を慕う一部の者と各国を放浪し、最終的には北の小国ウトロウで客死したと聞いております。

この事件の後から誰が言うでもなく、私とアスクレイ、フローレンスの三人を「ガレノス三高弟」と呼称するようになり、それまで「ガレノス六聖」と言われていた六人は、単に「ガレノス六大弟子」と言われるようになったのです」



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