0404 クーカオの実
色々とあったが、カトー・インスローでの生活もあと3日だ。
そこで俺はある実験をやってみる事にした。
実はカトー・インスローに来て以来、かなり気になっている木の実があったのだ。
その木は島のそこここに生えているのだが、そのラグビーボールのような木の実が俺の知っているある物に似ているので、とても気になっていたのだ。
俺はその木の実の事をペロンに聞いてみた。
「ねえ、ペロン、あの木の実はどういう物か知っているかい?」
俺がその辺になっている木の実を指差してペロンに尋ねると、ペロンは事も無げに答える。
「あれはクーカオの実と言って、食べて食べられない訳ではニャいのですが、とても苦いので誰も食べないのですニャ」
「苦い?ふ~む・・・」
その言葉で余計に気になった俺は、そのクーカオの実とやらを3つほど取って来てみた。
さらに落っこちて少々腐っている物がいくつもあったので、それもいくつか拾って宿に持って帰った。
そして宿の料理長に頼み込む。
「すみません、また少々調理場をお借りしたいのですが?」
「あん?そりゃお前さんなら別に構わないが・・・」
しかし宿の料理長は俺の持ち込んだクーカオの実を見て驚く。
「おい?何でまたそんな物を拾ってきたんだ?」
「いや、ちょっとこれで料理をしてみようと思って」
「何?クーカオの実を食べるのか?
そりゃまあ、食べて食べられない事はないだろうが・・・」
ちょうどその場にいたエトワールさんやエレノアたちも不思議そうにしている。
「何を持って帰って来たの?シノブさん?」
「あら?クーカオの実ですね?
それをどうするのですか?」
「うん、これでちょっとした物を作ろうと思ってね」
「しかしそいつはめちゃくちゃ苦いぜ?」
料理長の言葉に俺はうなずいて答える。
「うん、それは知っている」
俺はまず拾って来た方の実の殻を剥いて、中身の種を乾煎りする。
大きな鍋を借りて、その中でガラガラと種をかき混ぜる。
その匂いを嗅いで俺は確信する。
これはいける!間違いない!
その香りを嗅いだエトワールさんや女子たちが色々と話し始める。
「へえ?乾煎りすると、匂いはちょっと香ばしくていいわね?」
「でも苦いんでしょ?」
「ええ、凄く苦いと聞いているわ」
乾煎りを終えると、砕いて中身を搾り出し、漉した物を牛乳、砂糖を入れて混ぜて冷やして固める。
「ふむ、こんな物かな?」
出来た物を実際に自分で食べてみると、まだ荒い作りではあるが、ほぼ予想した通りの物が出来ていて、俺も満足する。
さらに再調整して、材料の割合などを変えて、俺はみんなに食べてもらう試作品として大量に作ってみた。
そしてそれを加減した凍結魔法で冷やす。
「ふう、これで良し!」
その匂いに惹かれてみんな集ってきたようだ。
十分に冷やした所で俺はそれを取り出す。
まずは甘い物に目がないエトワールさんが興味深く聞いてくる。
「何?何が出来たの?」
「うん、ちょっと食べてみて」
「わかったわ」
エトワールさんが恐る恐るそれを一欠けら食べてみると驚く。
「え?おいしい!何コレ?」
「うん、チョコレートって言うんだ」
そう、クーカオの実はカカオの実にそっくりだったのだ。
そう思って俺はクーカオの実でチョコレートを作ってみた。
チョコを作るにはまずカカオの実を発酵させなければならないが、落ちて少々腐っていた実が丁度良い感じだったので、それを使って中の種を乾煎り、つまり焙煎してカカオマスを作った。
その後、粉砕加工、砂糖と牛乳を混ぜて固めてチョコレートの出来上がりだ。
実際に商品化するにはもっと細かい作業が必要になるだろうが、ともかくはチョコレートを作る事が出来そうなのは嬉しい!
これで俺の料理のレパートリーが広がるのは間違いない!
エトワールさんが俺の試作品のチョコをおいしそうに食べているのを見ると、他の女子も欲しがって俺に頼み込む。
「え?ホウジョウ君!それ私にも食べさせてよ!」
「私にも!」
「私も!」
「ああ、たくさん作ってみたからみんな食べてみてよ」
女子連中が試作品のチョコレートを食べると大騒ぎだ。
「甘~い!」
「おいしいわ~これ!」
「口の中で溶けておいしい~」
うん、やっぱりこの世界でも女子にチョコレートは人気なのがよくわかった。
アンジュも大騒ぎしてチョコを食べる。
「御主人様、これおいしいです!
もっとください!」
「あんまり食べ過ぎるなよ?アンジュ」
「え?食べ過ぎるとダメなのですか?」
「ああ、ブクブクに太るぞ?」
「う・・・」
俺にそう言われてアンジュは少々怯んだようだ。
それでもチョコの甘さに抗えなかったのか、今度はおとなしくもくもくと食べる。
その姿は何だかリスみたいな小動物みたいで可愛い。
ついでにペロンやその友達たちのケット・シーにも食べさせてみた。
「どうかな?ペロン?これは?」
「これは甘くておいしいですニャ!」
「本当ニャ!」
「こんな物は初めて食べましたニャ!」
「クーカオの実でこんな物が作れるなんて驚きですニャ!」
どうやらケット・シーにも評判は上々のようだ。
そして料理長も驚く。
「こりゃ!凄い!まさかクーカオの実でこんな物が作れるとは驚きだ!」
「うん、もう少し研究するれば良い品物になると思うんだ。
だからいくつかこれを持って帰って研究してみようと思う」
俺はそう言いながらクーカオの実をペシペシと叩くが、料理長は不思議そうに話す。
「ほう?今のままでも十分、売れると思うがな?」
「いや、これはほんの試作品さ」
差し当たって俺は自分や豪雷と疾風のマギアサッコに入れられる限りのクーカオの実を入れておいた。
そして宿の料理長にクーカオの実を買い取りたいので、後で連絡をする事を約束した。
「おう、わかったぜ!しかしまさかこれがそんな物に化けるとは思わなかった!」
「うん、もう少し改良したら作り方を教えるから、これをこの島の名物にしたらいいんじゃないかな?」
「そりゃ願ってもない事だ!
是非頼むぜ!」
「うん、その代わり、うちがクーカオの実を買い取りに来るから、ちゃんと定期的にこれを集めておいてよ」
「おう、それは任せておけ!」
この島に来たおかげで、俺は偶然からチョコレートを作る事が出来るようになったのだった!
これで俺の菓子の種類もずいぶんと幅が広がる事になるだろう!
料理部やサクラ魔法食堂にも良い土産が出来た!
マジェストンやロナバールへ帰った時にみんなに話すのが楽しみだ!
いよいよ旧作に追いついて参りました!
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