0440 魔法学園祭準備 1
秋も深まってきた所で、我が家では学校行事の話でにぎわってきた。
「魔法学園祭?」
「ええ、そうです。
一応、建前はこの学校で学んだ事を内外に周知するために生徒たちに自主的に色々な事をさせる行事と言う事になっていますが、実際には何でもありのお祭りですね。
1年から6年まで合同で、色々とやります。
私も中等学校の時に模擬店などをやりました」
「そうそう、結構面白いわよ」
シルビアとエトワールさんが学園祭の説明をしてくれた。
要は文化祭や大学祭のような物なのだろうか?
「それって、例えば、劇をやったり、音楽を演奏したり、店を開いて食べ物を売ったりするって事?」
俺の質問にシルビアが答える。
「そうですね、そういった事もしますね。
但し、やりたい事を学校の魔法学園祭実行委員会に申請して、その過程で必ず魔法を使う部分がどこかにないと申請しても認められません」
「魔法を?」
「ええ、魔法学園祭ですからね。
例えば、劇ならば、全員が浮遊魔法を使って飛んでみたり、音楽でしたら楽器をタロスで作ったりとかですね」
「食べ物屋は?」
「食べ物を熱したり冷やしたりするのに魔法を使うのであれば許可が出ます。
御主人様がしたように蒸すのに発熱タロスで暖めたり、凍結魔法で冷やす氷菓などが人気がありますね。
それと食べ物を全て普通に調理しても、例えば給仕を全て生徒が作ったタロスやジャベックにさせるのであれば許可されます」
「へえ・・・」
「ただし、本来魔法を使わない事が目的の部は魔法を使用しなくとも、その部の目的に即していれば許可は出ます。
例えば数学部ならば、数学に関する事を展示すれば問題ないですし、文学部は創作文学の展示、美術部は部員の絵画の展示などをすれば、魔法を使ってなくとも問題はありません。
料理部はもちろん料理を出すだけで大丈夫だと思います」
なるほど!
つまり美少女ジャベック喫茶などもありという訳か?
そして料理部や窮理部は活動をそのまま発表して問題なしという事か?
そんな事を考えていると、エレノアも俺に参加を薦める。
「ええ、その通りです。
これは学生のうちにしか楽しめないし、中々面白いですから、御主人様も何かやってみると良いですね」
「そうだね」
それは確かに面白そうだ!
俺は前世ではあまり文化祭の類には熱心でなかったが、今度の人生では友人もたくさんいる事だし、色々とやってみたい!
しかし何をすれば良いだろうか?
俺は翌日になってクラスのみんなと相談してみた。
まずは勢い込んでエトワールさんが発言する。
「食べ物屋がいいわよ!
せっかくシノブさんがいるんですもの」
その意見にシャルルとアインがうなずく。
「そうだねぇ・・・」
「ああ、確かになあ・・・」
俺がサクラ魔法食堂の店主な上に料理部部員なので、みんなもその方向に期待しているのだろう。
「それはいいけど、アレをやるにはずいぶんと手間とお金がかかるよ?」
「ああ、そうか・・・高級店だものね・・・」
「うん、ちょっと学園祭でやるには高すぎるかなあ・・・」
俺とエトワールさんのやり取りにアインが尋ねる。
「なんだ?そんな高いのか?」
「そうね、一番人気のプリンが一個銀貨3枚だから・・・」
「一個銀貨3枚だぁ?おいおい!学生が売る値段じゃないだろう?」
「でもこの間売り始めたプリンアラモードなんて、大銀貨5枚もするんですよ?」
アンジュの説明に今度はアインだけでなく、ビクトールも驚く。
「なにぃ~!大銀貨5枚だってぇ!どんな食べ物なんだよ!」
「そうだな、いくら父兄に金持ちや貴族が多いと言っても、審査が通らないだろうな」
「そうねえ・・・肉まんにしても特別な器具が必要だし、作るのにはそれなりに技術が必要だし、ちょっと難しいか?」
ここでシルビアが静かに提案をする。
「私はお芝居が良いかと・・・」
「お芝居?何をするつもりなの?シルビア?」
「無難な所で「七色靴の姫」を」
「ああ、たしかに無難ね」
「そうだな」
「そうねぇ・・・」
何人かがうなずくが、俺はその話を知らない。
「それってどういう話?」
俺が尋ねるとシルビアが答える。
「貴族の父を亡くした娘が母と姉にいじめられて生活をしているのですが、魔法使いのおかげで七色に光る靴を履いて王宮の舞踏会に出て、そこで王子様に気に入られて御妃になる話です。
有名な話ですし、魔法使いがいないと基本的に出来ない芝居なので、こういった魔法関係の出し物にはよく使われますね」
ああ、シンデレラみたいな話なのね?
