0242 三人の約束
俺の一言で一瞬固まったシルビアだったが、ニンマリと妖艶な笑みを浮かべると話し始めた。
「そう?全裸競りね?
ふふ・・・やっぱり男の子ね~
そういうのが見たいのね?」
「えっ、あっ・・うん・・・」
「そうよね?何と言っても金貨1千枚で私を救ってくれたのですものね?
それ位見る権利はあるわよねぇ?」
「あ、ごめんなさい!そんなつもりじゃなかったんです!」
「ふふっ、わかっているわよ?
むしろ私が見せたいくらいだから・・・
それじゃ見せてあげるわね?」
「え?」
「じゃあ、そこでちゃんと見ていてね?」
そう言うと近くにあった浴布を体に巻きつけてスッと立ちあがり、シルビアは口上を始める。
「皆様、本日は私シルビアの全裸競りに参加していただきありがとうございます。
本日は私めに興味を持って参加していただいた皆様にせめてのもの恩返しとして、私のすべてを御覧になっていただきます」
そう言ってシルビア・ノートン嬢による口上から競売の再現が始まったのだった・・・
おお!何か凄い事が始まっちゃったよ!
・・・・・・・・・・・
俺が目を覚ますと、そこにはシルビアが横たわって寝ている。
シルビアの寝顔はいつまで見ても飽きない。
10秒か?それとも実は1時間以上見ていたのだろうか?
しばらく見入っていると、シルビアも目を覚ます。
「ふふ・・シノブ君、今日は何をして過ごす?」
「え~と・・・今日はやさしい先生?」
「ふふ・・・わかったわ」
そして起きれば同じ事の繰り返しだ。
俺たちは数日をそうして過ごした。
一体何日経っただろうか?
ようやく俺がシルビアと言葉を交わす。
「そろそろ外に出ようか?」
「そうね・・・シノブ君がそうしたいのなら・・・」
「実はまだ全然足りない・・・シルビアともっとこうしていたい」
「ふふふ・・・私もですわ。
もっとシノブ君を味わいたいのですけど、このままだと私おばあさんになるまでシノブ君と二人でいそうです。
ですから後一日だけ楽しんだら戻りましょう」
「うん、わかった」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふう~~これで少しは満足したかな?」
「ふふっ・・・これだけしておいて「少し」ですか?」
「当たり前だよ!シルビアの体に飽きるなんて事がある訳ないんだし、どんなに味わったって「少し」だよ」
「ふふ・・・ありがとうございます。
でもそろそろ現実に帰りましょうか?」
「そうだね」
俺たちは身支度を整えると、ようやく部屋を出た。
何だか自分の屋敷なのに、物凄く久しぶりに帰って来たような感じだ。
部屋から出てきたシルビアはエレノアとミルキィに話し始めた。
「ありがとうございました。
エレノアさん、ミルキィさん。
おかげ様で私は御主人様とこれ以上はないほどに幸せな時間を過ごせました。
これも御二人のおかげです」
「いいえ、それほど良い時間を過ごせなたら幸いです」
「はい、私はこの数日を一生忘れないでしょう」
清々しい顔でそう話すシルビアに俺は驚いた!
え?そこまで?
むしろそれはこちらのセリフなんですが?
「それは良かったですね?
シルビアさん?」
「ええ、ミルキィにも迷惑をかけしましたね?」
「大丈夫ですよ」
そのミルキィの言葉にシルビアはうなずくと、再びエレノアに話し始める。
「エレノアさん、実は私、あなたにお話があります」
「はい、何でしょう?」
「あなたが何か特殊な事情があって、御主人様の奴隷となり、そして鍛え上げている事は御主人様から伺いました。
それは傍から見ている私から見ても、まるで名刀を鍛えるか、宝石を磨き上げるような作業に見えました。
そしておそらく私もその名刀を鍛え上げるための道具の一つなのでしょう。
私はその事自体には感謝しております。
シノブ・ホウジョウという稀代の名刀を鍛え上げるため、その宝石を完全に磨き上げるための道具として選ばれたのは幸せです。
いえ、むしろ私はそのために生を受けたのかも知れません。
ですから、私はこの方を鍛え上げるための道具となり、守るための盾となって、使い減らされるならば、例えそのために消滅する事となっても、本望です。
その事に何も異存はありません。
そして私はあなたの事は尊敬もしておりますし、師としてもお慕いしております。
しかし、万一あなたの考えている事がシノブ様のためにならない事、悲しませるような事だった場合は、私はあなたを許せません。
その場合には、私は必ずやあなたの敵となり、シノブ様をお守りする覚悟だと言う事をお伝えしておきます」
そう言ってシルビアはエレノアを見据える。
え?シルビア?そこまで考えていたの?
何か、ただの〇〇なお姉さんだと思ってすみません・・・
でも俺はそんな事までして守ってもらう価値なんて絶対にないよ?
シルビアなんて俺には勿体無い位の素敵なお姉さんなんだから!
俺が驚いていると、ミルキィもエレノアに話し始める。
「私もです。
私もエレノアさんの事は大好きですし、尊敬もしています。
ですが、もし、シルビアさんの言う通り、将来御主人様を害するような事になれば、シルビアさんと共に、シノブ君を守るためにあなたと戦います!」
俺は愕然とした。
この二人が一斉にかかっても、決してエレノアには勝てないだろう。
それを承知でこの二人は俺の盾になる覚悟なのだ!
そこまでこの二人は俺の事を思ってくれているのか?
いや、待って!そんな必要全然ないから!
だって俺にはそんなにまでして守ってもらう価値なんてないもん!
むしろこっちが二人を守りたいです!
呆然としている俺が何か言おうとするよりも早く、エレノアが話し始める。
「御二人とも感謝いたします。
確かに私は未だに隠し事をして御主人様に仕えております。
しかし私は将来においても御主人様をないがしろにするような事はございません。
この場で決してそのような事はないとお約束させていただきます。
ですが、もしあなた方が、そう判断したのであれば、その時はあなた方の考えるように行動し、どうか御主人様を守ってください。
そしてその時が来ましたら、御主人様と共にあなた方御二人にも一緒にお話しする事をお約束させていただきます」
そのエレノアの言葉に二人は無言でうなずいたのだった。
俺は思わず叫んだ。
「そんな・・・やめてよ!
僕は僕のために三人が戦うなんて事には間違ってもしたくないよ!
僕にはそんな価値なんてないから!
むしろ僕の方が三人を守りたいんだから!」
その俺の言葉にエレノアがうなずいて答える。
「大丈夫です。
そのような事にはまずなりません。
御安心ください」
「うん・・・・」
この時から俺はこの三人の言う事なら何でも聞こうと思ったし、この三人の事はどんな事でも必ず信じようと思った。
そして万一この三人が戦うような時が来たら全力で止めようとも決意したのだった。