0030 エレノアとの怠惰な生活
・・・こうしてエレノアとの生活が何日も続いた。
かろうじて、一日に一回は食事をするが、それ以外はずっとエレノアに抱きついている。
体力がなくなると、エレノアが俺に回復魔法をかけてくれるので、寝ている時と、トイレ以外は一日中エレノアを抱きしめている。
有り得ない!
俺はそう思っていた。
そもそもこんなスーパー御姉様エロフが、いかなる次元に存在する事も有り得ないが、その御姉様が俺の相手をしてくれるなど、どう考えても有り得ない事だった。
しかし有り得ない事ならこれが夢でもいい!
俺は夢なら覚めないでくれと念じながらエレノアの体を中毒患者のように抱きしめていた。
すでに出会ってから、何日目だかもわからなかった俺が、ある日ヨロヨロと起きると、エレノアにたずねる。
「今日で・・・何日目だっけ?」
「私が坊やの物になってから、今日でちょうど1週間ね」
「もう・・・7日?」
あれから、もう、そんなに経ったのか?とさすがに俺は驚く。
しかしそれは、ほんの一瞬であったようにも感じる。
「ええ、そうよ」
「これは夢・・・なのかなあ?」
「いいえ、夢ではないわ。
私はここにいるし、ずっとあなたも一緒よ」
その言葉に変に現実感を感じた俺は、ふと生々しい現実を思い出す。
「夢じゃないなら・・・宿代・・・払わなきゃ・・・」
確か先に1週間分だか、10日分は払ったような記憶はあるが、それさえもどうだか記憶が定かではない。
「そうね、私が払ってきましょうか?」
「お願い・・・します」
「何日分を払えば良いのかしら?」
そうエレノアに問われて俺はやっとノロノロと思考した。
「3か月分の残りを全部・・・」
そういうと、俺は背袋に入っていた金貨袋をエレノアに渡す。
「わかったわ、少しだけ待っていてね」
「はい・・・」
俺が呆然としている間に、エレノアは外へ行く時のボロ服を着てフードを被ると、部屋から出て行く。
一人で部屋にポツネンと残った俺だったが、次第に恐怖が湧いてくる。
今までの事は結局夢だったのではないか?
エレノアなどという美女は本当は存在せず、実は俺が長い夢を見ていただけではなかったのか?
そう考えると恐怖で頭の中が埋まり、何かを叫びそうになってくる。
もう少しで頭が狂いそうな所で、エレノアが帰って来て、俺はホッとする。
やはり夢ではなかったのだ。
エレノアは幻ではなく、存在する!
俺が安心しながらも、呆然としていると、エレノアが尋ねてくる。
「どうしたの?呆然としちゃって?」
ちゃんと宿の主人に全額を払ってきたらしい。
その事をエレノアは笑顔で報告する。
「はい、宿代を払ってきたわ。
これで3ヵ月を過ぎるまでは、何も心配はないわよ」
そう言って俺に金貨袋を渡す。
俺は中身を確認もせずに、それをベッドの横に放り投げる。
エレノアがその気ならば、金貨を数枚誤魔化すのは造作もない事だったろう。
いや、金貨袋を返さなくとも、俺は気がつかなかったに違いない。
しかし、そんな事は俺にはどうでも良かった。
俺にはエレノアさえいればそれでよかったのだ。
俺は戻ってきたエレノアに抱きついた。
「エレノア~エレノア~」
俺はエレノアがほんの数分いなくなっただけだったのに、まるでどこか世界の彼方に行ってしまったかのようだった。
「はいはい、私はどこにも逃げないから大丈夫。
安心して良いのよ?」
こうして俺はエレノアの体に溺れ続けた。
そして、さらに2週間が過ぎた。
すっかり身も心もエレノアに溺れていた俺だったが、不思議な事に、だんだんと元の意識を、わずかにだが、取り戻してきた。
このままではいけない、何かが違う・・・そう考えてポツンと呟く。
「こんな事・・・してちゃだめだ・・・」
「あら?別に私は構わないのよ?」
「だめ・・・」
「どうして?私とあなたが気持ちよければ、それで良いじゃない?」
俺もそう思うが、頭のどこかで、それを拒否してそれを口に出す。
「うん、気持ち良い・・・でも、だめ・・・」
「そう?じゃあ、どうしたいのかしら?」
「とりあえず・・・元の生活に戻る」
「元の生活に?」
確かに今の生活は楽しい、いや、楽しすぎる。
まさに夢にまでみた絵に描いたような、絶世の年上美女との自堕落な生活。
寝る時と食べる時とトイレに行く時以外、全てエレノアを抱きしめている。
それこそ、はにゃ~んと抱き枕のように抱きしめている。
でも、このままで良いわけがない。
もちろん、今の生活自体に全く不満はない。
むしろこのままで永久に生活したいほどだ。
エレノアだってそう言っているし、今の俺には多分この生活を一生続けていける財力だってある。
何も問題はないはずだ。
このままエレノアを買って、二人で一生自堕落な生活を続ける。
それで良い筈だ、誰からも文句は来ないし、言われる覚えもない。
俺に文句を言う奴は僻んでいる奴だけだ。
そうに決まっている!
そんな奴が何を言ってこようが関係ない。
勝手に俺の事をうらやましがって「リア充爆ぜろ!」とか一人でブツブツ言ってろ!
エレノアは俺の物だ!
俺が気持ち良ければそれで良いのだ!
しかし何かが違う・・・
何か微妙な違和感がある・・・
これは自分が求めているオネショタと何かが違う。
そしてそれは段々と大きくなっていった。
俺はようやく長い夢から覚めてきたような気がした。
「うん・・・もう十分満足したから・・エレノアお姉さんも元に戻って・・・」
「本当に?満足した?」
「うん、とても気持ち良かった。
本当にこれ以上ないくらいに楽しかったし、気持ち良かった。
またいつかはして欲しいけど、今はこれでいい」
「・・・わかりました。では元の生活に戻りましょう」
「うん、それがいい」
まだボーッとはしているが、俺は自分の意思をエレノアに伝える。
「では、今日の所はしっかり食事をなさって、ゆっくりと睡眠を取ってください」
「うん、そうする・・・」
俺はエレノアが用意した食事を食べると、その日は、そのまま寝た。