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おねショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!  作者: 井伊 澄洲
おねショタ好きな俺が転生したらエロフに騙された!
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0328 秘書補佐代行見習い心得の試練

 翌日、キャサリンが一人で迷宮に行く事になった。

俺は屋敷の玄関ホールで、間をおいて正面からキャサリンと向き合っていた。

そこにはキンバリーとミルファ以外の全員が集まり、エレノアを初めとした奴隷たちと、デフォードとアルフレッドも一緒に並んで様子を見ている。

俺の右側前方にはエレノア、シルビア、ミルキィが並び、左側前方にはアルフレッド、デフォード、それにガルドとラピーダが並ぶ。

その様子は傍から見ているだけなら、領主がお抱えの女性騎士を特別任務にでも送り出すような雰囲気だ。

玄関ホールで準備万端整えたキャサリンに対して、俺が命令をする。


「では、キャサリン秘書補佐代行見習い心得!

昨日言った通り、今日はお前一人で迷宮に行ってきてもらう。

方法は問わない。

迷宮でお前が稼いできた状況によって、これからのお前の処遇を決定する事にする」

「はい、わかりました!

でも軍資金はお願いします。御主人様」


いつものように全身ミスリル銀の装備で、キチッと格好をつけたキャサリンが、悪びれることなく、俺に要求をしてくる。


「軍資金?」

「ええ、一人なのは構いませんが、回復薬も何もないのではどうしようもありません。

それに多少の軍資金はいただかないと行動が制限されます。

これで私の運命が決まるのなら、その程度の配慮はしていただいても良いと思います」


その言葉にエレノアたちは呆れ顔だが、俺は一応納得をする。


「なるほど、そう言われてみればそうだな。

ちょっと待っていろ」


確かにキャサリンの言う事も、もっともだ。

俺たちと違って、キャサリンは魔法が使える訳ではない。

うちの戦闘人員で、唯一魔法が使えない人間なのだ。

従ってマギアサッコもなく、装備以外には何も持っていないのだ。

いくら装備が良くても、回復薬も何もないでは、色々と困る事もあるだろう。

俺は自分の部屋へ行くと、棚からしまってある大銀貨10枚を小袋に入れ、さらに体力回復剤を5つ、治療薬と毒消薬を5個ずつ出すと、それを全て巾着袋に入れて玄関ホールに戻る。


「ではキャサリン、とりあえず、お前に大銀貨10枚と、体力回復剤を5つ、それに治療薬と毒消しを5個ずつ渡そう。

これだけあれば一日分としては十分なはずだ。

用途や使用方法は問わない。

好きに使いなさい。

全てお前に一任する」


俺はそう言いながら持ってきた袋をキャサリンへ渡す。

キャサリンはそれを自分の腰にしっかりと結びつけて答える。


「そうこなくちゃ!

さっすが御主人様!」


俺に軍資金その他をもらったキャサリンは上機嫌だが、そこに俺は釘を刺す。


「ただし、回復剤や薬は好きに使って構わないが、大銀貨は預けるだけだ。

これで今日お前が帰って来た時に、私に返す金が、これよりも倍以上に多くなっていたら、お前の事をある程度は認めよう。

だが、それが出来ないのなら、お前を奴隷商館に戻す。

方法を問わない代わりに、いかなる言い訳も聞かない。

特に運が悪かっただとか、自分以外の誰かのせいという言い訳は絶対に聞かない。

これだけお前の言う事を聞いて、条件も整えてやった。

今日のお前の行動の結果は、いかなる事も全てお前の責任だ!

