0411 唯一の解決法
意外な名前が出てきたので俺は確認をしてみた。
「ちょっと待った!
君の甥御さん、クラウスって言うのかい?」
「ええ、そうです、私に懐いて可愛いんです。
でもまだ子供のくせに、魔物狩りをしたがって目が離せないんですよ」
魔物狩りをしたがる?
もう、これは間違いないだろう!
一応、俺は確認のためにクラウスの母親の名前を尋ねる。
「ひょっとして、君の義理のお姉さんの名前はメリンダさんかい?」
「ええ、そうですよ、何で知っているんです?」
「じゃあ、もしかして君のお父さんはサーマルさんなのか?」
「はい、私の名前はポルテ・サーマルで、父の名はガルテ・サーマルです。
父を知っているんですか?」
「知っているどころか、恩人さ」
そう、彼女の父、サーマル村長は町に出て、右も左もわからない俺を親切に案内してくれて、世間知らずで馬鹿な俺が金貨を騙し取られそうになったり、偽物の品物で騙されそうになったりした時にも助けてくれた人だ。
そういえばサーマルさんはロナバールに行く馬車の上で、娘が遠い町で魔法を学んでいるって言ってたけど、あれってマジェストンの事だったんだ?
「恩人?父が?」
「ああ、君の御父さんだけでなくて、メリンダさんやマンリオさんもね」
「義姉さんや兄さんも?」
「馬鹿な僕の世話を色々としてくれたんだ」
「世話を?まあ、確かに父はがさつですが、人は良いので、よく人の面倒はみますね。
そのせいか、村長としても村の人たちに慕われていますが」
がさつ・・・まあ、確かにそうかもね?
でも、そんな恩人の娘なら遠慮はいらない。
「よし、ちょっと待ってくれ」
俺はそう言うと、自分のマギアサッコを開けて、魔法消費半減のミスリル指輪を取り出す。
九割減少の指輪にしようかとも考えたが、下手に高価な物をあげると、色々と問題が起こるのは経験済みだ。
五割削減でも十分だろうからそれを渡す。
25%では少々心もとないだろうからね。
俺はミスリル製の魔力消費半減の指輪を持つと、それをポルテに渡す。
「これを君にあげるよ」
「何ですか?
これ・・・まさか?」
何かと思って、この指輪の魔法鑑定をしたのだろう。
ポルテの顔が愕然とする。
「これは魔力半減の指輪・・・」
「ああ、そうだ、これを君にあげるよ。
これがあれば使役物体魔法三級に合格できるんだろう?」
「そうですけど・・・こんな高価な物を・・・おいくらですか?」
「いや、だからあげるって、タダだよ、無料、お金はいらない」
「そんな・・・だって、あなたからこんな高価な物をいただく理由がありません。
御話したのだって、ほとんど今日が初めてなのに!」
「まあ、確かにね。
君と話すのは、今日がほぼ初めてだ。
だけど、君の御父さんやお義姉さんには散々世話になったからね。
そのお礼さ。
君の御父さんだって、娘が魔法修士になって帰れば喜ぶだろう?
家に帰ったらシノブが恩返しにくれたと言えばわかるよ」
「父への恩返し・・・本当にいいんですか?
私はあなたに何もお礼が出来ませんよ?」
「そんなの別に構わないさ、ああ、強いて言えば、また君の村に行く事もあるだろうから、その時は宿代わりに君の家に泊めてもらって、食事でもさせてくれればそれでいいさ」
「そんな事は全然問題ありませんが・・・でもそれじゃ釣り合いが取れません!」
なかなかこの娘は律儀で頑固なようだ。
「そうだな、じゃあ、君がとっとと支部を作って、出来るだけ優秀な魔道士をたくさん育ててくれ、それがこれに対するお礼だと思ってくれ。
それで僕が何かに困った時には、その魔道士たちを貸してくれ。
それが僕に対する礼さ。
それにこういう特殊な品物は入手できる時には多少無理してでも入手した方がいいんだろう?
さっき自分で言ってたじゃないか?
