0032 新たなる目的
九階で昇降機から降りると、エレノアが俺に説明をする。
「ここはグリフォンの巣窟です。
レベルは高いですが、必ず一頭ずつ出てくるので、人数が少なくレベルが高い者にとってはちょうど良い場所です」
「へえ、でもグリフォンって、結構強いよね?」
「はい、レベルで言えば150ほどですね」
そのあまりのレベルに俺が驚いてエレノアに尋ねる。
「150?エレノアはともかく、僕がそんなの相手にして大丈夫なの?」
エレノアはレベル681だが、俺はたったの41だ。
そんな人間がグリフォンを相手にまともに戦えるとは思えない。
本当に大丈夫だろうか?
「はい、エレノアが御守りいたしますので、御安心ください」
そう言って呪文を唱えると、甲冑騎士型のゴーレムが3体出現する。
「このゴーレムで御守りいたします」
「うん」
そのどこかの騎士然とした、中々強そうなゴーレムに俺も安心する。
試しに鑑定をしてみると、何とレベル250だ!
さすがレベル681のエルフ様が作るゴーレムは物が違う!
さらにエレノアは懐から何やら腕輪のような物を取り出す。
「これは魔物の腕輪です。
これを装備して歩くと、魔物の出現率が高くなり、レベル上げの修行には最適です」
「へえ・・・」
要は俺の持っている魔物の鈴と同じような物か?
「では参りましょう」
「うん」
俺達が数歩歩くと、早速グリフォンが現れる。
頭が鷲で、体が獅子の、羽の生えた魔物だ。
こいつは魔物の中でもかなり上位になるはずだ。
しかし苦もなくエレノアは一撃で、そのグリフォンを倒す。
さすがレベル681!凄まじい強さだ!
安心しろグリフォン、お前が弱いんじゃねぇ、うちのエレノアが強すぎるんだ。
俺は倒れるグリフォンを見て、思わず心の中でそう呟く。
すると、俺のレベルはすぐに42に上がった。
俺はエレノアに報告をする。
「レベルが上がったよ」
「そうですか、ではまた上がったら教えてください」
「うん」
数歩歩くと、またグリフォンが現れて、先ほど同様に、エレノアはあっさりと倒す。
そのグリフォンを倒すと、またすぐにレベルが上がった。
「またレベルが上がったよ」
「え?もう上がったのですか?」
「うん」
「・・・また上がったら教えてください」
「うん、わかった」
さらに次のグリフォンを倒すと、またもや俺のレベルが上がる。
「あの・・・また上がったんだけど?」
「え?もうですか?」
「うん・・・いや、実は僕は特殊な体質というか、特別な体で・・・
レベルが上がりやすい人間らしいんだ」
俺の説明を信じられないような顔でエレノアが答える。
「そのような話は初めて聞きますが・・・」
そりゃそうだ、神様に頼んでもらった特別な能力だ。
他にいるとは思えない。
「うん、僕以外にはあまりいないみたい」
「ちなみにどれ位の速さかわかりますか?」
「えっとね、正確に測った事はないけれど、多分、普通の30倍くらいだと思う」
「30倍?30倍の速度でレベルが上がるのですか?」
またもやエレノアが信じられないといった表情で驚く。
まあ普通に考えてそうだろうな。
「うん、多分ね」
「承知いたしました。
それを考慮して今後のレベル上げも考えましょう」
「うん」
結局、俺はエレノアと半日少々迷宮に行っただけで、レベルが35も上がってしまった。
これはよくRPGゲームでもある、レベルが高いキャラと誕生したてのキャラが一緒に魔物を倒すと、低い方がどんどんレベルが上がっていく現象と同じだろう。
しかも俺には経験値30倍がついているので、その効果も30倍だ。
たった半日迷宮に行っただけで、レベル41からレベル76になった俺に、さすがのエレノアも驚いた様子だ。
宿に帰ってきて、エレノアが俺に質問する。
「改めて、もう一度お聞きします。
御主人様の目的は何ですか?」
目的・・・・そう、俺の目的は何だっただろう?
「ボクの・・・目的?」
「ええ」
そう、俺の一番の目的といえば、前世からずっと、美人のお姉さんとイチャコラする事だった。
そしてそれはこの世界に転生して達成された。
それこそ、これ以上ないほどに・・・
いや、本当にそうだろうか?
俺の目的は本当に達成されたのだろうか?
「僕の一番の目的は・・・年上女性と思う存分にいちゃこらする事だった・・・」
「オネショタですね?」
エレノアの言葉に俺はうなずく。
「いつでも私を好きになさって良いのですよ?」
「うん、ありがとう・・・でもそれはいいんだ・・
いや、もう、それが嫌だってことではなくて、またしたいんだけど、
他の事もしたいんだ」
「何をなさりたいのですか?」
「とりあえずレベル上げかな?それと・・・」
「それと?」
「エレノアは魔法を教える事ができるの?」
俺の質問にエレノアは微笑んで答える。
「はい、僭越ながら正規の魔法教師の資格も持っております」
「だったら・・・僕を鍛えて!
色々な魔法を使えるようにして、僕がそれこそエレノアが何かで困った時に助けられる位に!」
これが違和感に対する俺の答えだった。
エレノアのような素敵な御姉さんとイチャコラするのは楽しい。
このまま一生エレノアの肉体に溺れて怠惰な生活をしていたい位だ。
しかし俺はそれだけでは満足できなかった。
俺はこの素敵な御姉さんを守って対等の立場に成りたいと思った。
この感情は何故なのか俺にもわからない。
エレノアを失う事への恐怖心からなのだろうか?
それとも単に所有欲がより肥大しただけなのか?
それは俺にもわからなかった。
ただ確かなのは、もはやイチャコラしているだけでは気がすまないという事だった。
他のオネショタ信者はわからない。
だけどこれが俺のオネショタ道だ!
俺は本気でそう思っていた。
この人を助けられるような人間になりたい!
この人が困っている時には自分が助けたい!
確かにお姉さんに甘えるのは大好きだ!
それは今でも変わらないし、いつまでもエレノアとはイチャコラとして甘えていたい。
しかし、それと同時に俺はエレノアに尊敬されて、助ける存在にもなりたかった!
これが俺の求めるオネショタ道だ!
他の自称オネショタな連中がどう考えているのかは知らない。
俺のこれはオネショタではないのかも知れない。
しかし俺にとってはこれがオネショタ道だ!
そう思ったから俺はエレノアに宣言したのだ!
その俺の言葉にエレノアはうなずいて答える
「承知いたしました。
日程や方法などはいかがいたしましょうか?」
「エレノアに任せる」
「どれほどのレベルまでにいたしましょうか?」
「それもエレノアに任せる。
エレノアを借りていられるあと2ヶ月ちょっとの間に、出来る限りの事をして僕を鍛えて!」
「かしこまりました」
こうして俺は異世界でお姉さんとオネショタ生活を送るという以外の新たなる目的が出来たのだった。