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おねショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!  作者: 井伊 澄洲
おねショタ好きな俺が転生したらエロフに騙された!
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0310 秘密の粉

 俺は魔法食堂と共に、もう一点急いで作る重要な物があった。

それは「重曹工場」だ。

この世界のこの時代、重炭酸ナトリウム、略して重曹、つまり膨らし粉はなかったのだ。

俺はこの世界に転生する時に神様から食料の他に調味料の類も多種大量にもらっていた。

醤油、砂糖、味醂、かつおだし等の他に、調味料ではないが、重曹とドライイーストももらっていたのだ。

菓子類等を作る時に必須だったし、どちらもまだアースフィアには無いと聞いていたからだ。

そして俺は肉まんを作る時に2つの方法を考えていた。

酵母菌を使う方法と、重曹を使う方法の二つだ。

どちらも生地を膨らます方法だ。

俺は始めて肉まんを作った時に、まずは自分で持っていたドライイーストを使って作ってみた。

もちろん、これは成功だった。

次にこの世界にあるパン屋からパン酵母をもらって作ってみたのだ。、

それでも確かに肉まんを作る事は出来た。

しかしこれはかなり状況によって差が出て、均一化が難しく、しかも雑菌が混入している事が多かった。

そして干し葡萄から酵母を抽出して、それで肉まんも作ってみた。

もちろんこれでも出来たが、やはり出来上がりにはムラがある。

最後に重曹を使って肉まんを作ると、案の定これが一番うまく出来たのだ。

初めて重曹を見たエレノアやキンバリーは不思議がっていた。


「この白い粉がパンや饅頭を膨らませるのですか?」

「そうだよ。

パン種って言うのは「酵母」っていう微生物が働いてパンを膨らませるんだけど、これの場合は化学反応で膨らませるんだよ」

「カガク・・ハンノウですか?」

「私には何の事だかさっぱりわかりませんが、とにかくこの重曹とやらで肉まんを作ると随分と綺麗に膨らみますね?」

「ああ、だからこれをたくさん作る必要があるんでね。

それの工場を作らないと・・・」

「これは何から出来るのですか?」

「ん~まあ、一番の材料は石灰岩ていう名前の石かな?」


その俺の説明にキンバリーが驚く。


「石・・で食べ物を作るのでございますか?」

「いや、まあ、石をそのまま使うわけじゃないから」

「ええ、ええ、生の魚でさえ、そのまま料理してしまった御主人様です。

石でも鉄でも料理できると私は信じておりますよ」


・・・何だかもうキンバリーにとって、俺は錬金術士か魔法使いのようだ・・・

いや、魔法使いは間違っていないか?


「とにかく本格的に店を開くにはこれからパン酵母をたくさん作らなきゃならないんだ。

でもパン酵母って言うのは目に見えないほど小さいけど生き物だから、たくさん増やすのが難しいんだよ。

だからこの膨らし粉、重曹を作るための工場が必要になる訳さ」


その俺の説明にキンバリーとエレノアも納得する。


「なるほど」

「それは確かに今の売れ具合だと急がないと危ないですね?」


全くその通りだった。

俺は神様から砂糖や醤油同様、重曹やドライイーストも、かなりの量をもらってきたが、所詮は消耗品、いずれは無くなるのは目に見えていた。

最初に肉まんを作って以来、イースト菌を増やしながら騙し騙し使っていたが、肉まんは予想以上の売れ行きで、急遽生地を膨らませる物が大量に必要になったのだ。

そこでドライイーストか重曹のどちらかを大量生産する事にしたのだが、やはりイースト菌は生物なので、量産はしにくい。

当初は重曹を作る施設もなかったので、イースト菌を大量に増やしたり、干し葡萄で酵母を作ったりして使っていた。

しかしやはりそれではやがては間に合わなくなるのがわかっていた。

それに発酵させるのは時間がかかる。

やはり膨らし粉の方が簡単で確実だ。

そこで俺は最初に迷宮の店の営業を始めた時に、即座に重曹を大量生産しようと考えたのだった。

重曹は肉まん以外にも魔法食堂で予定しているショートケーキやホットケーキ、それに炭酸飲料など、いくらでも使い道がある。

いくら有っても困る事などはない。

俺は昇降機設置の時に知り合ったカベーロスさんに、重曹の主原料である炭酸カルシウムを探すために、石灰石を探してもらっていたのだ。

幸いそれはすぐに見つかった。

この間制服が出来た時に持って来てもらった白い石がそうだった。

それを石灰石だと確認した俺は、早速屋敷の庭に建てた実験小屋で小規模な実験をして、重曹の製造に成功した。

重曹は21世紀の地球では電気分解などで生成するが、この世界にまだ電気はないし、そこから作るのでは到底間に合わない。

俺はいずれ電気設備も作る気はあるが、さすがにまだ時期尚早だ。

そこで俺は電気発明以前の重曹生成方法であるルブラン法やソルベー法を考えた。

しかしルブラン法は前世から文献で知っていたが、生成過程のアンモニアの匂いが凄まじく、とても街中で作る訳にはいかなかった。

そこでソルベー法を採用し、小規模で実験した結果、成功したので、それを今度は大量生産し始めた。

元々作り方は知っていたが、神様に頼んで、この世界での重曹の作り方を頭に刷り込んでおいてもらったので、生産は順調だった。

場所は幸いトランザムの屋敷や他の根拠地があったので、そこを改造し、重曹工場とした。

そしてそれは俺以外にはエレノアとシルビア、ミルキィ、アルフレッドの4人と、その配下のジャベックにしか話さずに、秘密裏のうちに製造をしていたのだった。

材料を持ち込む時も一旦町外れに借りた別の倉庫にしまい、それを夜中に重曹工場へと運んだ。

そして出来上がった重曹を持ちだす時は、必ず人知れず夜中に持ち出して屋敷の倉庫にしまっていたので誰にも知られてはいなかった。

もっとも仮に知られたとしても、それが何を運んでいるか、ましてやそれがどういう物かなどは全くわからなかっただろう。

そしてそれはそのまま使わずに小麦粉や他の材料と混ぜ合わせて、「蒸し饅調合粉」として食堂で使っていた。

だからブリジットたちを初めとして、食堂組は誰もこの粉の正体を知らないし、もちろん作り方も知らなかった。

そして今やその重曹は新しく完成した魔法食堂本店の秘密調合場所へ運び込まれ、そこで小麦粉や他の材料と共に混ぜられて、「蒸し饅調合粉」として食堂で使い、さらに売られる事にもなっていた。

この場所は今のところ魔法食堂の店員たちでさえ立ち入り禁止だったし、中でどういう事をしているかは全て秘密だった。

そしてそこで調合された粉は袋詰めされた上で、魔法食堂の倉庫へと運ばれて、本店を初めとした各食堂で使われていたのだ。

俺が魔法食堂開店と同時に肉まんの作り方を公開しようと考えたのも、この重曹の存在が大きかった。

いくら作り方を教えても、結局はこの「調合粉」を買って作るしか方法がないのだ。

もちろんパン酵母などを使って同じような物を作るのは可能だし、実際に肉まんの料理教室でも、その方法を教えるつもりだ。

しかし、それでは作る量の高が知れている。

大量生産には不向きなので、誰かがうちの競合相手になる可能性は低い。

いずれ遠い未来には誰かがこの世界でも俺とは別個に重曹を開発するだろうが、その頃にはうちが確固とした地位を確立しているはずだ。



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