それは迷宮でのお前の「死」と言う結果も含めてだ。

これは私との約束だ、いいな?」

「・・・はい」


流石のキャサリンも自分の置かれた状況を察したのか、少々緊張した面持ちだ。

大銀貨十枚と言えば金貨1枚分だ。

令和日本で言えば10万円以上に匹敵する。

1日の行動のための資金としては十分だろう。

それはうちの食堂の店員の一か月分の給料よりも多いのだ。

しかしキャサリンのレベルで、これを一日で倍にするのはかなり難しい。

これはかなり分の悪い仕事だ。

ここはまさにキャサリンの技量が試される所だ。

しかも全ての行動の結果を自分の責任にされると俺に宣言されたのだ。

これではどんな結果となっても、誰のせいにも出来ない。

そして迷宮での自分の「死」までも含めて責任を問われている。


「けっ!こりゃ見ものだぜ」


その様子を見て、デフォードが面白そうに口を挟む。


「水と食料も持っているな?」

「はい、大丈夫です!」


キャサリンは銀のマントの下に背袋を背負っていて、そこに水筒と食料、そして大袋等いくつかの道具も入れている。


「他に必要な物はあるか?」

「・・・いえ、大丈夫です」

「うん、もしあれば大銀貨があるんだ。

それで買い物をするのは自由だからな?」

「はい、わかりました」

「それともう一つ、これもお前に預けよう」


そう言って俺はあらかじめ作っておいた、一つのマギアグラーノを渡す。


「これは?」


キャサリンは俺から渡された光沢のあるドングリを不思議そうに眺める。


「それは高レベルの戦闘タロスの入ったマギアグラーノだ。

何かで危険な目に会った時に「助けて、御主人様」と叫べば、それだけで起動するようになっている。

強い魔物や盗賊に襲われた時など、危険な時は使って構わない。

中に入っているゴーレムがお前を助けてくれるだろう。

ただし持続時間は1時間ほどなので、注意して使うように。

忘れるな?1時間だぞ?」


これは俺がキャサリンの緊急護衛のために、わざわざ用意したグラーノだった。

中にはレベル150の戦闘用上級タロスが入っており、キャサリンが起動させれば、直ちに戦闘態勢に入り、その身を守る事が可能だ。

最初、俺はオリオンかセイメイを護衛につけようかとも考えたのだが、それでは本来の「一人で迷宮に行かせる」という趣旨と反してしまうので、あくまで緊急時に使うという限定的な物として作ったのだ。

1時間という時間限定にしたのもそのためだ。

長時間持つのでは、これまた「一人で」という趣旨に反するからだ。

1時間と言う限られた時間であれば、緊急的な危機は回避できるはずだし、かと言って継続的に何かに使い続ける事も出来ないはずだ。

本来は一人で全てさせなければならないのだが、これは一応キャサリンに命の危険が迫った時のための俺が掛けた保険だった。

流石にいくら本人が大丈夫だと言っても、迷宮初心者を危険を承知で送り出すのは気が引けたからだ。

俺がマギアグラーノを渡すとキャサリンは素直に礼を言う。


「はい、ありがとうございます!」


そう言って、キャサリンは自分のミスリル鎧の、腰の辺りに何箇所かあるマギアグラーノ装着部分の一つに、俺からもらったマギアグラーノを差し込む。

俺はそれを確認するとキャサリンに命令する。


「よし!これで全ての準備は整った!

では行って来るが良い!

キャサリン秘書補佐見習い代行心得!」

「はい、待っててください!

御主人様、私、ちゃんと大儲けしてきますよ!」

「うん、吉報を待っている」

「でもそうしたら、せめて御褒美に私の役職をもう少し短くしてください」

「ああ、それも約束しよう」

「じゃあ、行ってきま~す!」


こうして喜び勇んでキャサリンは、銀のマントを翻して出かけていった。

その様子を見て、デフォードが呆れ顔で俺に尋ねる。


「こりゃ、ずいぶんと勢いよく出かけていったもんだ!

で?どうします?

あっしが後をつけて監視しますか?」

「いや、それには及ばない。

みんな、こっちに来てくれ」


俺たちは玄関から居間に移動する。

そして部屋の一角に在った布を取り去ると、そこには空中に浮かぶ目玉が6個ほどと、50インチほどの液晶テレビのような画面が姿を現す。

以前、ノーザンシティで開発した、画像中継セットの改良版だ。


「これは私が開発した、自分の見たい場所へ観察する飛行撮影ジャベックを送り込んで、その撮影した物を、この透明な板に映し出す特殊なジャベックだ。

これでキャサリンの後をつけて観察する。

今日はそれで一日を費やしてみよう。

そうすればキャサリンの真価もはっきりと分かるだろう」


初めて画像中継ジャベックを見たデフォードが、驚きの声を上げる。


「ほほう?そんな便利な物が?

これは是非後で俺も教わりたいもんだ!」

「ああ、今度時間がある時に教えてあげるよ」


確かに情報収集を生業とするデフォードには、是非欲しい物だろう。

デフォードは高レベルの魔法学士でもあるから、覚える事は可能だろう。


「まあ、お茶でも飲みながらみんなで見てみよう。

今日はみんなでキャサリンの観察会だ」

「はい、承知しました」

「キンバリーとミルファにはつまんで食べられるようにメティを大量に作ってもらってくれ。

それが出来たらこっちに持ってきて、みんなで食べながら見よう。

二人も一緒にね。

全員に見せて意見を聞きたい」

「はい、私が行ってまいります」


アルフレッドが二人を呼びに部屋を出る。

しばらくすると、アルフレッドがキンバリーとミルファと共に、人数分の茶と大量のメティ、地球で言う所のサンドイッチを作って持ってきて、応接室に戻ってくる。

メティはハムメティやらカツメティ、卵メティにきゅうりメティと色々と作ってくれたようだ。


「ありがとう。

さて、それじゃ今日はみんなでキャサリンの観察会と行こうか?」


二人に礼を言うと、俺はキンバリーたちが用意した茶を飲みながら、ハムメティをつまんで、キャサリンを映した画像を見入った。

どうやら目玉型監視ジャベックがキャサリンに追いついた様子だ。

その画面の中で、キャサリンは意気揚々と町を歩いていた。


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