0297 「悪魔」と「死神」
俺は部屋の扉を開けて外に出ると、そこにはガルドのタロスが押えていた、最初に捕まえていた男がいた。
俺はその男に尋ねる。
「おい、ハマー、この中には確かロドリオとか言う、トランザムの孫もいたよな?」
「はい、そうですが・・・ロドリオではなく、ロドリゴです」
こまけえこたあ、どうでもいいんだよ!
「そうか?それで確かうちの屋敷を襲いに来た奴は息子とか言っていたな?
ここにいた孫は、そいつの息子だよな?」
「はい、そうです」
「他にそいつらの息子とか兄弟はいるのか?」
「いえ、次代・・・襲撃に行った方の兄弟姉妹はいません。
以前はいましたが、跡継ぎの抗争で全員死にました。
その息子は今あんたに殺された人だけです」
「ではこいつらの一族はこれで全滅か?」
「いえ、その方が商売女に産ませた息子が一人いますが・・・」
「そいつは何歳なんだい?」
「たしか3歳です」
「そいつもこの屋敷にいるのか?」
「いえ、一応、家を与えて、別の場所にいるはずですが・・・」
「そうか・・・」
さすがに3歳では殺すには忍びない。
それにこちらの法でもどうなるかはよくわからない。
とりあえず、後でゼルさんたちに報告しておけば良いだろう。
「おい、ハマー!
明日になったら魔法協会がお前たちを捕まえにやってくる。
それまでにお前は生き残った連中をまとめておけ!
言っておくが屋敷の出入り口は俺の部下が全部固めているし、屋敷の上空にも見張りがいる。
飛んで逃げようとしたり、塀を越えて逃げようとした奴は即座に殺すように命令をしておくからな。
それをここで生き残った連中によく言っておけ。
今すぐ死にたくなければ、ここから出るのはやめておけ、とな。
お前がちゃんとそれをやっておけば、後で俺が多少口を利いてやる。
さもなければお前も死刑だ。
わかったな?」
「はっ!はい」
こうして俺はその場をハマーとガルドたちに任せて、一人で自分の屋敷へと戻った。
屋敷を襲った連中はゼルさんたちが全て魔法協会へ連行したようで、もう一人も残ってはいなかった。
シルビアとミルキィも首尾よく相手の根拠地を潰したようだ。
特にシルビアは意気揚々と機嫌よく帰って来た。
よほどトランザム一家を潰せた事が嬉しかったらしい。
「シルビアご苦労様」
「いえ、大した事はございません。
一応生き残りを魔法協会に引き渡すためにアベルとカインに監視をさせております」
「うん、わかった
ちなみにそっちはどれ位の人数がいたの?」
「そうですね?
ざっと50人ほどでしょうか?
一応降伏勧告をして投降した者は縛り上げた上で、眠りの魔法をかけておきました。
現在、アベルとカインが見張っております。
残りの者はもちろん殲滅して参りました」
いや、もちろんって・・・まあ、間違ってはいないか?
俺だって似たような事をしてきたんだしな?
それにしてもさすがは町のチンピラどもに「悪魔」と恐れられているだけはあるな・・・
うん、やっぱりシルビア先生に逆らってはいけないな?
俺も先生の言う事はおとなしく聞こう。
そして一方のミルキィを見ると、ダイアとウルフを連れている。
「あれ?ミルキィは見張りはおいて来なかったの?」
「え?ええ、そこにいた者は全滅させましたので、別に見張りも必要ないかと・・・
一応、門を閉めて、戸締りだけを確認して戻ってきました」
「え?全滅?
そっちには何人位いたの?」
「こちらは30人ほどでしょうか?
しかし御主人様に害を為す者など、もちろん放ってなどおけません。
ましてやその御命を狙う者など「死」あるのみです。
全員、息の根を止めて、それを確認してまいりました」
「え?降参して来る奴とかはいなかったの?」
「ええ・・・と言うか、私、自分とジャベックたちに加速魔法をかけて、誰にも気づかれないうちに全て殲滅させてしまったものですから、誰とも話しておりません」
ミルキィッ!
恐ろしい子!
「そ、そうか?
まあ、ミルキィも御苦労様」
「いいえ、とんでもございません」
これ以降、この話が町の噂で流れ、町の顔役たちはミルキィの事を「死神ミルキィ」と呼ぶ様になる。
そして「青き薔薇」には「悪魔」と「死神」がいて、逆らうとそいつらに命を狙われるという噂が真しやかにたっていった。
どうやら俺は部下に「悪魔」と「死神」を持つ事になったらしい。




