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おねショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!  作者: 井伊 澄洲
おねショタ好きな俺が転生したらエロフに騙された!
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0274 驚異!ミクロの世界

 メディシナーからの派遣集団が到着した次の日から、うちではかねてより計画していた食堂の店員のための講習を始めた。

この日のために俺とエレノアは教本を作っておいた。

料理、食品衛生、接客、会計、掃除、材料の購入、輸送の注意、盗賊対策などを書いて数冊の本にした物だ。

俺の前世での知識と、実際に魔法食堂を運営した経験、そしてミルキィやブリジットたちの助言によって作った物だ。

この教本はこの世界では全く新しい物で、今までの食堂などのやり方とは全く違うので、みんな驚いたようだ。

そもそも食堂の店員の教育のために教本を作るなどという事自体に驚いている。

特に衛生観念のための部分の教育に対して驚きが大きい。


この世界ではまだ衛生観念などというものは、ほぼない。

一般庶民はボウフラが湧いているような水でも平気で飲んでいる。

強いて言えば貴族が多少は衛生観念を持っていると言えるが、それは衛生観念というよりも、単に汚れるのが嫌いだからという理由から発生しているだけだ。

それが結果として衛生観念に近くはなっている。

虫などは無から湧くと考えているし、もちろん細菌などの概念もまだない。

もっとも地球でもルイ・パスツールが白鳥の首フラスコなどで、それを証明するまではそう信じられていたので、その辺はしようがない。

しかもこの世界では魔物は実際に無から湧いて出るので尚更だ。

虫も無から生まれると思われていても当然だろう。


この授業に関しては、俺より詳しい者はこの世界にはいないので、当然の事ながら一から俺が教える事となった。

幸いな事に俺は衛生工学衛生管理者、食品衛生責任者等の衛生関係の資格をいくつも持っていたので、この事には詳しかった。

俺はまず全員に魔物以外の普通の生き物は、蝿にしても、蚊にしても、決して無から発生する訳ではない事を説明した。

また小さくて目には見えない「細菌」という生物がいて、それが病気の原因の一つだと説明をした。

店員たちは半信半疑だったり、概念その物を理解できない者もいた。

そのために俺は一通り講義を終わると、持っていた顕微鏡で、様々な物を拡大して、全員に実習で見せる事にした。


「さて、諸君、今日は衛生学の実習だ。

今までの授業で君達も「衛生」という意味が多少なりともわかってきたと思う。

それを今日の授業で実感してもらおうと考えている。

ここに私が用意した、「顕微鏡」という物がある。

諸君は全員魔法士以上の資格を持っているので、虫眼鏡や拡大鏡という物を知っていると思う。

それは知っての通り、物を大きく見せる道具だ。

これはさらにその能力を上げた物で、物を数十倍、数百倍まで大きくして見せる事が可能だ。

そこは我々の眼、すなわち肉眼では見えない世界だ。

そこには君たちが知らない、全く未知の世界が広がっている。

今日の授業では、それを実際に君達に知ってもらいたい」


ここで授業を受けている者たちがざわざわとする。

何人かの生徒たちが俺に質問をしてくる。


「小さい物を拡大すると、そんなに凄い物が見えるのですか?」

「そうだよ」

「小さい物など、ただの点でしかないのではないでしょうか?」

「そういった間違った考えも、今日で変わると思うよ」

「そんな小さな場所に我々の知らない世界があるのですか?」

「ああ、それを実際に君達に見せてみようという訳さ」


俺は神様から200倍から1500倍程度まで見る事が可能な顕微鏡セットを5組もらっていた。

これは顕微鏡本体だけでなく、ピンセットやスポイト、メス、プレパラート、採集小瓶等、観察に必要な物が全て揃って箱に入っている物だ。

そしてそれとは別に手のひらに乗る程度の小型簡易顕微鏡セットを10台、さらに親指程度の大きさのキーホルダーがついているような倍率50倍ほどの小型顕微鏡を100個も貰っていた。

