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おねショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!  作者: 井伊 澄洲
おねショタ好きな俺が転生したらエロフに騙された!
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0043 バッカン氏との出会い

 裏通りに入った俺たちは、あちこちの店を見て回る。

案の定、俺が予想した通り、怪しい店が多い。

店先に書いてある看板を見ても


「戦闘用タロスのグラーノ十個で銀貨3枚、ただしレベル不明」

「訳あり魔石、一個、銀貨2枚、先着30名まで」

「格安ジャベックあります!ただし1日労働に、魔力充填が2日必要」


というような怪しい看板ばかりだ。

中には


「勇者求む!危険な高性能ジャベックあり!」


などという看板もある。

おいおい!この場合の「勇者」って、どっちのだよ?


そんな中、一つの看板と美女が俺の目を引いた。


「バッカンゴーレム店 この二階

各種ジャベック製作 但し、受注は店主次第」


その看板の横には髪を結っている中華娘のような見た目が20代の美女が立っている。

一見、人間の美女に見えるが、これはおそらくジャベックだ。

鑑定してみると、何とレベルは250だ!

俺はこんなレベルのジャベックを見るのは初めてだ。

見栄えや自然な動きといい、これを作った人はゴーレムの名工に違いない。


「君はこの店のジャベックなの?」

「はい、そうです。メイリンと申します」


俺はエレノアに言って店に入ってみる。


「ちょっとここに入ってみるよ」

「はい、承知しました」


階段を上り、2階に着くと、店の扉が開いている。

中に入ると、そこは縦横7mほどの広さの部屋で、様々なジャベックが並べられている。

部屋の片隅にはカウンターがあって、一人の老人が座っている。

その老人は何かを読んでいたが、入って来た俺たちをジロリと一瞥すると、再び読み物を読み始める。

いかにも気難しい職人という感じだ。

俺は老人に下手に出て、たずねる。


「あの、中を拝見してもよろしいですか?」

「ああ、別に構わんよ」


老人はぶっきらぼうに一言、言うと、そのまま読み物を読み続ける。

俺は飾ってあるジャベックを見て、感心する。


「ここのジャベックは凄いね。

どれをとってもまるで芸術品みたいだ」

「そうですね。

 このジャベックの製作者は非常に高度な技術を持っています」

「うん、技術だけでなくてセンスも良いね。

 僕もこんなジャベックを作れるようになりたいな」


俺のその言葉を聴いた店主が突然、俺に話しかけてくる。


「ほう、お前さん、そのジャベックの良さが判るのかい?」

「え?いや、判るかどうかと言われると困りますけど、ここに飾ってある物は、みんな良い物だと思いますよ?」

「そうかい?ところでお前さん、今そんなジャベックを作ってみたいとか言っていたが、お前さんもジャベックを作るのかい?」

「え?いいえ、残念ながらまだジャベックは作れません。

つい、この間タロスを習い始めたばかりですから」

「タロスを?もう出せるようになったのかい?」

「ええ、300体位なら何とか・・・」

「何?三百体だと?習い始めたばかりなのにか?」

「え?ええ、先生にはまだ精度が甘いとか言われますけど」


俺はチラリとそばにいるエレノアを見ながら話す。


「精度が甘い?お前さんの師匠がそんな事を言うのか?」

「はい、もっときっちり作れるようになれと・・・」

「ふ~ん、お前さん、ちょっとここでタロスを出してみろ!」


その老人の言葉に俺は驚く。


「ええ?ここでですか?」

「ああ、そうだ」

「でも、僕はまだ初心者なんで、そんな複雑なのは出せないですよ?」

「構わん、お前さんの得意なタロスは何だ?」

「戦闘用です」

「それで良いから一体出してみろ」

「いいんですか?」

「ああ、構わないからここで一体タロスを出してみな!」

「はい、アニーミ・エスト」


俺が甲冑騎士型タロスを一体出すと、その老人はしげしげとそのタロスを観察する。


「ほう・・こりゃずいぶんと丁寧な作りだ・・・しかも強度も良い。

 手を抜いていない、良い作りだ・・・

お前さん、まだタロスを習って日も浅いと言っていたな?

