0435 戦利品
俺たちが隊商との話を終えると、ゾンデルが再び戦利品の話を始める。
「しかし追加の煉瓦とジャベックの購入代金を差し引いても、この資金は膨大ですね?
しかも武器と防具や、あまった小麦を売るので、むしろもっと財産が増えそうです」
「まあ、それは基本的にはこの村の復興に使ってくれれば良いさ」
その俺の言葉にゾンデルは驚いて首を横に振って話す。
「とんでもない!
これは1号様のおかげで手に入れた物です。
しかもこれほど村の防衛も強化していただいたのです。
その上、兵法の事なども、色々と教えていただきました。
その知識だけでも、まさに値千金になります!
1号様がこれらの戦利品を全て持ち帰られても誰も文句は言いません!
むしろこの金銀財宝まで我々がいただいたら罰が当たります!」
ゾンデルの言葉にミルキィもうなずき答える。
「私もそう思います。
そもそもこの物資はこの村には過ぎた物です。
それに白狼族はお金の使い方などロクに知りません。
こんな物があれば身を滅ぼす元です」
ミルファも娘の意見に賛成する。
「私も4号に賛成です。
食料はともかくとして、この村に金銀財宝などは不要です。
これほどの金銭、軍需物資をここに残すのは何も知らない子供に金貨を預けるのと同じです。
危険きわまります」
さらにエレノアとシルビアも二人に賛同する。
「それには私も賛成です。
持ちなれない物を持つのは身を滅ぼす元です。
最低でも金銀財宝は我々が管理するためにも、この村から引き上げた方が得策です」
「私も2号に賛成です。
ここに置いておくのは危険です。
我々が持ち帰り、管理すべきでしょう」
灰色衣装の四人の言葉に俺もうなずく。
「そうか・・・確かにそうかも知れないな。
では村人に今回の報奨金と、今までの慰労費として、一人当たり、金貨100枚を支給して、金貨1万枚を村の倉庫に入れてゾンデルが管理する。
鍵付倉庫の一つを金蔵として、そこに村の財産として収納しよう。
それはゾンデルの判断で必要に応じて使ってくれ。
君達も今まで苦労してきたんだ。
それ位、儲けがあっても罰はあたらないだろう?
そして残りの金銀財宝は、今回の事にかかった経費と指導料として、遠慮なく我々がいただく事にしよう。
武器と防具は今回の隊商に売った以外は、剣と盾を500個ずつ、それと投げ槍と弓矢は全て防衛用にここに置いておき、残りは鹵獲した宝物と一緒にアドレイユ王国の王都で売ってしまおう。
今回売ってしまった分は仕方がないが、現状ではあまりノーザンシティに武器は売りたくはないんでね。
この村に残した武器防具は、もちろん隊商が来ても売らないように。
当然、投石器を始めとした、今回我々が製作した防御系の武器も全部売ってはいけないよ。
誰が来ても見せないようにしておいて、戦争以外では秘密兵器として武器庫の中に隠して置くように。
そして食料関係は、まずは各家庭と倉庫に入る限りは全て配って、残りの内、飛行艇に乗せる限りは載せて行こう。
その残りは今回作った村の倉庫と宿屋に収納だ。
それでもかなり外にあまるだろうから、後は次回の隊商が来た時に売ってくれ。
雨が降った時に濡れない様に、タロスの簡易倉庫に入れて置くからね。
売るまでは十分に持つだろう。
その売った金は君達の好きにしてもらって構わない。
それで良いかな?」
金貨100枚と言えば、この村では一軒当たり、10年分以上の稼ぎになるだろう。
そういう意味でも、ちゃんと金銭を運用するかを見るのにはちょうど良い金額だろう。
そして穀物や干し肉なども、作った倉庫に入るだけでも、村全体の数十年分の備蓄にはなる。
それだけあれば、まだ人数の少ないこの村ならば当分の間は食料も安泰だろう。
俺の意見にエレノアとシルビアがうなずく。
「ええ、そんな所が妥当でしょうね」
「私もそう思います」
そしてミルキィとミルファも賛成する。
「ええ、それで結構です」
「私もそれに賛成です」
ゾンデルもうなずいて答える。
「それで十分です。
今言われた通りに食料は村人たちに配って、残った金銀財宝は全て1号様にお礼として差し上げますので、どうかお持ち帰りください」
「わかった。ではそういう事にしよう。
村人たちにもそれを説明してくれ」
「承知しました」
ゾンデルが全村民を呼び、まずは各人に今回の報奨として金貨100枚を配る事、そして金貨1万枚を村の今後の復興費用として鍵付き倉庫に収納する事、残りの金銀財宝は俺たち「雲の旅団」に今回の謝礼として全て差し出す事を報告すると、全員が賛成した。
そして各家庭に収納可能なだけ好きな食料を好きなだけ持って行くようにと指示すると、村人たちは大喜びで鹵獲した食料を好きなだけ選んで持って行った。
何しろ伯爵軍5000人分相当の遠征や長期戦のための食糧だ!
100人にも満たないこの村の人間では、どれほど分けても無くなる物ではない。
麦、小麦粉、乾燥豆、干し肉、干し果物、塩、砂糖、各種香辛料、酒と、本当に何もかも取り放題だ!
若い酒好きな独り者の中には、自分の家に入る限り、そのほとんどをワインやブランデーなどの樽を持って行った者もいて、俺たちは苦笑した。
全員が好みの食料や酒を好きなだけ家に持って帰っても、十分余裕はあったので、争いは全く起きなかった。
村の各家庭の部屋や納屋、天井裏、果ては軒先にまで食料が備蓄されて、村人たちも大満足だ!
俺が村人たちに尋ねる。
「さあ、みんな好きなだけ食料は持ち帰ったかな?
後でもっと寄越せと言っても、もうないぞ?」
「おお~う!」
「もちろんでさぁ!」
「これだけもらって文句を言えば、それこそ罰が当たりまさぁ」
「全くですわ!」
「ええ、本当に助かりましたわ」
「うちなんか天井まで小麦粉で一杯よ!」
「雲の旅団様々だな!」
「むしろ俺たちが先に欲しい物を好きなだけいただいて、残り物を1号様たちに差し上げるのが心苦しい位ですよ!」
「その通りです!」
「後はどうぞ好きにしてくだせぃ!」
「うん、わかった」
こうして我々は一部の金貨と武器防具、そして大量の食料を残し、残りをロナバールへと持ち帰る事となった。
それでもその資産は相当な物だ。
トランザムの時の資産も相当だったが、今度はそれ以上だ!
全てを1回では運びきれそうに無かったので、豪雷に指示して、1回金貨銀貨と金塊だけを先行して持ち帰ってもらったほどだ!
そしてこの処置はまさに正しかったのだ!
僅か1年と少々後に我々はその事を思い知る事になる。
鹵獲品の処理も終わり、その日は大宴会となった。
もちろん門は全て閉じて、ジャベックたちが見張りもしているので、どこからも襲われる心配などない。
俺たち「雲の旅団」とハーベイ村の全員が心行くまで宴を楽しんだ。
いよいよ旧作に追いついて参りました!
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