これは贈答なども考えた物だ。

今回はそれらを使って、様々な倍率で色々な身近な物を生徒たちに見せてみた。

しかし生徒たちに順番に顕微鏡を覗かせると、途端に大騒ぎとなった。


「うわっ!」

「なんだ!これは!」

「いや~っ!!!」

「きゃ~っ!」

「ヒィィ~~~ッ!」


どうやら俺の生徒たちは俺が想像していた以上にミクロの世界に衝撃を受けたようだ。

見せた物は蝿、蚊、カビ、ミジンコ、酵母菌等だったが、それを見た店員たちは、叫び声や悲鳴を上げた。

特に蝿や蚊の顕微鏡を通して拡大した姿は、よほど衝撃だったらしく、女性店員の中にはそれを見て、その場で泣く者や、卒倒して気絶した人間もいたほどだ。

その驚きっぷりは俺の予想以上だ!

中でも木の板に生きたままピンで留めた蝿が動く姿を拡大した物は、かなり大きな衝撃を与えた様子だ。

う~ん・・・それほど驚いたか?

もっとも考えてみれば、わざわざ蝿だの蟻だのを捕まえて、まじまじと見る事なんか無いだろうし、仮に見たとしても肉眼ではよくわからないだろう。

昆虫図鑑もろくにないこの世界じゃ、あんな物を生まれて初めて拡大して見たら、確かに下手な魔物よりも怖いかも知れない。

そう考えると、そんな物を自ら進んで研究していた、かのアンリ・ファーブル先生は、やはり偉大だ。

俺も子供の頃はファーブル昆虫記を読んで、色々と驚いたもんだ。

そういえば日本人で、ファーブル昆虫記を読んで感動して、そのまま何故かバッタに食われたいと言って博士になった人がいたよな?

博士になったらモーリタニアに行って、望み通りバッタの研究をしていると聞いている。

あの人は今でも地球でバッタの研究をしているんだろうな、凄いよなあ・・・

俺、あの人を尊敬するよ。

俺も時間があったら、こっちの世界の昆虫の研究とかもしてみたいもんだなあ・・・

でも他に優先してやりたい事がありすぎるから、それは当分先の事になりそうだ。

それはそれとして、俺は初めてミクロの世界を覗き見た自分の生徒たちに感想を聞いてみた。

何しろ全員があれほど驚き、悲鳴を上げた者すら少なくないのだ。

どういう感想を持ったか、とても興味深い。


「さあ、どうだい?みんな?

小さな物の世界の感想は?」


俺の質問にみんなは興奮して答えた。


「正直、大変驚きました!

小さい生き物の世界が、これほど複雑だったとは・・・」

「私もです!こんな身近にあのような世界があったとは驚きです!」

「まさしくこれはホウジョウ様がおっしゃった通り、我々の知らない別の世界です!」

「私など、これまで蝿なんぞ、豆みたいな物に羽がついているだけの物と思っておりました!」

「蝿が・・・蝿の姿が、あんな恐ろしい形だったなんて・・・」

「あのミジンコというのは、水の中ならどこにでもいるのですか?」

「なるほど、こういった蝿や目に見えないほどの小さい生物が、人や食べ物にたかり、病気の原因となるのですね?」

「怖い・・・あの蝿の目が怖いです!

今夜の夢に出そうです!」

「他にも目に見えない小さな生き物というのはいるのでしょうか?」


やはり相当衝撃を受けて、それぞれが様々な感想を言って来る。

そんな生徒たちに俺がうなずいて答える。


「そうだね。

 こうした小さな生き物たちが食べ物や人間の体に悪さをしたりして、病気になったりする訳だ。

今日見せた物以外にも、そういった物はまだまだたくさんあるよ。

まあ、それが全ての病気の原因という訳ではないんだが、それでもこれを注意するだけでも病気の罹りにくさは全く違って来る。

諸君はそれを心に留めておいて欲しい。

それに今日見せた物は、ほんの入口だ。

小さな物の世界はまだまだ先がある。

今後それを知れば、君達ももっと驚くだろう」


方向は人それぞれだが、全員が何らかの衝撃を受けたようだ。

しかしそれが良い方向に働いて、店員一同が徹底的に衛生観念に気をつけるようになった。

「腐る」「カビる」「発酵する」などの現象も、そういった生物による物だと説明をして、それをいかに防ぐかの方法も説いた。

また俺が逆に煮沸消毒した瓶に調理した料理を入れて、それを密閉して、さらに熱を通した上で、蠟封をした物を数日後に食べさせてみた。

それが全く腐っていない事を知った生徒たちは驚いていた。

そういえば、俺も前世で大手パン会社の食パンをうっかり数ヶ月冷蔵庫に放置してしまって、あちゃ~と思ったが、全くカビが生えていなかったので、試しに食べてみたらなんともなかった。