「はい、まだ1ヶ月位です」

「何?たったの1ヶ月だと?本当か?信じられん・・・

う~む、お前さん、随分良い師匠に教わっているみたいだな。

お前さんの能力もさる事ながら、よほど良い師匠に習わないとこうはならん。

しかもたったの1ヶ月でなど信じられんわい」

「ええ、僕もそれは思います」


その師匠は今そこにいるけどね。

店主は改めて俺とタロスを見比べていたが、やがて俺に面と向かって話し始めた。


「う~む、気に入った!

 わしの名はバッカンだ。お前、わしの弟子にならんか?」

「え?」

「お前はゴーレムに関して稀に見る才能とセンスを持っている。

お前はゴーレム使いとして大きく伸びる!

わしが保証する!

だからわしの弟子になれ!」

「ええ~?」

「嫌か?」

「いや・・・ではないのですが、私にはもう師匠がいるので・・・

申し訳ないのですが、今の所はその師匠から離れる気にはなれないので」


俺がそう説明をすると、バッカン店主は思い出したように、ガッカリとして話し始める。


「ああ、そうか・・・このタロスを教えた師匠か・・・

確かになあ・・・

 大した師匠でなければ、そんな奴は見捨てて、わしの所に来いと言う所だが・・・

 お前のその師匠は間違いなく一流、いや、超一流の師匠だ。

 俺より上かも知れん・・・ううむ・・正直、こんな事は初めてだ。

 この年になると、世の中は狭いと思っていたが、やはり広いな。

 俺が知らない所に、こんなとんでもないゴーレム使いがまだいるとはな・・・

 そんな師匠からお前を奪う訳にもいかないしなあ・・・

 お前は師匠に恵まれたが、お前の師匠はもっと弟子に恵まれたよ。

 お前の師匠が羨ましいなあ・・・」


バッカン店主は本当に俺を弟子に取れないのを残念そうに話す。

ここまで俺を評価してくれたのはエレノアを除けば初めてだ。

いや、ひょっとしたらエレノアよりも高く評価してくれているかも知れない。

そう考えると、なんだか俺は申し訳なく感じてきた。


「それほど私を評価していただいた事は嬉しく思います。

私は今の所師匠から離れるつもりはありませんが、訳あって近いうちに、その師匠と別れる事になるかも知れません。

もしそうなったらこちらに伺ってもよろしいですか?」


俺は今の所、エレノアから離れる気はないが、約束の3ヶ月目には、正直どうなるかはまだわからない。

しかしもしエレノアとの間に何かあれば、この人に弟子入りしても良いと思う。

あっちがだめだったからこっちにという優柔不断な気もするが、もしこの人がそれでも良いというならば、俺はこの人に弟子入りしようと思う。

もし、馬鹿にするな!と怒られたら謝ろう。

しかし、意外にもこの人はそれで納得した様子だ。


「ああ、それでも構わん、もしそうなったらわしの所に来い!

 ただし、お前の師匠は大切にしろよ?

 さっきも言った通り、お前の師匠は超一流の師匠だ。

 決しておろそかな事をして、師匠に迷惑をかけるような事はするなよ?

 それだけは約束してくれ」

「はい、肝に銘じます」

「うん、それでいい。

 まあ、それは別にしても気が向いたら、ここに茶でも飲みに来い。

 お前と茶のみ友達になる分には、お前の師匠も怒らんだろうからな」

「はい、それでは今日の所は失礼します」

「ああ、いつでも遊びに来てくれ、待っているぞ」

「はい、わかりました」


俺は挨拶をすると、店を出た。


「ありがとうございました、またの来店をお待ちしております」


ジャベックのメイリンの声を後にして、俺とエレノアは家路に着いた。


「何か、あの人は寂しそうだったね」

「ええ、自分の技量を継ぐ弟子に出会えなくて、悲しい思いをしているのかも知れません。

天才的な魔法使いにはそういった事がままあるようですから」

「そうなんだ・・・」


こうして謎の老人、バッカン氏との初めての出会いは終わった。

初めてのゴーレム街は楽しかったが、俺は複雑な思いを抱いて宿に帰った。


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