0174 ゴブリンキラー
ゴブリンキラーという単語を聞いて俺たちは驚いた。
俺は一体どういう事なのか、ポリーナさんに聞いてみた。
「えっと、あの「ゴブリンキラー」って・・・?」
「ゴブリンキラーはゴブリンを屠る者です!」
うん、そのまんまだな?
確かロナバールで最初のミッションをする時に、アレクシアさんにそういう人がいるって話は聞いていたけど・・・
「何でそんな約束を?
こういっては何だけど、正直あまり年端も行かない女の子が目指す物でもないような気がするんだけど?」
「それは私の高祖父がゴブリンキラーだったからです!」
そのポリーナさんの言葉に俺たちが再び驚く。
特にユーリウスさんが驚いたらしく、ポリーナに尋ねる。
「え?ゴブリンキラー?
アルマンさんは、「あの」ゴブリンキラーだったのですか?」
「はい、そうです」
「驚きました・・・確かにゴブリンキラーは年老いた魔道士で、常に緑の髪の恐ろしく強いジャベックを連れているという話は聞いていましたが、その年老いた魔道士というのがアルマンさんで、ジャベックがヴェルダだったとは・・・」
驚くユーリウスさんにヴェルダが説明をする。
「はい、その通りです。
アルマン様はゴブリンを退治する時に常に私を連れていて、場合によっては、マギーラ、ラッシュ、ロカージョなども連れてゴブリン退治をしていました」
「え?マギーラとラッシュも一緒にゴブリン退治を?」
「そのマギーラとラッシュというのは?」
俺の質問にユーリウスさんが答える。
「このヴェルダのさらに前の試作品です。
その二つを参考にしてヴェルダは最終試作品として作られました。
ロカージョというジャベックは知りませんが・・・」
ユーリウスさんの疑問に今度はポリーナさんが答える。
「ロカージョというのは高祖父が所持していた戦闘専用の高レベルの岩石型ジャベックです」
「なるほど、それでヴェルダ以外のその三体は今どこに?」
「マギーラとラッシュは他のジャベックと一緒に私の村に置いてきました。
そこで私の家の留守番と、村での魔法治療を引き受けています。
ロカージョはグラーノ化して私が今持っています」
「なるほど」
ポリーナが話を続ける。
「高祖父は数ヶ月前に私の住んでいる村を訪ねて来ました。
本当は私の祖父を訪ねて来たのですが、祖父も父もすでに亡くなっていました。
そこで私と一緒に暮らして、私は高祖父に魔法を色々と教わっていたのです。
しかしある時、高祖父はゴブリン退治に出かけました。
その時に私もついて行ったのです。
私が高祖父に何故ゴブリン退治をするのかと聞くと、高祖父は息子、つまり私の曾祖父がゴブリンに殺されたからだと言いました。
それ以来、高祖父は敵討ちのために、ゴブリンの生態や行動を調べていたようですが、10年ほど前から実際にヴェルダたちの性能試験を兼ねてゴブリン退治を始めたようです」
「なるほど」
「そしてある時にオリナスの町の近場に出たゴブリンウイザードを倒し、その後でいよいよ曾祖父の仇であるゴブリンキングを倒す事になったのです」
「ゴブリンキング!?」
その魔物の名前は俺も知っている。
稀に見る魔物で、あらゆるゴブリンを統率する大物だ。
率いるゴブリンの数は数千匹にも及び、場合によっては1万を超える場合もあると言う。
討伐するにはそれこそ小国を相手にするほどの大部隊を必要とすると本にも書いてあった。
「はい、そうです。
高祖父と私は魔法協会や組合の人たちの助けもあって、ようやくゴブリンキングを倒して仇を討つ事が出来ました。
その後で気が緩んだのか、高祖父は急激に体が弱くなり、亡くなりました。
そして最後にヴェルダとシャルルさんの事をお願いされてここにやって来たのです。
そしてもう一つ、できればゴブリンキラーとして世のゴブリンを倒し続けて欲しいと私に託して亡くなったので、私はその時に高祖父とゴブリンを倒す約束をしました。
ですからそのためにも私は自分を鍛えたいのです」
なるほど、これでポリーナさんがゴブリンを倒したい事情はわかった。
そのために自分を鍛えたい事も。
エレノアもうなずいて、返事をする。
「事情はわかりました。
それならば私が鍛えても構いませんが、本当に大丈夫ですか?
ゴブリンウイザードやゴブリンキングを倒すほどの力量となると、それは大変な事ですよ?」
「はい、大丈夫です!
覚悟は出来ています!」
「ではシャルルと一緒に鍛えましょう」
こうしてポリーナさんもシャルルと一緒にエレノアに鍛えられることとなった。