カビが生える条件というのは決まっていて、その条件を満たしていなければ、決してカビが生える事はない。

21世紀大手のパン会社などは徹底的に無菌室で自動化を達成しているので、パンにカビの胞子が入る隙がないために、例え放置していても袋を開けさえしなければ、カビが生える可能性が低い。

だから半年放置していてもカビは生えなかった訳だ。

まあ、そうは言っても、もちろんそれを食べるのはおすすめしないけどね。

今、数日放置した瓶詰めの料理を食べても腐ってないのに生徒たちは驚いている。

この生徒の反応は程度は違っても、その時の俺と同じ驚きだろう。


そして食堂の中の衛生管理を徹底して、可能な限り、虫類やカビの発生を防いだ。

店員たちには当然の事ながら店に出入りする時に衛生管理を徹底させて、店の中にネズミや虫などがいた場合の駆除方法も詳しく教えた。


助かったのは全員がすでに数字での計算を出来た事だった。

メディシナーで派遣する際に、最低限の事として、多少の料理と数字での計算をする事だけは仕込まれたようだ。

おかげでこちらでは数字を教える時間の必要がなくなって助かった。

その代わりに食品衛生関係は大事だと思ったので、俺は可能な限り詳しく説明をした。

ひょっとしたらこの中から将来、偉大な微生物学者などが生まれるかも知れない。

エレノアたちも俺の授業の補助をしながら、改めて俺の講義を聞いて感心していた。

こういった事は以前から話してはいたのだが、俺が正式に授業で丁寧に説明するのを聞くと色々と驚いたようだ。

エレノアは俺とシルビア、ミルキィの四人だけになった時に俺に尋ねた。


「それにしても本当に御主人様はこういった知識に詳しいですね?

やはりそれも前世での知識ですか?」

「ええ、私も驚きました」

「私もです」

「うん、そうだね、まあ、そういった事が僕の専門でもあったからね」

「専門・・・と言う事は、御主人様は何か特殊な教育を受けていらしたのですか?」

「特殊と言うか・・・一応こっちで言えば「学士」に相当する資格を持っていたかな?」


うん、俺は一応工学系の大学を出ていたから、こっちで言う「学士」で間違っていないよな?

その言葉を聞いてシルビアが驚いて尋ねる。


「学士?御主人様は前世で魔法学士だったのですか?」

「あ、いや、違うよ?

僕のいた世界では魔法は使えないんだ。

そもそも魔法その物が存在しないからね。

僕の持っていた称号は「工学士」さ」

「コー学士?それは一体どのような称号なのですか?」

「そうだね、以前言っていたカラクリ道具を作ったり、数学の専門みたいな物かな?

それに僕の場合は食べ物の事や、医療関係の事も混ざっていたりするけど」


本当は一番の専門はコンピュータ関係なのだが、それは説明のしようがない。

それに実際に医療関係や食品関係の仕事もしていたので、間違ってはいない。

ビール工場のシステム設計、薬品や食品の工場、製紙工場の設計などもしていたのだ。

俺は凝り性な部分もあるので、その仕事の度にビールの造り方や、薬品、食品、紙の作り方を学び、実際にそれを作ってみたりもしていた。


「なるほど・・・それでこれほど様々な事に詳しいのですね?」

「うん、まあ、そんなとこ」


前世では色々あったけど、それが今の生活に役に立っているなら良い事だ。

そして俺は衛生講座と絡めて濾過装置の説明をしたり、接客の仕方、行列の整理、会計など当座に必要な様々な事を教えた。


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