まさに今がその時さ」
「う、確かに・・・」
ポルテは自分で言った手前、それを違うとは言えない様子だ。
「納得したかい?」
「はい・・・わかりました。
でも、それだったら最後まで付き合ってください」
「え?」
「これから私が実際にジャベックを作ってみますからそれを見てください」
「わ、わかったよ」
俺にも指輪をあげた責任があるので、ポルテに従って研究室へ行く。
俺がポルテにつき従って行くと「ジャベック研修室」と書いてある部屋へと入っていく。
そこにいた女生徒に話しかける。
「ミランダ!喜んで!私ジャベックが作れそうよ!」
「え?どうしたのよ?いきなり?」
「とにかく先生に報告をするわ!」
そう言ってポルテはさらに奥の扉を開けて中の人物に話しかける。
「先生!私、ジャベックが作れそうです!」
「おや、どうしたんだい?サーマルさん?あれ?」
何と!そこにいたのはシンドラー先生だった。
「これはホウジョウ先生!どうしましたか?」
「シンドラー先生・・・」
「え?え?」
ポルテは訳がわからずキョトキョトとしている。
「サーマルさん?ホウジョウ先生とお知り合いだったのですか?」
「え?はい?先生も彼と知り合いなのですか?」
「ええ、ホウジョウ先生にはジャベックの事を教わりましたからね」
そのシンドラー先生の言葉にポルテが驚く。
「ええ?ユーリウス学派でユーリウス賢者の直弟子の先生がジャベック魔法を?」
「ええ、あなたも御存知のグリーンリーフ先生は、ユーリウス師匠の御師匠様ですからね。
私にとってもグリーンリーフ先生は大師匠に当たる訳です」
「え?そうだったんですか!?」
「そして驚いた事にホウジョウ先生は、その大師匠やわが師ユーリウス様にジャベック魔法を教えるほどの方なのですよ」
「ええっ?伝説のゴーレム魔道士と言われるユーリウス大師匠に?」
「ええ、そうです。ですから私にとっても先生なのですよ」
「そんな・・・」
驚くポルテをシンドラー先生が促す。
「それで?ジャベックが作れそうと言ってましたが?」
「あ、あ・・・その・・・彼と一緒に迷宮へ行って、魔力半分削減の指輪を手に入れまして・・・」
そう言ってポルテは俺の方をチラチラと見る。
さすがに俺にもらったとは言えないらしく、迷宮で指輪を見つけた事にしたいようだ。
俺もそのポルテの言葉にうなづいてそれを了承する。
「ええ、そうなんです。
たまたま彼女と迷宮へ行ったらそれを入手したので彼女に譲りました」
「ほう?それは良かったですね?
何しろあなたに足りないのは魔力量だけでしたからね?
それを補える品物を入手できたのなら大丈夫でしょう」
「ええ、それで早速ジャベックを作ってみようと思って・・・」
「わかりました、私も一緒に確認しましょう」
「はい、御願いします!」
「ホウジョウ先生も是非見学して行ってください」
「はい、私もそのつもりでここへきましたので」
「では早速始めましょうか?」
「はい」
ポルテはすでに術式書は作り終わっていたので、すぐさまそれと魔石を用意して呪文の詠唱に入る。
俺たちはそばでそれを見つめる。
「動け!我がジャベック、マンフレード!」
ポルテが最後の起動呪文を唱えると、そこに男性型のジャベックが姿を現す。
それを見たシンドラー先生と友人のミランダが声を上げる。
「おお、成功ですね?」
「やったわ!ポルテ!」
ポルテも完成したジャベックを見て声を上げる。
「やった!やったわ!」
「うん、良かったじゃないか!」
「ええ、これもあなたのおかげよ!ホウジョウ君!」
「これで君も無事に魔法学士になれるって訳だ」
「ええ、感謝するわ!」
その後、ポルテは使役物体魔法の三級を申請して認められて、魔法学士の単位を得て、さらには魔法修士の単位も取れたようだ。
後は最後の卒業試験を受けるのみだ。
これなら無事に学校も卒業できるだろう。
いよいよ旧作に追いついて参りました!
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