って言うか、ほぼそのまんまみたいだな?
こっちにもそういう話あるんだ?
「なるほどね、それでいいんじゃないの?」
「そうだな、せっかく魔法を使うのだから」
「異議なし」
「賛成」
「じゃあ、それにする?」
「いいんじゃない?」
特に反対する者もいなかったので、うちのクラスは「七色靴の姫」をする事となった。
「それじゃあ、まずは配役から決める?」
「そうだね」
俺たちが話していると、誰かが俺を呼びに来る。
「ホウジョウ君はいますか~?」
「はい?」
「グリーンリーフ先生が御呼びです。
職員室まで行ってください」
「はい」
職員室へ行こうとする俺をエトワールさんが呼び止める。
「あ、シノブさん、これから配役と係を決めるけど、どうする?」
「ああ、僕は王子役以外なら何でもいいよ」
「王子役以外?」
「ああ、王子様はセリフもたくさんあって、面倒そうだからね。
それ以外だったら、馬車の馬役でも御者でも何でもいいよ」
「馬と御者は魔法使い役がタロスで出すわ。
馬車と一緒にね。
この芝居で魔法使い役は実際に役者の中で、最もタロス魔法がうまい人間がやるのが決まりなのよ。
それがこのお芝居の見所でもあるしね」
「じゃあ、それは難しそうだからそれも御免こうむりたいな・・・
王子役と魔法使い役以外だったら何でもいいよ。
王宮の召使でも、照明係でも大道具でも、他の何でも」
「わかったわ。
王子と魔法使い以外ね?」
「うん、そう、じゃあ、ちょっといってくるね」
「ええ」
この時、俺はシルビアの目が、その眼鏡の奥でキラリと光ったのに気づかなかった!
そして俺はこの時、その場にいなかった事を数分後に激しく後悔するのだった!
職員室へ着いた俺がエレノアの席へ行く。
「先生、何の御用事ですか?」
「ああ、シノブ君、実は学園祭の事なんだけど?」
「はい」
「君のクラスでは食べ物屋を出す話が出ると思うけど、あまり高い物は出してはダメよ?」
「はい、ちょうどその事を話し合っていた所です」
「ええ、あなたが作ると学校の域を超えてしまうし、それに関しては料理部からも嘆願が来ているのよ」
「料理部から?」
「ええ、もしサクラ魔法食堂の料理が許されるならあちらでも作りたいとね」
「大丈夫です。
うちの出し物は演劇になりましたから」
「ああ、そうなの?何をするかも決まったのかしら?」
「七色靴の姫だそうです」
「まあ、妥当な所ね。
あなたのクラスは優秀な魔法使いも多いから面白くなりそうね」
「はい」
「ええ、では楽しみにしているわ。
では料理部の方にもその話は伝えておきましょう。
あなたのクラスと出し物が被る事はないから安心するようにとね。
話はそれだけだから、もう教室に戻っていいですよ」
「はい、先生」
俺が教室に戻ると、エトワールさんが声をかけてくる。
「ああ、お帰りなさい、シノブさん。
配役が決まったわよ?」
「へえ、どんな感じです?」
「そこの黒板に書いてある通りよ」
「どれどれ・・・」
俺は黒板を見て愕然とした!
【 七色靴の姫 配役 】
姫 シノブ・ホウジョウ
王子 シルビア・ノートン
母 アイン・ロビンソン
姉1 ビクトール・ベルンシュタイン
姉2 フレイジオ・ノーベル
魔女 アンジュ・サフィール
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どうしてこうなった!
いよいよ旧作に追いついて参りました!
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